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世界遺産のあれこれ:その①

世界遺産のあれこれ:その①

先般、世界文化遺産「「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群」について書いたので、世界遺産について少し書きたい。尚、世界遺産は1,100件以上あるし、よく知らないものが多いので、日本の世界遺産と日本人にも馴染みある他国のものを取り上げる。
地元の国宝知らずと海の正倉院「宗像・沖ノ島」|kengoken21go (note.com)

世界遺産とは何かについてのWEB情報や書籍は数多くあるので誰でもすぐに調べられるが、筆者として一々調べるのも面倒なので、また読む方にも多少は有用であろうから、以下の2つについて別資料を纏めておいた。

<世界遺産要約>
https://docs.google.com/presentation/d/1eqnmNGyz1ifOwTOA-SzVpgwuClAfBfyf/edit?usp=sharing&ouid=100767326769361292922&rtpof=true&sd=true
<日本の世界遺産一覧>
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1EsNd16hg7RuZ1R2Sa0lhTNPyQCwNTFEj/edit?usp=sharing&ouid=100767326769361292922&rtpof=true&sd=true

尚、世界遺産制度ができるきっかけは、ナイル川アスワン・ハイ・ダム建設で神殿が水没してしまうことであった。神殿は移設され世界遺産「ヌビアの遺跡群:アブ・シンベルからフィラエまで」となっている。

1.ユネスコが制定したものだが、ユネスコ加盟義務なし
「ユネスコ世界遺産」という言い方もあるようにユネスコが条約を制定したものであるが、登録申請を行うに当たりユネスコに加盟していることは要件でなく、「世界遺産条約」を締結(批准)していればいい。アメリカのトランプ前大統領が拠出金に値するメリット無しとしてユネスコから脱退したものの、世界遺産の登録申請は可能であったということだ。

2.世界遺産は不動産が対象、それ以外は?
いうまでもなく世界遺産は不動産であるので、持ち運びできるもの(絵画、宝石など)は対象外である。一方、ユネスコは世界遺産とは別に「無形文化遺産保護条約」を制定し保護している。日本では「能楽」「歌舞伎」などが登録されている。また、「世界の記憶」として保護するプログラムもある。韓国ではよく「ハングルは世界遺産である」という言い方をしているようだが、これは「世界の記憶」に登録されているというのが正しい。

3.日本で最初の登録は?今後の予定は?
日本初の登録は1993年の「法隆寺地域の仏教建造物」「姫路城」「屋久島」及び「白神山地」の4件である。今後の登録申請(年に1件しかできない)の優先度は以下のようらしい。
①「佐渡島の金山」・・申請済(一度申請したが差し戻しのため再申請)
②「彦根城」「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産」
③「古都鎌倉の寺院・神社ほか」「平泉」
 (平泉は既に登録されているが対象を拡大するため再申請予定)
④今後の候補:「阿蘇地域」「錦帯橋」「四国遍路」「天橋立」など

4.少し微妙な感じがする日本のシリアル・ノミネーション・サイト
世界遺産要約資料に書いたよう共通性に注目した地域を跨った登録がある。日本唯一の広域登録物件が「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」である。
https://bunka.nii.ac.jp/special_content/hlinkF
https://bunka.nii.ac.jp/docs/special_content/sangyokakumei_isan_ichizu.pdf
殆どが九州(山口は九州みたいなもの)乍ら、静岡・伊豆「韮山の反射炉」が入っている(岩手・釜石「橋野鉄鉱山」も洋式高炉絡みで入っている)。反射炉は確かに江戸時代→明治時代を繋ぐ技術であったとは言え、江戸時代にできたものを入れる必要もないと思うのだが如何であろう(他の反射炉も入れている兼ね合いか?)。「松下村塾」を入れているのは筆者にとってはかなり違和感がある。山口県の人、長州好きの人は当然と思うだろうが。

因みに明治近代産業の象徴は官営の富岡製糸場と八幡製鉄所と嘗て教科書で教えていた(富岡製糸場は1872年操業開始、八幡製鉄所は1901年操業開始)。富岡製糸場が別件として登録されたのは、製糸業自体は新産業でないということか、重工業ではないからだろう。

この世界遺産の構成物である端島、通称「軍艦島」については徴用工の一環として韓国から反対運動があったのは周知のとおり。同国の働きかけでユネスコの世界遺産委員会の遺憾決議まで出ている。「佐渡島の金山」世界遺産登録にも同国は反対している。

5.ヒマラヤ山脈にかかる世界遺産名「サガルマータ」
嘗てヒマラヤ山脈にある世界の最高峰をエベレストと(少なくとも日本では)呼んでいた。何時からかは定かでないが、その後、チョモランマと呼ぶ
ようになった。一方、世界遺産では「サルガマータ国立公園」で、最高峰をサガルマータと呼ぶ。
  エベレスト・・・インドの測量局初代長官名
  チョモランマ・・チベット語「世界の母神」
  サガルマータ・・ネパール語「世界の頂上」
という関係にある。今のところ日本ではチョモランマ→サガルマータに呼称変更する動きはなさそうだ。

6.世界三大瀑布と世界遺産・・ナイアガラは対象外
以前「三大〇〇」は日本人が好きな言葉で海外では聞かない」ということを書いた、従って、三大瀑布が世界で通用するかはさておき、日本では以下がそう言われている。
①イグアスの滝:世界遺産名「イグアス国立公園」
       (ブラジルとアルゼンチンそれぞれの国立公園が登録)
②ビクトリア滝:世界遺産名「ヴィクトリアフォールズ」または
       「モシ・オ・トゥーニャ」(雷鳴のする水煙)の両名併記
③ナイアガラの滝

上記のよう①と②は世界遺産だがナイアガラは違う。人の手が加わり自然の形態を保っていない、観光施設で景観が損なわれているなど、登録申請してもリジェクトされると思われている。

7.オーストラリアのウルル(エアーズ・ロック)は世界2位の一枚岩
オーストラリアのエアーズ・ロックは大抵の人が知っているだろう(エアーズは植民地総督のヘンリー・エアーズから取った)。最近ではアボリジニの呼称ウルルも大分広まっている(筆者はNHK-Eテレの語学番組で知った)。世界遺産としては、このウルルおよび36個の巨岩群を合わせて「ウルル、カタ・ジュタ国立公園」だ。(カタ・ジュタは「沢山の頭」というアボリジニ語)。アボリジニ文化も含んでおり自然遺産でなく複合遺産である。

ウルルは世界2位の一枚岩である。世界一の一枚岩は西オーストラリア州にあるマウントオーガスタスでウルルの2倍以上ある。残念ながら世界遺産ではない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B9

8.意外な?世界遺産ブラジリア
ブラジルの首都ブラジリアは既存大都市(リオデジャネイロやサンパウロ)ではなく、何もないところに首都として新造したことは、小中学校のどこかで習ったと記憶(オーストラリア首都キャンベラと同様)。これも世界遺産「ブルジアリア」である。1960年に完成し、1987年に世界遺産に登録されていて、建設~世界遺産登録までの期間が最も短いもの。世界遺産とは歴史があるものというイメージがあるけれど、独創的な建築物・都市も対象になるということだ。

これに似たようなものとして世界遺産「シドニーのオペラハウス」がある。1973年完成で2007年に世界遺産に登録。単体で登録されている建造物としては最も新しい。

(了)

写真は全て筆者撮影の法隆寺。
表題に一応「その①」と書いた。続編で「その②」以降を書くかは未定。


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