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世界遺産のあれこれ:その②

世界遺産のあれこれ:その②
まず、「その①」で書いたことに少し補足をしておく。
世界遺産への登録(申請)条件を書いた。いわば当然なことなので敢えて書かなかったが、申請する国の法律で保護されていることが必要である。日本の「古都奈良の文化財」構成物件に東大寺があり、正倉院正倉(建物)が含まれるが、正倉院は天皇家の所有物であるということで宮内庁管理(今でもそうである)のため、文化財保護法の対象外であった。従って、その儘では世界遺産に含まれないはずだった。このため、正倉院正倉を例外的に国宝(文化財保護法に準拠)に指定した。以前書いたよう、倉に入っている宝物/御物・仏具は今でも国宝になっていない。
https://note.com/kengoken21go/n/nff65be29358f

1. 世界3大建築家と世界遺産
何度か書いたよう世界3大○○が世界的に通じるか?ながら、3大建築家は
  〇ル・コルビジェ(仏)
  〇フランク・ロイド・ライト(米)
  〇ミース・ファン・デルローエ(独)
ということらしい。

「その①」で書いたとおり 「ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献」は日本を含む世界7ケ国にまたがるトランスバウンダリー・サイトである。一方、「フランク・ロイド・ライトの20世紀の建築」はUSA6州に跨るシリアル・ノミネーション・サイトで、同氏設計の日本の建築物は対象外である。因みに、ライトが設計したものはUSAと日本(4つ)にしかない。ミース・ファン・デル・ローエの設計で世界遺産になっている建築物は単独での登録である。

2. 日本で街並みが世界遺産対象になることは恐らくなし
世界遺産に「○○の歴史地区」「〇〇の旧市街」「XXXXの都市〇〇」(〇〇は都市名)というものが数多くある。
例)
・フィレンツェの歴史地区
・パリのセーヌ河岸
これらは建造物だけではなく街並みも世界遺産の対象である。一方、「古都奈良の文化財」「古都京都の文化財」のよう日本は建造物が対象で、街並みが世界遺産に含まれるものはない。木の建造物で街並みを造ってきたので、今後も対象になる都市はないだろう。

3. 世界遺産の都市の中にある世界遺産もある
「ウィーンの歴史地区」という世界遺産がある。「会議は踊る」のウィーン会議でも使用された世界遺産「シェーンブルン宮殿と庭園」はウィーン市内にあるが別途登録されている。多分、「シェーンブルン宮殿と庭園」が先に登録され(1996年)、「ウィーンの歴史地区」を後から登録(2001年)したからだろう。後者は都市開発で景観が損なわれ危機遺産になっているので、分離登録したのは結果的に正解だったかもしれない。

ローマ市には「ローマの歴史地区・教皇領とサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂」という長名の世界遺産があるが、「ヴァチカン市国」は別の世界遺産として登録されている。国が違うので致し方なしか。国全体が世界遺産なのはここが唯一である。

4. 三つも指定されているサンチャゴ・デ・コンポ・ステラ
キリスト教の三大巡礼地とされているサンチャゴ・デ・コンポステラは

「サンチャゴ・デ・コンポステラ(旧市街)」
「サンチャゴ・デ・コンポステラの巡礼路:カミノ・フランセスとスペイン北部の道」
「フランスのサンチャゴ・デ・コンポステラの巡礼路」

と三つも登録されている。スペインとフランスが共同で「サンチャゴ・デ・コンポステラとその巡礼路群」にしても良さそうな気がする。国のメンツのためか。こういうところにも登録基準の曖昧さがあると感じる。

5. 虚妄のギリシャ白亜建造物
ギリシャ文明の代表建築物はアテネのパルテノン神殿であろう。これも含めて世界遺産として「アテネのアクロポリス」として登録されている。今でもギリシャと言えばエーゲ海の青と白い家のイメージがあり、古代ギリシャの建築物や彫像は白い大理石だと思っている人も多いろ思う。しかし、実際はカラフル、或いは極彩色のものだった(2012年放送NHKスペシャル『知られざる大英博物館』より)。尚、山川の高校教科書『詳説世界史B』の最新版
で、パルテノン神殿について「かつては青・赤・黄色などで鮮やかに彩色がほどこされていた」と書いてある。

