漫画家ではない、ゲームプログラマーとしての赤松健

こんにちは、赤松健です。
私はもちろん漫画家ではあるのですが、実は結構なゲーマーでもあり、さらにゲームのプログラマーとして自身でゲームを開発、全国発売したこともありました。
今回は、そういった「ゲームと赤松健」の話を語らせてください!いつにもまして専門的な用語が多いのはご容赦を。


マイコンとの出会い


私は幼少期からゲームが好きで、当時は「カセットビジョン」などでしたが、少ないROMカセットで朝から晩まで遊んだものです。そして、「インベーダー」や「パックマン」のようなゲームをやりたい、いや作りたいという欲求だけが漠然とありました。

そして、中学生の時にマイコン(パーコン)に出会ってしまいました。当時はイトーヨーカドーの家電売り場にPC-8001などが置いてあり、自由に触ることができたのです。
 私は衝撃を受けました。あれほどやりたかった様々なゲームが、この魔法の箱を使えば、自分で自由自在に作れて、しかもプレイし放題という夢のようなことになるかもしれない。
 私はたちまちプログラミングに夢中となり、アスキーなどPC雑誌を読みふけりながらプログラミング学習に明け暮れました。
 中学生の頃までは、BASICという言語をやっていましたが、BASICは低速なインタープリタ言語ですので、とてもインベーダーゲームなどは作れません。
 そこで、最も高速なマシン語(機械語)を勉強することにしました。当時Z80の簡単なアセンブラを使っていましたが、高校に合格したらより高度なPC-8801を買ってもらえるということで、必死に勉強しました。

高校時代~「PALADIN」の発売~


 高校生になってからもゲームプログラミング漬けの毎日でした。
 来る日も来る日もマシン語のプログラミングをして、高二の頃、大好きだった「ドルアーガの塔」のようなゲームを作ることが出来ました。使っていたのはMACRO-80というCP/Mのマクロ・アセンブラです。懐かしいですね。
 一方で、せっかくゲーム作りのスキルも得たことですから、自分の作ったゲームを全国で発売してみたいと思うようになりました。
そこで、高2の頃、当時の4大ソフトハウス(スクエア、エニクッス、日本ファルコム、ボーステック)の1つ、ボーステックに自作ゲームの持ち込みをしました。
そのゲームが「PALADIN」です。当時は高2ですので、普通に中間テストや期末テストもあり、しかたないので夏休みの殆どを使って作成しました。昼も夜もなくプログラミングをしていたので、仮眠して起きたら時計は5時。でも午前5時だか午後5時だか分からない、といった熱中ぶり。ソフトハウスの方々も、高校生がゲームの持ち込みをするなんて珍しいということで親切にしていただきました。
最終的には全国発売され、私は高校3年生にして、全国区のゲームの開発者となったのでした。

漫画家となった今も、ゲームやプログラミング自体はずっと大好きなままです。
今も時間があればそういったものに時間をどっぷり使いたいと思っています。例えば、世代に関わらず好まれる「マンガの絵柄」を、機械学習によって探求する人工知能をプログラミングするとか、そういう感じです。

実際にプログラミング漬けだった人間だから言えること


 これまで書いたとおり、私は中学生でマイコンに出会って以来、中高生の膨大な時間をプログラミングに捧げました。今でもレトロPC収集の趣味があったりします。
 その経験から2つ、政策の観点から思っていることがあります。

①    プログラミングは教育と相性が良い
 プログラミングにおいて、各命令を論理的に成り立つようにプログラミング言語を用いながら記述しなれば、思うようにコンピュータは動いてくれません。しかし、このプログラミングの性質こそが、論理的思考の発達に役立ちます。私も、プログラミングの経験を経て、論理的思考を得たからこそ、漫画家だけでなく、漫画家アシスタントサービス「GANMO」や絶版書籍活用サービス「マンガ図書館Z」などの広くユーザーに使用されるサービスの開発者となれたと考えています。プログラミングは、教育に良い効用があり、社会に出てからも様々なサービスの発想を具体化する力があるのです。

「プログラミング教育」は2020年より小学校で必修化されました。2021年からは中学校でもプログラミングに関する内容が拡充されます。
このプログラミング教育とは、プログラム言語やプログラミングの技能を学ぶこと自体を目的とするものでは無く、主に「プログラミング的思考」、すなわち、順序立てて考え、試行錯誤し、ものごとを解決する力を得ようとするものです。
しかし、「プログラミング的思考」は、その名のとおり、プログラミングによってこそ効果的に養われます。プログラミング教育が本格化したのはつい最近の話です。
今後も、プログラミング教育をより一層発展させ、マインクラフトなどのゲームと組み合わせながら、すべての子どもたちにプログラミング的思考の素養を身に着けてもらうことが、これからの日本の発展には必要不可欠だと思います。資源のない日本で、もし国民の大多数がプログラミングをできたならば、それは十分資源であって、将来強力な武器になるはずです。

②    プログラミング教育においては実践的なプログラミング言語を使うべき
先ほど述べたようなプログラミング教育においては、ビジュアル型プログラミング言語と呼ばれる、あたかもブロックを組み上げるかのように命令を組み合わせることなどにより簡単にプログラミングできる言語を用いられることが多いのです。
 たしかに、小学生の低学年などでは、いきなり実践的なプログラミング言語を教えられても、苦手意識を持たせるだけかもしれませんから、ビジュアル型プログラミング言語のような教育用のプログラミング言語を用いるのがいいのかもしれません。
 しかし、プログラミング的思考を養うのが主な目的とはいえ、せっかく実際にPCを用いながらプログラミングをするのですから、実践的なプログラミング言語にも触れ、ICT人材育成のための教育を早期に始めるのが良いのではないでしょうか。例えば、Pythonとか。
 ICTを利活用できる人材については産業界から人材不足の指摘が数多くあります。国際経営開発研究所によるデジタル競争力ランキングでも上位10位に入れていません(2021年度は28位)。
 「デジタル敗戦」などという汚名を払拭するためにも、プロを見据えた本格的なプログラミング教育を実現し、現状のプログラミング教育をより発展させていくことが肝要だと考えています。

こうした、プログラミング漬けの人間だったからこそ得ている経験や感覚をもとに、この国でよりプログラミングが活用されるよう、政策として訴えていきたいと思っています。

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