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天文と占星術のトリビア

占星術には色々あるようだが、一般的には生誕した日時、黄道12宮、惑星、太陽、月の位置+12室(12ハウス)、角度を使って行う西洋占星術のホロ
スコープが一般的ではないかと思う。占星術に興味のある方は適宜入門書を読んで頂くとして、天文と合わせトリビアをいくつか。先頭のホロスコープの画像はARI=占星学総合研究所のWEBサイトより。

1. 中国語の「天文」は占いだった
日本語の天文は中国から来ている。古代中国では多数の占い方法があったのは周知の通り。天文の元々の意味は「天体事象を使った吉凶占い」だった。以下3に書いたよう、天文学としての天体観測と占いは嘗て表裏一体だったことが分かる。

2.占星術の起源は古代メソポタミア
古代の出来事はどこが発祥かの所説あるのはよくあること。しかし、占星術の起源が古代メソポタミアであることには異論がない。呼称が現在と全てが一致するはさておき、黄道12宮に対応する星座も概ねメソポタミア生まれである。

一日を24時間制にしたルーツは太陽暦の古代エジプトと思われる。発祥地に諸説はあるものの、曜日は占星術から生まれた。現在の西洋占星術は太陽、月、惑星、及び準惑星の冥王星を使っているが、本来の占星術は、太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の七つを使う。天王星が見つかったのは1781年。天道説においては月も太陽も惑星と同列に扱われている。尚、曜日の並び、及び週初が何曜日かは色々な変遷を経て今に至る。
<補足>
上述のとおり、今の西洋占星術で天王星、海王星、冥王星を入れているのは
歴史が浅いと言える(望遠鏡無しに肉眼で見えるはずもないもの)。冥王星は2006年に準惑星に格下げになったのに、未だにそのまま占星術で使うのは変と言えば変。
因みに『美少女戦士セーラームーン』は、最初は天王星、海王星、冥王星に該当する戦士は居なかったが、後から追加された(1994年)。この時はまだ
冥王星は惑星であった。

3.プトレマイオスも書いた占星術書
メソポタミア起源の占星術が現代の西洋ホロスコープのルーツとして整備されたのは古代ギリシャようである。古代文明共通のこととして天文学(数理天文学)と占星術(応用・経験天文学)とは分かち難いものだった。プトレマイオス朝エジプトのアレキサンドリアに居たプトレマイオスは、天動説を完成させたと言われる天文学書『アルマゲスト』で有名だが、『テトラビブロス』という占星術書も書いている。
補足:
テトラビブロスはテトラ(4)+ビブロス(書)なので「4つの書」という意味。聖書をバイブル(書物)と呼ぶのはビブロス由来であることはご承知の方も居られるだろう。
テトラビブロスは以下の構成。
(1)述語等の説明(メタ情報)
(2)特に個人に関わらない全体の占い(気候・日月食など)
(3)個人の出生占い(生誕後の運勢占い)
(4)個人の開始占い(何か物事を始める時の吉凶占い)

4.占星術12宮と12星座は(本来)異なる
細かいことで恐縮乍ら、占星術で使う黄道12宮と名前を当てられている星座とは異なる。極論すれば占星術の12宮は天文学上の星座のことでない。12宮はメソポタミアの影響を受け紀元前の古代ギリシャで成立したもの。地球の歳差運動のため星座の位置が変わるため一致しない(歳差運動により北極星になる星も長期的に変動するのは以前書いた)。
歳差運動はヒッパルコス(BC190年頃-BC120年頃)が発見したもの。前述のプトレマイオス(AC83年頃 -AC 168年頃)『アルマゲスト』はヒッパルコスに依るところが多く現代でいうパクリ説もある。

5.空海が持ち帰った占星術
空海は遣唐使の期間(本来20年)を2年で切上げた、言い換えれば短期間で密教の奥義を習得したという怪異の人。密教の奥義を授けた師匠は恵果である。恵果の師匠はインド人またはインド人とソグド人のハーフで唐に帰化した不空。不空は『宿曜教』という書物を書いた若しくは翻訳した。この書物はギリシャ→中東(アラビア・ペルシャ)→インド→中国に伝わった占星術=宿曜道が反映されている(西洋/ギリシャの占星術+インド古来の占星術+中国占星術が混淆)。
九曜 - Wikipedia

空海(空海の「空」は不空からとっている)がこれを日本に持ち込み、平安時代には一時的に占星術が一定の地位を得たようである。藤原道長の『御堂関白記』に曜日が入っており占星術の影響と考えられる。結局従来の陰陽道に押されて占星術が日本で普及することなく終わった。
日本で初めて曜日(日・月・火・水・木・金・土)を使いだした時期と理由を知りたい。 | レファレンス協同データベース (ndl.go.jp)

因みに大鏡、今昔物語、夢枕獏の小説・映画で陰陽師として有名な安倍晴明は実は天文博士であった。清明神社があるように傑出した才能があったのは間違いないと思う。陰陽師としての活動は謎である。清明は『御堂関白記』では藤原道長に吉凶の助言などをしている。
補足:日本の律令朝廷の陰陽寮の構成
・陰陽頭
・陰陽助
・陰陽允
・陰陽大属・同少属
・陰陽師・・・吉凶占い、方位担当
・陰陽博士・・陰陽道の主担当
・天文博士・・天文の主担当
・暦博士・・・暦の主担当
・漏刻博士・・時刻の主担当
・その他は省略

オマケ1:
ホロスコープの「ホロ」の語源はギリシャ神話に出て来る時間・季節秩序の女神の単数形である。英語の時間のhourもこれに由来。サンスクリット語でも同じ読みをしていて中国では「火羅」を当てた。空海に下賜された東寺にある密教・曼荼羅図の火羅図は占星術の要素が入っている。

火羅図(1166年) 東寺2013秋期特別公開サイトより

オマケ2:
嘗てのロックミュージカル「ヘアー」で使われた♪Aquarius♪(アルバムは『The Age of Aquarius』)は全米ヒットチャート1位を記録。英語は聞き取れたが当時占星術など全く頭になく意味不明であった。要は占星術を知らないと意味が分からないということ。尚、みずがめ座の時代が来るというのは、黄道上の現在の春分点はうお座にあるが、次はみずがめ座に移るということだろう。
(占星術が古代メソポタミアで出来た頃は春分点はおひつじ座だった)

歌っていたのはThe 5th Dimensionというグループ。
<一番の歌詞より>
When the moon is
in the Seventh House
And Jupiter aligns with Mars
And peace will guide the planets
And love will steer the stars
This is the dawning
of the age of Aquarius

Age of Aquarius
Aquarius, Aquarius

オマケ3:
陰陽師については、安部清明を含め雑誌『時空旅人』2023年11号に出ていることを見つけた。Amazonなら無料で読める。
https://www.amazon.co.jp/時空旅人-2023年11月号-雑誌-三栄-ebook/dp/B0C6XKKQMM/ref=sr_1_1?qid=1696898707&s=books&sr=1-1


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