世界遺産制度の創設のきっかけはアスワン・ハイ・ダムの建設でアブ・シンベル神殿が水没することだったと先般書いた。この神殿にギリシャ人によるメモ書きが残っており、ギリシャ人がエジプト(やメソポタミア)に傭兵として雇われていたことを示す。この傭兵が先進的な文化・芸術に触れ故国に持ち帰ったことが古代ギリシャ文明勃興の画期で彩色も伝わったとらしい。「ギリシャ文明は白い文化」というのは18-19世紀欧州のいわば虚構であるそうだ。これ以上の細かいことは省略する。
<キーワード>
・ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A8%E3%82%A2%E3%83%92%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3
・ビクトリア女王の純白のウェディングドレス

6. 旧ソ連・ロシアのどこにでもあるクレムリン
恥ずかしながらクレムリンはモスクワにあるものと思っていた。クレムリンはロシア語で「クレムリ」で「城塞」を意味する。イタリアに「カステル○○〇〇」という地名が多くあるのと同じことで(カステルは城)、クレムリンも複数ある。これを知ったのは世界遺産「カザン・クレムリンの歴史的関連建造物群」があったからである。

カザンはタタールスタン共和国の首都で嘗てジョチ・ウルス(キプチャク・ハン国)、ついでカザン・ハン国が支配していた。「タタールのくびき」の
代表地である。タタールは本来モンゴル高原にいた一部族であるが、この地のタタールとロシアが称する人々はモンゴル系・トルコ系の融合民族でイスラム教徒だった(本家のモンゴルはチベット仏教徒)。従ってモスクやミナレットが残っている。尚、「モスクワのクレムリンと赤の広場」も世界遺産である。「タタールのくびき」はロシア/モスクワ大公国が都合のいいように使っていただけで実態を表していない。

7. これまでに筆者が訪れた世界遺産
世界はおろか、日本も大して旅行していないので少ない。当時は世界遺産という言葉すら全く頭になく訪れたところを挙げてみる。但し、各世界遺産の全ての構成物を訪れたのではなく一部である。
<日本>
・法隆寺地域の仏教建造物
・古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)
・古都奈良の文化財
・琉球王国のグスク及び関連遺産群
・「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群
・国立西洋美術館(建築物としてちゃんと見ていない)
天草や島原は行っているが、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」とは無縁。
富士山に登ったことはある。しかし、富士山は自然遺産としては評価されておらず、「富士山‐信仰の対象と芸術の源泉‐」にあるよう信仰と芸術の対象
で評価されている。従って、これを体験していないので対象外としている。
北斎、広重の浮世絵、大観の日本画を観た位ではだめだと考えるので。

<海外>
・パリのセーヌ河岸
・ブリュッセルのグラン・プラス
 ビクトール・ユゴーが「世界一豪華な広場」といったらしいけれど、そこ
 までは感じず
・フランク・ロイド・ライトの20世紀の建築
 構成物の一つ、NYのグッゲンハイム美術館に行っただけ
NYの「自由の女神」は世界遺産。NYに長期出張していたものの、特に行きたいとは思わずスルー。

<補足1>
最近、ロシア侵略によりキーウの「聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群、及びキーウ・ペチェールシク大修道院」と「リビウの歴史地区」が世界遺産の危機遺産に登録されたというニュースがあった。「オデーサの歴史地区」は先行して危機遺産に登録されている。

<補足2>
2012年に放送のNHKスペシャル『知られざる大英博物館』は以下の3つからなる。
第1集 古代エジプト 民が支えた3000年の繁栄
第2集 古代ギリシャ “白い"文明の真実
第3集 日本 巨大古墳の謎

大英博物館は以下の功罪を想起する。
①他国の貴重なものを勝手に持ち出して返却もせずにいる。いいのか
②ここに収蔵されたお陰で貴重なものがよい状態で保存され散逸しない
メソポタミア文明の遺産はドイツ調査隊、フランス調査隊が発掘したので、ドイツやフランスに収蔵されている。同じことか。

大英博物館はThe British Museumであるので英国博物館が妥当な気がしないでもないが違和感はない。寧ろ違和感があるのは、テニスの全英オープン、全仏オープン、全米オープン、全豪オープンの「全」である。どういう意味があるのかよく分からず。日本でも全日本選手権と日本選手権の二つがある(全日本は全国という解釈をしている)。

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