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ないものねだり | パンジー

春に咲く桜の花になりたかった
すべての目線を空に向かせて
人の心を前向きにする魔法を持つ
はらり、はらり、と散りゆくその儚さも
まるでドラマの中のヒロインみたい
そんな姿に、憧れる


夏に咲くひまわりになりたかった
宇宙の全ての光と熱が降りそそぐ大地に
しっかり根を張って揺るがない
その、芯の強さ
太陽に負けじと笑うその表情は
あたりをパッと明るく晴らす
そんな姿に、憧れる


秋に咲くコスモスになりたかった
華奢なからだは
涼風にきまぐれに揺さぶられる
彩りゆたかな見た目とは裏腹に、
可憐な姿は時に陰を見せ、次の季節を憂う
ふわり、どきり、魔性の魅力を静かに放つ
そんな姿に、憧れる


自分に無いものを欲しがるのは、
花も同じみたいです


あなたはそんな風に、他の誰かに憧れるけど


じっと寒さに耐えながら
大地を見下ろし物思いにふけっているのか
時に涙を流しているのか
それでもあなたは、そこに居続けた
冬の、モノクロに侵食されそうな世界の片隅で
ちゃんとこの世に、彩りを、安らぎを、届けていたよ


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私は、ちゃんと見てた


春になっても街角で、あなたに会えて嬉しく思う
毎日、毎日、そこで咲き続けることが
どれだけ難しいかを知っているから


あんまり深く考えすぎなくて、いいよ
もたれたその首をあげて、空を見上げて、
ぺろっと舌を出して笑っちゃうくらいで、生きよう


あなたのその花びらのように、

やわらかく、

やわらかく。


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