シングルマン ストレートチップ
主人公の行く末を暗示するかのような美しい儀式を、
無言で彩る漆黒の足下。
シングルマン
1962年11月30日。 8か月前に愛する人を失ったジョージ(コリン・ファース)は、この日で人生を終わらせようと、
死の準備を着々と整えていた。 ところが大学での講義は熱を帯び、いつもならうっとうしい隣の少女との会話に喜びを抱く。
そして遺書を書き上げたジョージに、かつての恋人チャーリー(ジュリアン・ムーア)から電話が入り。。。
ストレートチップ
スーツは現代の鎧であるという言葉をまさに体現するかのようなオープニングで始まる本作は、ファッションデザイナーである
トム・フォードが監督したことで話題となったコリン・ファース演じるジョージ・ファルコナーのある一日の物語です。
映画の冒頭、ジョージがベッドから起き上がるシーン。
彼はそれまでに生き甲斐としていた恋人を失った悲しみを引きずっており、その悲しみの末の夢から醒め呆然としているところからはじまります。
彼は下着だけの姿に裸足で起き上がり、シャワーを浴び、髭を剃り、薬を飲み、身支度を整えていきます。
丁寧に描かれるそれらの所作は彼の几帳面さの表現であり、一方では彼の死への身支度が完璧に整っていく様子でもあります。
その直後に行われる一連の動作の一部として彼の足下がハイライトされるシーンに注目してみたいとおもいます。
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