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職人技の世界に科学的なマーケティング手法を持ち込んだ女性誌No.1編集長

前回年始にnoteを書いてから少し時間が経ってしまいました。

1月前半は、前回書いたように改めて事業の課題仮説から検証し直すことにし、エンドユーザーや顧客へのインタビューを主に行っていました。

ちなみにインタビューのアポを取るのにコールドコールもしたりしたのですが、やはり緊張するし営業電話と間違われて断られると結構堪えます(笑)

なので出来ればメールで済ませようとしてたんですが、やはりメールだと返信率悪いので、電話の方が良いのは間違いないです。

「外に出てユーザーの声を聞け」というのはよく言われることだし、実際ユーザーの生の声を聞くと、思ってもなかった気付きや発見があって、言葉では分かってたつもりでしたがやはり本当に大事なんだなと実感しました。

1月の後半は、会社を辞めてからフリーランスのコンサルティング仲介会社に登録していたのですが、たまたま自分の興味のあるテーマで条件の良い案件があったため、初めて経営コンサル案件を受けてみることにしました。

会社員時代に比べると遥かに単価も高く、期間や稼働率も希望を出せるので、足元の資金を稼ぐには一つの選択肢としてありだなと思いました。

ただこればっかりやっていると、自分の事業は前に進まないし本末転倒になるので、バランスには気を付けないといけないなと思います。

そんな中、「ユーザーの声を聞くのが大事」という話に関連して、年始に「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組でハルメクというシニア女性向けの通販雑誌で編集長をしている山岡さんの放送を見ました。

(ややステマっぽくなってしまうのですが)ハルメクは毎月の販売部数が38万部女性誌トップで、特に山岡編集長が入社されてから劇的に伸びたというのを聞いていました。

なので、どんな風に働いているのか前々から興味があったのですが、この番組を見て非常に驚いたのが、経験と勘による職人技の世界だと思っていた雑誌作りが、そうではなくとても科学的かつ再現性の高い方法で行われていたことです。

番組を見ると、企画のブレストから、タイトルや広告見出しの作成まで、あらゆるプロセスで読者を巻き込んで徹底的に定性・定量面から検証を行っていました。

“思い込み”を捨て企画調査に3ヶ月を掛ける

1.企画のブレスト

ハルメクには毎月数千枚の読者ハガキが届くほか、読者へのグループインタビューや調査を専門に行う部署があります。

山岡編集長や編集部の社員たちは、この数千枚からなるハガキに全て目を通すほか、グループインタビューを行い、実際にシニア女性がいまどのようなことに興味・関心を持っているか拾い上げているようです。

このように読者ハガキやグループインタビューでの実際のユーザーの声をヒントに、次号の企画と具体的なタイトル案を考えます。

2.タイトル案の検証

企画の方向性が決まった後は、読者800人にアンケート調査を行い、どんなタイトルが最も読者の興味を引くか定量的に検証を行っているようです。

3.テーマの深堀り

アンケート調査で読者に刺さるタイトルが分かった後も、そこで終わらず、次は読者以外の200人を対象に企画のテーマを掘り下げるため、具体的なエピソードを探る座談会を開いているそうです。

座談会の中では、「最近メルカリで美味しい海苔が買えてハマっている」など、シニア女性から具体的な面白いエピソードが出てきていました。

このように、座談会でシニア女性から関心が高かった内容は、すぐに企画に反映させているようです。

4.広告見出しのテスト

紙面作りと並行して、新聞に載せる広告見出しのテストも行います。

広告は検証のため、一部の地方紙に限定して事前にテスト出稿するそうです。

その広告を見て新規で申し込んだ客は、どの見出しに惹かれて購読を決めたのか、1つ1つ聞き出し数値化していました。

反応が悪かった見出しは修正し、反応が良かった内容はより大きくするというように、広告にも読者目線を反映しています。

このように企画のブレストからテーマの深堀り、そして広告と、次号の企画・調査だけで3ヶ月を掛けているということには驚きました。

読者目線の感じられなかった編集部

しかし、山岡編集長が入社する前は、企画は社員が自分たちだけで考えて決めており、全く読者目線が感じられなかったそうです。

例えば、山岡編集長が入社した当時、シニア女性は「シワやたるみに悩んでいる」というのが編集部内では通念でした。

しかし、山岡編集長は数千枚の読者ハガキを読む中で、シニア女性はシワやたるみより、白髪や薄毛に悩んでいる声が多いことに気付きました。

実際にシニア女性の美容に関してアンケート調査をしてみると、シワやたるみより髪の悩みが断然多いという意外な事実が明らかになりました。

そこで山岡編集長は、”髪”をリニューアル特集の目玉に持ってくることを提案しました。

しかし、当時の編集部からは「髪は人生の一大事ではない」「そんなテーマはこの雑誌にはふさわしくない」と、反対の声が多かったそうです。

そんな中、「白髪や薄毛のせいで外に出掛けるのが嫌だ」といった読者の声を実際に聞いていた山岡編集長は、「髪は人生の一大事だ」と、髪をテーマにすることに決めました。

結果として、読者から多くの反響があり、そこからV字回復へと進んでいったそうです。

スタートアップも"思い込み"を捨てるのが難しい

ユーザーへのインタビューや観察を通してインサイトを得て、ユーザーに素早く小さくテストして定量的な検証を行い成功確率を高めるやり方は、リーンスタートアップと本質的に同じで、”思い込み”を捨てユーザー目線に立つとはこういうことか!と、とても勉強になりました。

自分も以前に「きっとユーザーはこういうことに困っているに違いない!」と思って、それを解決するサービスを作ってみたものの、蓋を開けてみると全然使われないということがありました。

特に自分が想定ユーザーの一人だったりすると、「自分と同じように困っている人がたくさんいるに違いない」と勝手に思い込み、ろくにインタビューや検証もせずに、自分が欲しいと思うものを信じて突き進みがちです。

もちろんそれで上手くいくこともあるとは思いますが、果たして自分はそれを"本当に"必要としているのか、世の中のどれくらいの人が自分と同じように感じるのか、一度思い込みを捨てて確認してみる必要はあると思います。

自分も山岡編集長の仕事の仕方を参考に、ユーザー目線の事業作りを実践したいと思います。

最後に番組ですが、NHKオンデマンドから購入すれば見れるようなので、もし興味ある方がいればこちらからどうぞ。




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