認知症のおばあちゃん③孫の顔が分からない事がここまで面白いかね！？

【祖母はもう、僕の事も分からない】

年末年始で久しぶりに実家に帰った時、ばあちゃんがお世話になってる施設に顔を見に行った。

去年何度かばあちゃんは倒れたらしく、お母も死ぬ事を覚悟して泣いたんだとか…

施設に入ってエレベーターで2Fに行きエレベーターの扉が開いた瞬間

おしっこの匂いがした。

憩いの場のようで、沢山の高齢者がいたが
どうやらトイレに行く事は出来なくなったので身体に管を通して済ませている人が何人もいるようだ。

ずーと、一点を見ている人
ずーと、ごにゃごにゃ独り言を言っている人

どうやら……

ここは本当に、
最後を迎える所らしい。

俺は、

人間とは？
という如何にも人間らしい命題を頭に浮かべながら自分のばあちゃんの前に立った。

俺）久しぶり。

婆）お久しぶりね〜

俺）そうね笑、誰でしょうか？

婆）え？？あら、あら…

やっぱり祖母はもう、僕の事も分からない。

俺）覚えてない？？笑

婆）いや、ちょっと、あの、

俺）…

婆）あ、思い出した！！田中さんでしょ！！

俺は思わず吹き出した笑
(僕の苗字は田中なんです)

俺）いや、田中さんは田中さんよ！

婆）そうでしょ！！

俺）生まれた時から田中さんやったけど、あなたの孫の田中さんよ？？笑

婆）あぁ！！けん君ね！！大人になって！！いい男になったど〜

俺）適当な事言って〜笑

そのまま、車椅子に座っているばあちゃんをお母と親父の所に連れて行く…

するとそこからばあちゃんは何故かとにかく親父を褒め出した。

婆）あら、よか男やね〜

父）あたの嫁の旦那たい笑

婆）あ、東一郎さんね！大人になってよか男になったたい！！

俺）それ俺にも言いよったやん笑

婆）お！白か靴ば履いとるぞ！！綺麗やね！！紐もいっぱいあるごたぁ！！

俺）靴に紐はあるくさ！！笑

婆）大したもんや〜

それからもばあちゃんの口から出る言葉は全部

相手を褒める言葉やった。

最高やな…

歳を取るとは引き算で、色んな物が取られていく…
頭も、体力も、若さも…
その引き算で残った物がその人の魅力なんやろう。

生きてるだけで人を褒めて幸せにする。

どんなにボケていても。

祖母はもう、僕の事も分からないけど。

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