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『Frozen(アナと雪の女王)』サマンサ・バークス、女王様は魔女

11/3 19:00
Theatre Royal, Drury Lane

コロナになって国内すら満足に旅行できない期間が続いていたが、ようやく日本の水際対策もほぼ解除され、第七波も収束してきた。今しかない、と4年ぶりの海外へ。そして4年ぶりのロンドン。

ロシア上空を通れないため、東回りで15時間かけてヒースロー空港に到着。かつては意地悪なぐらいいろいろ聞かれた入国審査はなくなり、パスポートを機械にかざす自動チェックイン機が稼働中。後ろで見てたら5人に1人ぐらい「×」が出ていたのでやや緊張したがすっとゲートが開いた。チェックイン機前で少し並んだものの、着陸から入国まで30分もかからない(ANAの着くゲートは少し離れたところにあるため、通路を歩いている時間が15分ぐらい含まれます)。これは便利だ。

すでに16時15分ぐらい。地下鉄でロンドン中心部まで1時間弱、ホテルにチェックインして向かうはコベント・ガーデンのロイヤル・ドルリーレーン劇場。観るのは『Frozen』つまり『アナと雪の女王』である。

実は、東京で開幕しているにもかかわらずこれが初見となる。ブロードウェイで観てから劇団四季版を観よう、と思っていたのに、ことごとく渡米できず、そのうちブロードウェイ公演は終了してしまった。こうなると、意地でも海外で最初に観てやろうじゃないか、と意味不明な感情が芽生えて四季劇場に足を運ばなかったのだ。ちなみにどれだけ「ことごとく」だったかのかはこのエントリーに記載してある。

そして、ニューヨークの仇をロンドンで、とばかりにやってきたわけだが、待ったかいあって素晴らしいご褒美が。何とエルサ役にサマンサ・バークス。ご存じ、『レ・ミゼラブル』25周年コンサートとヒュー・ジャックマン主演の映画でエポニーヌを演じた女優さんだ。2020年には東京の『CHESS THE MUSICAL』にラミン・カリムルーと共に出演している。

あのサマンサ・バークスがエルサを演じる。想像しただけで身震いするニュースは、開幕前から大いに話題に。コロナ禍による開幕延期を経て、オープン以降も高い評価を集めていた。そりゃそうだろう。となれば、何とか交代前にロンドンに行かなくては、と考えるのが人情というもの。

劇場に着いてキャストを確認。うむ、サマンサ・バークスの名前がある。15時間の長時間フライトの疲れが吹っ飛ぶ瞬間である。

幕が開き、おなじみのストーリーが展開し、登場したサマンサ・バークス。やっぱりキレイだなあ。そして歌声がびりびり響く。たまらん。一幕最後にいちばん盛り上がる曲を持ってくるのはひとつの定石だが、この作品では当然ながらそこが「Let It Go」である。

圧巻。ただただ・・・圧巻。

歌が終わって、休憩に入っても止まらない拍手。客席のどよめきが収まらない。きっとアニメのエルサ役であるイディナ・メンゼルが『ウィキッド』で「Defying gravity」を歌い終わったあともこんな感じだったに違いない。サマンサ・バークス、最高。女王様は魔女、である。

ここで日本に帰国、となっても悔いはない。いや、でも最後まで観よう。アナ役のエミリー・レーンのハジけた演技も楽しく、あっという間に終演。作品全体としては、確かにライオンキングや美女と野獣ほどの完成度はないかもしれないが、アナとエルサのキャスティングによってだいぶ印象変わると思うので、何度も劇場に足を運びたくなる。さっそく、東京で正常ではない観劇姿勢を実践しようじゃないか。

ところでこのドルリーレーン劇場。改築や改装を繰り返しているものの1663年オープンの歴史ある劇場である。劇場内も、清潔ながら歴史の重みを感じさせてくれる。

自分がこの劇場に来たのは2回目。前回は1993年のことだ。出張で一緒に来た大先輩が「せっかくロンドンに来たのだ、ミュージカルを観に行こう」と誘ってくれた。作品はミス・サイゴン。海外での観劇は初めてで、この体験がなかったらこれほどこの沼にはまりこむことはなかったかもしれない。

その大先輩は病気のために現役中に亡くなってしまった。今もときどき思い出して、自分がこうして立派な駄目人間になったことに感謝している。

Frozen ロンドン公演オフィシャルサイト


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