米国株マーケット考察 2020.11.3

マーケットサマリー

米国株式相場は反発。ダウ工業株30種平均は前週末終値比423.45ドル高の2万6925.05ドルで終了し、ナスダック総合指数は46.02ポイント高の1万0957.61で引けました。

先週は、欧米での新型コロナウイルス感染再拡大が重しとなり、ダウ工業株30種平均は1週間で1800ドル超の下げとなり、その反動で先週に売り込まれた銘柄を中心に昨日は買い戻しが入りました。昨日の相場は別段新たなニュースが無い中、先週の下げからの反動が出ている印象でした。先週末で今夜の米大統領選前のポジション調整が終わった感は出ています。

大統領選に関して、市場ははっきりと先が読めない状況ですが、トランプ大統領とバイデン 候補のどちらが勝利したとしても、追加経済対策の規模は大きくなると見ており、トランプ大統領が万が一敗戦した場合、その結果を受け入れず、勝敗の確定出来ずに大統領不在の政治空白ができるリスクのほうを心配しています。

新型コロナウイルス感染に関して、米欧での感染状況は引き続き悪化しており、米国では10月30日に10万人の感染者が新たに確認され、1日の感染者数として最多を更新しました。また、英政府が土曜日に11月5日から12月2日までの4週間、2度目の都市封鎖を開始すると発表しています。感染拡大による景気先行きへの不安感は依然として根強いです。

昨日発表されました経済指標に関して、
・米・10月製造業PMI改定値:53.4(速報値:53.3)
・米・10月ISM製造業景況指数:59.3(予想:56.0、9月:55.4)
・米・9月建設支出:前月比+0.3%(予想:+1.0%、8月:+0.8%←+1.4%)

この中で、10月ISM製造業景況指数は59.3と、9月55.4から予想以上に上昇し2018年9月以降ほぼ2年ぶり高水準となった一方、9月建設支出は前月比+0.3%となり、伸び率は8月+0.8%から拡大予想に反して鈍化しマイナスとなった5月来で最低となりましたが、市場はISMに好感して、相場は上昇しました。

株式市場では偏ったポジションはかなり調整され、地合い的には膨大な過剰流動性が金融市場でウロついている中、今年最大のイベントである大統領選の結果如何に拘らず、不透明感が払拭されれば、買いの勢いは出るでしょう。また、懸念されてます世界景気下振れリスクが高まったとしても、各国中銀の金融緩和や政府の追加経済対策の強化で、株式市場は年末に向けて順調に推移するとの楽観的見方が市場を席巻しつつあるのも事実です。

私見では、トランプ大統領が勝利すれば、バイデン 候補は敗北を認めるでしょうが、逆にバイデン 候補が勝利した場合には、トランプ大統領は敗北を絶対に認めないと思います。今回、7000万票以上が郵便投票で、その票が勝敗に影響するようであれば、トランプ大統領は不正郵便投票を理由に、最高裁まで訴訟を持って行く可能性があるからです。

来年1/20までに大統領が決定しない場合、法律で、ペロシ民主党下院議長が暫定大統領になりますから、大統領選の結果が決まらないリスクはかなり大きいと思われます。その場合は、株式市場は下げの模様を呈するリスクが高まります。

用語解説


-米サービス業購買担当者景況指数(PMI)ーPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)とは、企業の購買担当者らの景況感を集計した景気指標のひとつです。国別や、製造業、サービス業ごとの集計も行われており、米ISM(Institute for Supply Management)やIHS Markit社が公表しているものが有名です。一般的に鉱工業生産や雇用統計などの統計よりも景気先行性があるとされ、株式等の運用担当者の注目度が高い指標のひとつと言えます。景気判断の方法としては、一般に、PMIの数値が50を上回ると改善、50を下回ると悪化と判断されます。

-ISM製造業景況指数ーISM(Institute for Supply Management:供給管理協会)が全米の製造業350社の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、その結果を基に作成する景況感を表す指数。景気の先行指標として注目されています。

「新規受注(30%)、生産(25%)、雇用(20%)、入荷遅延(配送時間)(15%)、在庫(10%)」の5項目につき、「良くなっている(1)、同じ(0.5)、悪くなっている(0)」の三者択一の回答結果を点数化し、カッコ内数値でウエイト付けした加重平均で算出され、50が好況と不況の分岐点を意味します。
項目ごとの数字も公表され、新規受注、生産の項目は、景気とのかかわりから注目度が高いです。また、米雇用統計よりも発表が早いことが多い(発表が同一日となる場合は、雇用統計の方が発表される時間が早い)ことから、雇用部門の数字は、雇用統計の先行指標として注目されています。


立沢 賢一(たつざわ けんいち)

元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。

・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?