米国株マーケット考察 2020.12.23

マーケットサマリー

米国株式相場はまちまち。ダウ平均は200.94ドル安の30015.51ドル、ナスダックは65.40ポイント高の12807.92ポイントで取引を終了しました。投資家はある種のポジション調整に終始している感じでした。

米議会は追加経済対策を上下両院でスピード可決し、あとはトランプ大統領の署名待ちの状況で株式市場では好感されましたが、このネタは既にかなり織込み済みなので相場へのインパクトは限定的でした。

経済指標では、12月の米消費者信頼感指数は、88.6と予想(97.0)を遥かに下回り、前月の92.9から予想外に低下し、4カ月ぶり低水準となりました。新型コロナウイルス感染抑制策の強化を受けた労働市場の悪化を反映し、景気回復が勢いを失っていることが改めて示されました。

また、11月中古住宅販売件数は季節調整済みの年率換算で前月比2.5%減の669万戸で、6カ月ぶりのマイナスの数字となり、景気回復に懸念が広がってきたとも言えます。

コロナ関係では、米国病管理予防センター(CDC)は英国発の新型コロナウイルス変異種がすでに米国内にも存在する可能性を指摘していますが、WHOを含む専門家は、ファイザーとモデルナのワクチンが異変種のウイルスに対して大筋でワクチン接種により対応可能という見解です。昨日、米国株式市場はこれに関して悲観的に受け止め、相場下落要因となりました。

現状では、3-4ヶ月に一回の頻度で、ウイルス変異を伴った感染拡大の波がくるというのが定説となりつつあり、その意味で「With コロナ」のシナリオをどのように市場が消化して行くのかが今後の相場を読む上でのポイントと言えます。その中で、投資家は、引き続き短期ニュートラル中期強気的スタンスを維持しているように見受けられます。

相場全体には影響しませんでしたが、昨日、アップルが2024年に電気自動車に参入する計画が伝わりました。アップルが利益率の低い資本集約型の自動車産業にわざわざ参入する理由はほとんどない中、その動機は疑問視されています。寧ろ、ソフトウェアや電子機器で、自動車メーカーと理想的なパートナーになり得るのではないかというのが下馬評ですが、果たしてアップルの野望は何処にあるのでしょうか?テスラ株がこのニュースを受けて下落した点で、今後テック企業の更なる影響力は業界を超えて広がることを示唆しているようです。

用語解説


-米消費者信頼感指数ー消費者の観点から米国経済の健全性を図る指標。米国の民間調査会社コンファレンス・ボードが毎月、現在の景気・雇用情勢や6ヵ月後の景気・雇用情勢・家計所得の見通しについて5000世帯を対象にアンケート調査し、1985年を100として指数化したものです。

個人消費の先行指標とされ、消費者心理を反映した指数で、同指数に先行して発表され、同じく米国の消費者マインドを指数化した指標として、ミシガン大学消費者態度指数があります。

-中古住宅販売件数ー全米不動産協会(NAR:The National Association of REALTORS)が、中古住宅の販売件数を所有権の移転が完了した段階で、月ごとに集計した指標。商務省が販売成立時点での数字を集計する新築住宅販売に比べて1~2カ月の時差があると言われています。

もっとも、米国では中古住宅の市場規模が新築住宅に比べてはるかに大きいことから、新築住宅販売件数よりも、市場の注目度は高いです。住宅の販売は、その後の家具・家電製品などの耐久財に対する家計の需要を誘うこともあり、景気に対して先行性が高いと言われています。


立沢 賢一(たつざわ けんいち)とは

元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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