見出し画像

呼吸について深く考える〜解剖・機能・精神・東洋医学からみる呼吸について〜


・今回は有料noteになります。*Ⅰ.全身の連動からみる呼吸まで無料にしていますのでよろしければ見てください。 現在配信している内容から今後加筆予定となり、加筆した際に金額を上げようと思っています。既に購入された方は加筆があった際、そのまま閲覧する事が出来ますのでよろしくお願いします。










はじめに


今回は呼吸について考えていきたいと思います。
呼吸に関する解剖、機能、東洋医学的思想、さらには精神面も含めて深く考えていきます。
多角的な面から呼吸を見ながらそれぞれがリンクして行けるよう頑張って書いていきたいと思います。


まず初めにですが、
呼吸には2つの意味合いがあります。

1つはガス交換としての呼吸、
もう一つは呼吸という運動です。


ガス交換は体内の二酸化炭素を排出し空気中の酸素を取り入れる役割です。ここに関する部分は生命活動の維持に重要となる部分なので早急に適切な処置が必要となります。
そのため、呼吸器外来や呼吸器リハが発展してきました。




しかしガス交換としての役割だけでなく呼吸という運動は全身的にさまざまな効果がある事を皆さん知っていると思います。

ヨガやピラティス、DNS、マインドフルネス瞑想、アレクサンダーテクニーク、ドローインやブレーシングなど洋の東西を問わず呼吸に注目したエクササイズは多いと思います。

今回はガス交換としての呼吸ではなく呼吸運動について私なりの考察をしていきます。
ですのでCOPDなどの呼吸器疾患に関しては言及致しませんのでご了承下さいませ。


呼吸運動のもたらすもの

呼吸運動がもたらすものとして以下のようなものが挙げられると思います。
・姿勢の安定
・肩こり、腰痛の予防
・メカニカルストレスの軽減
・自律神経の安定
・精神の安定
・冷え性の改善

などなど
詳細は後ほど触れていきますが呼吸はとても多様な部分に関与すると思われます。

呼吸の運動

呼吸を種類分けすると色々な区分があると思いますが
胸式呼吸腹式呼吸が一般的によく知られる区分ではないでしょうか?

胸式呼吸は肋骨運動を主体としており、吸気時に胸が広がる動きです。

腹式呼吸は横隔膜の運動を主体とし吸気時にお腹が膨らむ動きです。

どちらがよいのかはケースバイケースでもちろん使い分けれる事が最善ですが呼吸運動と言った面では腹式呼吸ができる事が望ましく、また多くの方は腹式呼吸が上手く出来ないと思います。


Ⅰ.全身の連動からみる呼吸


腹式呼吸の要とも言える横隔膜は筋連鎖によって全身へと波及致します。

アナトミートレインではディープフロントライン(以下DFL)によって頸部〜下肢までの幅広い連鎖について言及しております。

画像1

画像2

『画像引用:医学書院 アナトミートレイン 徒手運動療法のための筋筋膜形線 第2版』

このDFLが余計な緊張がなく空気の通り道が変形せず、スムーズに動く事が呼吸には大切だと私は考えています。


特に横隔膜を下制する際に頸部の緊張や縦隔の硬さがあると、下にさがろうとする横隔膜と拮抗してしまうことになります。

よって横隔膜上部のDFLが開放されていて横隔膜の自由度を高めてあげる必要があると思います。


ではこのDFLに関与する部分を部位別に見てみたいと思います。


頸部周囲

頸部周囲を見てみると舌骨上筋群舌骨下筋群があります。

画像3

画像4

『画像改変引用:医学書院 プロメテウス解剖学コアアトラス 第2版』

・舌骨上筋群
オトガイ舌筋、オトガイ舌骨筋、
顎ニ腹筋、顎舌骨筋、茎突舌骨筋

とあります。

オトガイ舌骨、顎ニ腹筋は下顎の開口
顎舌骨筋は下顎を後方に動かす作用
茎突舌骨筋は舌骨を上方に上げる作用
オトガイ舌筋は舌を突き出す作用
などを有しています

・舌骨下筋群
肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、
胸骨甲状筋、甲状舌骨筋

があります。

これはら主に舌骨を下方に引く作用があります。

ここで注目したい事として、舌骨は他の骨と接続しておりません。空中に浮いている骨となりますので舌骨上筋と舌骨下筋のバランスが大切となります。

舌骨下筋が緊張して舌骨を固定する事により舌骨上筋が適切に働きます。

舌骨下筋が働かず舌骨上筋が緊張すると舌骨は固定されず上方に挙げられてしまいます。
すると顎ニ腹筋による下顎の開口、オトガイ舌筋による舌の動きが働きにくくなります。


頸部周囲と横隔膜の連動

これらの頸部周囲と横隔膜は連動しており頸部の状態により横隔膜の働きやすさに変化がでます。

自身で試してみると
立位か座位にてみぞおちに手をあてて下顎を下げて開口してみるとみぞおちに力が入る事を感じると思います。
この際口唇は閉じたまま開口してみてください。

