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九九の向こう側

小学校が休校になり、課題がいろいろ出た。

3年生に上がったばかりの長男、始まったばかりの理科と社会はほとんど授業をやる間もなくいきなり自習となった。

国語は新たな教科書を読み、最初の方に出てくる感じをやっておけよ、と言うような内容。

算数は、主に復習だった。

小学校二年生の算数、一番の目玉は九九だ。その後一生使う重要なもの。九九。

二年生で九九の単元に入ったとき、学校の教え方に関係なく、方眼に九九の表を書かせた。そこに隠された秘密を探せ、というミッションを与え、一緒に考えた。

今回、休校中の課題として、掛け算の交換法則(演算子の前後を入れ替えても答えが同じになるという法則)について考えよう、というものがあった。

7x6と6x7の答えが同じになる理由を考えよう、という問題で、この問題に「この問題は難しいのでじっくり考えてみましょう」と書いてあった。

どこが難しいのだ。

7x6は教科書に解説されているという。そこを見て考えろと。

開いてみると、赤い丸が縦に7つ、横に6つ並べて書いてある。7x6だそうだ。

長男に聞く。これを見て7x6と6x7が同じだということを説明できる?

長男うーんと考える。

まて。何を考えている。じゃぁまずこれが7x6だということはわかるのか。

すると長男は説明する。7個並んだ丸が6列あるから7x6だと言う。

わかってるじゃないか。じゃぁこれでは?

僕はそういって教科書を横倒しにする。

「あっ!」

長男アハ体験。

掛け算の交換法則なんて一目瞭然ではないか。どこが難しいのだ。同じ図を90度回転すれば行と列は入れ替わり、丸の数が変わっていないのは明らかなんだから交換法則は成立する。

さらに、課題は次にこう続く。

九九の中に、7x6と6x7のように同じ答えになるものは他にもあるだろうか? と続く。そして親向けに配布されている回答例には2x6と6x2等、と書いてある。

ダメだなおまえ。その回答例は甘すぎてダメだ。2x6は12であり、3x4も12。つまり答えが12になるものは九九の中に4つある。これを7x6と6x7の組みと同列で語るようでは話にならないのである。

そこで長男にこの課題を膨らませて与える。

九九の表に1個しか出てこないものはいくつあるのか。3個あるものは。4個あるものは。

二年生の頃に九九の表を書かせてそれを読みほぐしたとき、対角線に並ぶもの(同じ数同士を掛け合わせたもの)を中心に、半分に折り返すと同じ答えの者同士が重なる、というところまでは発見していた。(これがまさに交換法則)

だから覚える必要があるのはべき乗になっている9個と、折り曲げた半分の中にある36個の合計45個である、と。81個あるうちの45個を覚えればあとはひっくり返せば答えがわかる。長男はもともとそうやって九九を攻略した。(僕自身も幼いころこうやって九九を覚えた)

今回の課題でも、1個しか出てこないものが対角線上に並んだ数の中にしかない、ということはすぐに理解した。

1x1、2x2…と二乗になっているものだけを確認し、1個しか出てこないものをさがす。(1x1、5x5、7x7、8x8、9x9の5個)

続いて、同じ答えが3個あるやつを探す。3個ということはやはり、この対角線上以外のものは必ず重なって相手があるのだから、答えが3個と奇数になるものもこの対角線上にしかない、ということを確認する。

すると対角線上で1個だけになったもの以外が全部これに該当するということがわかる。(答えが4、9、16、36になるもの、計12個)

この時点で、同じ答えが5個以上存在するものはないことも発見する。

あとは4つあるやつを探す。(答えが6、8、12、18、24になるもの、計20個)

というわけでここに出てこない残り44個が2つずつ出てくるやつであるから、22組あるということになる。

九九の表は深い。大変深い。なのに小学校二年生の算数では、九九を段ごとに丸覚えする。1の段をクリア、2の段をクリア…。そうやって9の段まで81個を唱えて覚える。たしかにそれは有効ではある。

交換法則にしても、裏返すと同じ答えになるね、というところで終わってしまう。だから2x6と6x2とかいう例を挙げて解答例としてしまうのだ。

2x6と3x4が同じになることの方がはるかに面白いのに。

これは2x2x3ということを意味していて、真ん中の2をどっちに先にかけるかの違いでしかない。これは結合法則だしさらに言えば素因数分解ではないか。

九九の表で3つ以上同じになるやつは共通の素因数を持つ組であり、五年生の内容につながる。これを既に、九九表で発見することができる。

きっと学習指導要領では、二年生で九九、三年生で交換法則をやるのだろう。素因数分解は五年生か六年生。だけどこれを割り算に入る前に知っていると、実に面白い。

ちょっとだけ踏み込めば1桁の素因数分解は二年生にも理解できる。(素数を説明するとややこしいので、2x6の6も九九の表の中にあるよね、といったところから「九九の表の中でこれ以上分解できないところまで分解してみよう」といった感じでほぐすのが良いと思う。素数の説明には約数が必要なのでやはり割り算を習得してからでないと難しい。)

※思い付きで書いたものに後からさらに思いついたので追記。九九の表でこれ以上分解できないところまで分解しようとすると、1の段を含めると面倒くさい(全部1x〇になる)ということを発見し、そこから、1が素数でない理由もわかったりするかもしれない。

九九は表を書いて覚えるべきだと思う。しょっちゅう書いているうちに表から様々なことを発見する。そこにこそ算数の面白さが隠れている。

こんなふうに家庭学習を子どもと取り組むのも楽しい。

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