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図書コーナーでの語らい

本を読むことは、年齢に関係なく文化的な活動です。
読書をすることで、ストレスの軽減も図れ、リラックスした心情になれるかもしれません。また、様々な情報を個人の思考に働きかける要素の他に
本、雑誌、新聞はある「影響力」を持っていました。
その影響力とは
本を通じてご利用者の方との会話が深まり、様々なお話しをお聞きすることができることです。

そのように感じることができるようになったのは、数年前に入所型高齢者介護福祉施設内に図書コーナーを設置したときのことです。
ご利用者の方が熱心に本を読む姿を見ていたり、本や写真集等を通じて様々なコミュニケーションをとることができるようになっていることに気付きました。

図書コーナーの設置

図書コーナーを作るにあたり、どのような本を置くのかを悩みました。
皇族、天皇陛下写真集、日本の戦後写真集、○○市、○○村100年の歴史写真集、わらべ歌の本、○○地域の方言集、昭和歌謡曲、昭和の田園風景、山岳写真集、小説、昭和の映画スター写真集、石原裕次郎写真集、養蚕、お蚕様、家庭菜園・・・

ご利用者の出身地等や趣味趣向を考慮して本を選んでみました。

車いすからの視線に注意しながら、そのレイアウトにも工夫しました。
施設内の動線にも注意しながら、転倒等のリスクにも配慮する必要があります。

どのような反応があるのか..…

ご利用者の方への営業も、欠かせません。

思わぬ反応

そのなかで、いろいろなお話をお聞きすることができました。

○○地域の歴史、写真集の本を見ながら
「私はそこで働いていたよ!(製糸工場でした)」
「えっ今の○○のところにあったのですか?」

「スケート場があったのですか?」
「田んぼでスケートをしていたよ!その田んぼスケートでは、残った稲のあとが危なかった。」「下駄スケートってなに?」

甲子園で優勝したパレードの記事を見て
「わたしの孫が高校野球をやっていて応援にいくのが楽しみだった、野球一家だった」

わらべ歌の本を見て、自分の知らない歌を歌ってくださったり

お蚕のサナギだけでなく、成虫も食べたこと、製糸工場からサナギをもらい帰りの電車の中で食べることか楽しみだったこと

林業で活躍されていた方が写真を見ながらその作業内容を教えてくださったり、山林鉄道のお話・・・・

知らなかった一面をたくさん知ることができたのは驚きでした。

サプライズは「俺が写っている!!」当時の運動会の写真に若かりし頃のご利用さんが写っていたことでした。

加山雄三の写真集を見て、「私は、加山雄三のファンだったのよ‼️」と利用者の方二人で話をしながら読み進めていることもありました。
(そこには、私の入り込む空気感はありませんでした。)

活動の意義

このアクティビティプログラムの意図は、余暇時間に一人で本を読んで楽しむことの他に、コミュニケーションツールとしての「本」であることが挙げられます。

「年をとったら、そんな小さい字は見えないし、本なんか読みたくもないわ」    当然ながら、こうした意見も現場では聞かれました。

私自身も、いわゆる高齢者の方は、本を読むことを好まないと思っていました。それは、文字が見えないこともさることながら、本に興味がないだろうという勝手な偏見を持っていたかもしれません。
当然、本に興味を持たない方もいらっしゃいます。

しかしながら、小さな字を読むことができたり、「数年前は見えなかったが段々と見えるようになった」と奇跡的なことを言っている方がいたことも事実です。

図書コーナーを通じて感じたことが二つあります。

ひとつは、職員の知らない昔のことが分かる本を通じて、会話が深まることです。会話が思いもよらぬ方向へといく面白さがありました。回想法で用いる写真などと似ているイメージです。私自身は本を通じて昔のことを共有できたような気がしました。また、自然と質問もでてきました。

もうひとつは、利用者の方の趣味趣向を知ることができることです。また、それらは思いもよらず私自身への影響も持っています。

ある利用者の方から「五木寛之さん」の本が見たい、「半村良さんの小説が読みたい」とお話がありました。
そして、その方から一冊の本を紹介されました。
五木寛之さんの「運命」です。
私自身の価値観に大きく影響させられる本との出会いになりました。

私は、本を用意するときに、小説などの小さい字は読みずらいからと思い込み、懐かしい写真集や歴史の本、絵の本を意識して選んでいました。

このことがあってから
自分の先入観を棄てて本を選ぶようにしました。
(自らの希望を表出することが難しい方が多いのは事実です。)

地元の図書館で「ご自由にお持ちください」という本をもらってくているうちに多量の本、雑誌が増えてきました。そろそろこれらの置場所に困っています。

 字や写真が小さくて読むことができなくても、「こんなことが書いてありますが・・・、こんな写真がありますが・・・」と質問をすると

「それは○○だなぁ、そういえば・・・」とお話をしてくださる姿が図書コーナーにはありました。

そんなことを思い出しなから....…

図書コーナーは近日、リニューアルオープン予定です。


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