「小学校卒業」 - オトナルホウヘ -02
その日からというもの、
音楽番組を観ては時折映るドラムに釘付けとなり、
カーステレオからCDを流せば、
(そもそも音楽と触れていない時でさえも)
後部座席で太ももを叩き、そのドラマーになりきっていた。
四六時中、頭の中で「ドラム」という楽器を描いていた。
そもそも田舎にドラムセットがある場所などなく、
自分の回りに音楽をやっている人もいなかった。
ただ椅子に座り、両手両足でリズムを刻むだけ。
たったそれだけで「自分だけの世界」に入れた。
「いつかドラムを叩いてみたい。」
そんな夢ができていた。
残り少ない小学校生活の中で感じる
どこか寂しい気持ちを背に
あの中学校に入ることは決まっていたのだから。
日に日に、そして、密かに、僕の心は燃えていた。
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