ストーリーにフォーカスするデザイン
株式会社NEWhのサービスデザインチームマネージャーの石塚です。
以前書いた記事からかなりの時間が経ってしまいましたが、改めてこのnoteでは、改めてNEWhのサービスデザインの特徴や私たちが日々のデザインワークで得られた知見・気づきをご紹介したいと思います。
私たち、株式会社NEWhは、大企業を中心としたエンタープライズの新規事業開発の伴走支援を得意とするデザインコンサルティングファームです。所謂、新規事業開発・事業開発の0→1に関する様々なフェーズのデザインに関する営みをサポートをしています。特に、クライアント企業の社内外の環境情報を踏まえて、どういった事業を展開をすべきかの戦略を立案したり、戦略に基づいてサービス全体の価値を設計し、サービスに含まれるプロダクトの開発し、市場に投入して育てていく一連のプロセスを一気通貫で支援をしていくことを得意としています。
今回は、NEWhのサービスデザイナーが一連の新規事業開発のプロセスの中で、どんなことを重視してデザインを行なっているのかを1つかいつまんで記載をしていきたいと思います。
Story Focusするサービスデザイン
NEWhのサービスデザインにおいて重視しているポイントの1つに「ストーリーに焦点を当てる」ということがあります。新規事業開発において、「ストーリー」というキーワードがあらゆる場面で登場します。
例えば、顧客インサイトの発掘では、ユーザーの日常生活や課題解決のプロセスをストーリーとして捉え、潜在的なニーズを浮き彫りにします。また、コンセプト開発の段階では、新しいサービスが顧客の生活にどのような変化をもたらすかを、魅力的なビフォーアフターストーリーとして描きます。さらに、ビジネスモデルの構築においては、顧客価値の創造から収益化までのプロセスを一貫したストーリーとして描き、各要素の整合性を確保します。
新規事業開発において複雑な情報の構造を明らかにした上で、共感を生み、解像度の高い理解と行動を促す手段として「ストーリー」を活用することが重要です。
ストーリーの定義
新規事業開発で取り扱うべきストーリーとはどういったものであるべきでしょうか?
この問いを明らかにする前に、そもそもストーリーとはどういった情報であるのかを整理していきたいと思います。
まず、伝統的なストーリーテリングの理論において、ストーリーとは、(フィクションであるかノンフィクションであるかは関わらず)一連の出来事や経験を、意味のある順序や構造で結びつけた語りや表現と定義しています。
さらに、魅力的なストーリーを構成する要素として、
に分解が可能です。
例えば、この要素を私の好きな映画のバックトゥーザフューチャーに当てはめると、
というような形になり、上記要素によってストーリーを分解することによって、ストーリーの分析と設計が容易になります。
上記の要素は、新規事業開発やビジネスの構想いける各要素に置き換えを行うことができます。
例えば、「登場人物」はサービスがターゲットとするユーザーやステークホルダー、「出来事・経験」はユーザーが抱える課題や獲得するソリューションや体験と言い換えることができます。
「構造」は、ユーザーが抱える課題発生の構造やビジネスやサービスにおける体験や価値提供の構造や仕組みと捉えられます。特に、サービスにおいて顧客価値の想像から収益獲得までのどのような価値連鎖の構造や力学を検討することがビジネスやサービスのデザインにおけるコアであることも言わずもがなの要件と言えます。
「ダイナミクス」は課題や体験を経た後に顧客にもたらされる変化や成果・ソリューションによってもたらされる効果です。サービスにおいてはこのダイナミクスが最大化するポイントを見出すことが求められます。
「背景・コンテキスト」は顧客が行動し課題が発生する状況、「視点」は課題や体験を経て変化をする登場人物と言えます。つまりは、新規事業開発の場面でもストーリーの構成要素を捉え分析、設定していくことが有用と言えます。
特に、構想要素の中でも構造とダイナミクスを捉えていくことによって、顧客の複雑な情報を正確に理解・共感が可能になります。さらに、価値提供に関しても顧客の情動に寄り添った構造的なストーリーを構築することの重要性は昨今様々な場面で重要性が語られるようになっている要素です。
