ダウ工業株30種平均が反落した要因[マーケット考察]2020.7.31

米国株式市場は反落。
ダウ工業株30種平均は前日終値比225.92ドル安の2万6313.65ドルで終了し、下げ幅は一時500ドルを超える場面もありました。 一方、ナスダック総合指数は44.87ポイント高の1万0587.81で終わりました。

昨日のダウ工業株30種平均が反落した要因は:
(1) 米商務省が発表した4~6月期の実質GDPは統計の記録を開始した1947年以降で最も大きな落ち込みk且つ前期比32.9%減と過去最大の下げ幅となり、新型コロナウイルスの感染拡大による経済へ打撃が示されたこと。GDPは、個人消費や設備投資、住宅投資、輸出が軒並み大きく落ち込み、企業の設備投資は3四半期連続で減少している数字でした。感染第2波が拡大する中で、米経済は期待ほど早期に回復しないのではとの不安を助長する内容で、2四半期連続のマイナス成長から米経済はリセッション(景気後退)入りしたことになります。( 経済活動の再開に伴い、7~9月期はプラス成長が見込まれており、歴史的に最短の景気後退となる可能性はあるものの、新型コロナの感染再拡大の影響が警戒されており、7~9月期以降の景気回復は力強さに欠けるものになると予想されています。)

(2) トランプ米大統領がツイッターで11月の大統領選に関し、郵便投票による「不正」増加を主張し、延期に言及したこと。発言が本意かどうかは不明ですが、合衆国憲法では大統領に延期の権限はなく、野党だけでなく身内の与党からも批判が上がりました。

(3) 失業給付を週600ドル加算する特例措置が間もなく失効するなど「財政の崖」への不安が高まったこと。

(4) 週間の新規失業保険申請件数は143万4000件と、前週から1万2000件増加。月中旬以降の感染再拡大を背景に、新規失業保険申請件数が2週連続で増加。これにより深刻な景気悪化と回復の遅れへの懸念が強まったこと。

でした。相場の全体的な印象は、これだけの下げ要因でも底堅いということです。やはり、ナスダック構成銘柄がコロナショックに影響を受けない特徴が株式市場を下支えしているからです。

昨日の最大の焦点はテック企業の決算。引け後に発表された数字は、概ね予想を上回る素晴らしいものでした。結局のところ、議会証言での彼らの圧倒的な存在感を含めて、FAANGの優位性は盤石です。問題はむしろ、圧倒的な地位を築いた彼らに対し、政治が全く無策であり、米国議会を仕切っている議員達は事の本質を全く把握していないことです。FAANGは激烈な競争を勝ち抜いた勝者であり、その間行政のサポートを一切受けず、結果として富の偏在・広義の格差拡大を招いていることは事実ですが、議会がそれを独占禁止法的発想で対応するのは、問題の本質を理解していないからのように思えます。

リセッションに関しては、景気悪化のレベルはリーマンショック時の2.5倍ですが、リーマンショック後のリセッションは18ヶ月継続したことと比較しますと、第3四半期のGDPはプラス予想ですから今回のリセッションの時間的長さは1/3とかなり短期です。とは言え、それは政府の力尽くでの景気刺激策の影響で、感染第二波がその後の経済活動にどのような影響を与えるのかは未だ不明瞭です。年末にかけて、株式市場が荒れる局面がある可能性は否めません。

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立沢 賢一(たつざわ けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。

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