また、喉頭を前傾や頭部を少し前傾させても、みぞおちに力が入るのを感じると思います。

恐らくはDFLにより横隔膜下制→縦隔を下方に牽引→舌骨下筋群の活動(喉頭下制)→舌骨上筋の活動→(下顎の開口)と働いているからだと思います。

反対に歯を食いしばっているような状態では舌骨が上方に引き上げられDFLの下方への滑走が行いにくくなると思います。

通常安静位では上下の歯は接触していないですが力んでいる人では常に上下の歯が接触している場合があります。
歯を食いしばる癖があるかを確認しておくと良いと思います。

また舌骨が上方に引き上げられていると下顎の下制も行いにくくなります。
すると上顎を動かす。つまり頭部を動かして開口する方がいらっしゃったりします。

DFLの下方への動きが悪いと
頭部を後方、頸部を伸展、脊柱を伸展させて胸式呼吸のパターンになると思われます。

これはアナトミートレインでいうスーパーフィシャルバックラインを利用しているのだと思います。

画像5

『画像引用:医学書院 アナトミートレイン 徒手運動療法のための筋筋膜形線 第2版』

・頸部周囲のアプローチ

頸部周囲にアプローチとして舌骨の動きを確認します。
舌骨を挟んで左右方向や下方向に動かして可動性を見ます。可動性の引く方の動きを引き出したり直接的に筋にアプローチをしていきます。
頸部は繊細な場所なので注意しながら行う必要があります。

画像6

また上記の開口動作や喉頭を下げる動作によって横隔膜の収縮を確認することはそのままトレーニングになります。

舌骨上筋群をリラックスさせる方法として下顎を開いて舌を出す動作なんかも良いと思います。

胸部〜横隔膜

DFLとは別ですが、胸郭は呼吸にとって重要な役割を果たします。
その動きは上位肋骨と下位肋骨で動きが異なります。

上位肋骨は横から見た時(矢状面)前上方に持ち上がるように動きます。
こちらをポンプハンドルモーションと言います。

画像7

『画像改変引用:医学書院 プロメテウス解剖学コアアトラス 第2版』

下位肋骨は正面から見た時(前額面)外上方に広がるように動きます。
こちらをバケツハンドルモーションといいます。

画像8

『画像改変引用:医学書院 プロメテウス解剖学コアアトラス 第2版』

横隔膜の機能においてはこのバケツハンドルモーションが重要となります。


バケツハンドルモーションと横隔膜運動

画像9

こちらは下位肋骨と横隔膜の模式図です
横隔膜は肋骨から始まり腱中心に付着します。



横隔膜が収縮すると自らの収縮力によって腱中心は下方へ引き下げられます。

画像10


これにより横隔膜は下方に下り吸気を行える事になります。

下方に下げられた横隔膜は腹圧や内臓により下方に下がるのを停止します。
そこからさらに横隔膜が収縮していくと肋骨を上方に引っ張る力がかかってきます。

画像11



治療的側面としては下位肋骨のバケツハンドルモーションを誘導すると横隔膜は肋骨により引っ張られる形となる為下方への動きが促されていきます。

画像12



そしてDFLでの筋連鎖において胸部で縦隔を介して筋連鎖をしております。よって胸郭の動きだけでなく、縦隔の滑走性も必要と思われます。

・胸郭アプローチ

胸郭の柔軟性を見るには立位にて体幹後屈を確認しています。
後屈角度や上位胸郭と下位胸郭の前後径を確認します。

胸郭が自由に動くと前面の肋間が広がるように後屈できるので
下位胸郭に向かって前後径は短くなります。

画像13

胸郭が硬いとひと塊に後傾しますので前後径があまり変わりません。

胸郭は大きく、多くの組織が近くを通りますので胸郭の自由度を引き出すにはさまざまな場所にアプローチしなければなりません。胸郭はもちろんのこと、頸部、肩甲帯、上肢、腹部なども見ていく必要があると思います。
また後述しますが腹部筋は下位肋骨の動きと関わりが深いので要注目です。

セルフストレッチとしては腹臥位での胸椎伸展エクササイズ

画像14

腹臥位でお腹を地面につけたまま行う事で腰椎による代償を押さえながら胸椎、胸郭を広げます。

また座位、立位で下部肋骨を軽く抑えて胸椎伸展などが有効だと思います。

画像15



縦隔は胸郭内部にある為直接触れません。胸郭を介してアプローチしていきます。

術者の前腕部を胸骨と胸椎部に当てて挟み込むように軽く圧迫し、上下方向に動かします。胸郭を介して縦隔を動かしていくイメージです。

画像16


横隔膜〜腹部

横隔膜の下にはすぐ内臓が位置してます。
肝臓、胃、脾臓、腎臓、副腎が横隔膜と接しております。

これらの腹腔臓器もまた横隔膜の動きに関与しています。

また外腹斜筋、腹直筋は起止部を下部肋骨に持ち、バケツハンドルモーションの制限に関与する可能性があります。


腹部アプローチ

腹腔臓器が横隔膜の動きに関わるという事ですが
ここでは接触面の多い肝臓へのアプローチを考えていきます。

肝臓を前後で挟むようにして、保持して横隔膜のドームの下を滑らせるイメージで行っていきます。

画像17

『画像引用:スキージャーナル 骨盤力 フランクリンメソッド』

腹部の筋では

画像18

画像19

『画像改変引用:医学書院 プロメテウス解剖学コアアトラス 第2版』

丸で囲んでいるような筋の付着部でないが肋骨と重なっている所の滑走性を促してあげると良いかと思います。


Ⅱ.呼吸と姿勢制御


ここから先は

6,844字 / 13画像

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?