新規事業でフォーカスすべき3つのストーリー
上記の内容を踏まえて、新規事業開発、特にサービスデザインの観点から焦点を当てるべき3つのストーリーを紹介していきたいと思います。
1、顧客課題のストーリー
顧客課題のストーリーとは、新規事業アイデア創出の原点となる顧客が現状抱える構造的な課題を解像度高く理解するために、課題発生の背景や構造を含む一連の出来事の流れのことを指しています。
ストーリーとして、顧客課題を理解することによって、複雑な構造的課題の情報をわかりやすく整理をし、事業企画を発想していく礎にしていくことが可能になります。
特に、顧客の課題をスポットで発生する事象として捉えるのではなく、一連の行動や構造の変化の流れの中で発生しているものとして捉えることが重要です。
手前味噌ですが、顧客課題をストーリーとして、構造・ダイナミクス・背景を踏まえながら解像度高く理解をしていく方法論はこちらの記事で詳しく解説をしています。
2、価値提供のストーリー
サービスデザインにおける価値創造、つまりはより良い顧客体験を設計していくためにストーリーを活用していくことは非常に有効です。顧客体験の場面において、顧客の行動やサービスと関わっていくフローを一連のライフサイクルのような「構造」を捉えることが重要です。さらに「構造」の中から最も顧客(=登場人物)にとってダイナミクスが働く瞬間としてMoment of Truthを捉えることも重要です。
そうすることによって、顧客に対しての本質的な価値提供の解像度を高めることが可能になります。このような顧客体験の設計にストーリーを活用する考え方や方法論はNEWhのサービスデザイナーの今村や渡邉がかなりわかりやすく記載をしてくれています。
3、ビジネスモデルのストーリー
ビジネスモデル設計の観点でもストーリーを活用していくことは重要視されています。楠木健さんの著書「ストーリーとしての競争戦略」において、戦略はストーリーであるべきとされています。戦略は競合他社との違いを作ることであり、競合他社との違いを生み出す活動やアセット・リソースがつながり、組合わさり、相互作用する中ではじめて長期利益が実現されることと定義されています。さらに、戦略は全体としてゴールに向かって動いていくイメージが動画のように見える、全体の動きが行き来と浮かび上がってくる、「ストーリーがある」状態であるべきと言及されています。つまりは、ストーリーの構成要素である構造とダイナミズムこそが競争戦略やビジネスモデルの肝であるとも言えます。
NEWhにおいてビジネスモデルを一連のストーリーとして描くことによって、整合性や事業構想としての魅力を確認するツールを開発しています。このあたりはビジネスデザイナーの堀が詳しく記載をしてくれています。
また、ビジネスモデルの設計において、競争優位性の源泉として自社の強みを理解をする必要があります。この自社の強みも強みの背景及び一連の構造とダイナミクスをストーリーとして理解することが非常に重要です。このあたりの考え方・方法論はNEWhのサービスデザイナーの酒井が詳しく解説をしてくれています。
まとめ
新規事業開発・サービスデザインに一連のプロセスにおいて情報をストーリーの構造で捉えることで、顧客理解・価値創出・ビジネスモデル設計の解像度を上げることに繋がっていきます。NEWhでは、事業開発における様々なフェーズで適切に「ストーリー」に焦点を当て、さらに魅力的なストーリーを作り上げることができるようなトライを行なっています。
「ストーリー」の構造を理解し、「ストーリー」焦点を当てることによって人々の生活が豊かになるサービスやプロダクトが1つでも世にでる確率が増える一助になれば幸いです。
久々の投稿で少し長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
今後皆さんにとって魅力的なストーリーを紡いでいきたく、ご感想・異論反論はnoteのコメントやSNSでいただけると嬉しいです!
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