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事業を創るよりも、守ることの方が難しい?
「帝王の事業のなかで、創業と守成といずれが困難であろうか」・・・「一旦、天下を手中に収めてしまえば、気持ちがゆるんで、自分勝手な欲望を抑えることができなくなります。・・・・国家の衰退を招くのは、つねにこれが原因になっています。このような理由で、わたしは守成こそ困難であると申し上げたい」(貞観政要、君道編)
中国古典のリーダーの在り方について書かれた貞観政要の一節です。長文の為、現代語訳の一部抜粋になります。
この一節は、創業と、創業後の事業を守ることのどちらが難しいのかを問いかけたものなのですが、結論としては創業よりも事業を守るほうが大変だと言っているのです。なぜなら、創業時はその時のニーズにも合わせ、人々に喜ばれることをすれば、自ずと事業が大きくなるのに対して、
事業が大きくなった後は欲望も大きくなるため、贅沢三昧をすることで人々に負担をかけ、国家の衰退につながるためだと書かれているのです。
私は、この一節を読んだ時は衝撃的で、目からウロコが落ちる思いでした。
なぜなら、事業を守る以上に事業を創ることの方がずっと困難だという思いこみがあったためです。
しかし、確かに考えてみると、これは国家にしろ、企業にしろ、その創業時はその時のニーズを捉え、対応できれば急成長していくものの、時間の経過とともにおごりが生まれ、変化するニーズに対応できなくなった時に衰退していくものです。
例えば戦後の日本。焼野原から始まった戦後からソニー、松下電器、トヨタといった企業が世界のニーズを捉え、貿易立国として急成長しました。しかし、財テクに踊ったバブル、そしてその崩壊を経て日本経済は衰退の道を行き、今では貿易赤字が定着しかねない状況となっています。
これなどはまさに「自分勝手な欲望を抑えることができなく」なり、国家が衰退に向かった例と言えます。
国家レベルでなくても、企業、事業のレベルでも同じことが言えるのではないでしょうか。事業が大きくなっても自分の欲望を大きくすることなく、創業時と同じ気持ちでその時のニーズを捉えることは、確かに創業よりも大変なことだと思います。事業を守るということは、創業と比較しても困難であるということに納得します。
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