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高度専門人材が活用できるかどうかはリーダーシップ次第

2月17日の日本経済新聞4面に気になる記事がありました。それは、「博士採用ゼロ、大手の2割 業務・待遇の整備遅れ」という記事です。本記事では、経団連の調査をもとに、日本企業は博士課程修了者の採用数が少なく、能力に見合った仕事や待遇の整備が遅れていることが紹介されていました。
 
私はこの記事を読んだ時に思い出したのが、幕末、長州藩の軍事責任者として採用された大村益次郎(1825~1869年)のことでした。大村益次郎は武士の生まれではなかったものの、西洋の学問(当時の蘭学)、特に軍事や技術に精通した、いわば当時の「高度専門人材」だったのです。
 
長州藩は対幕府との戦いに備えるために、大村益次郎を軍事責任者として抜てきしたのですが、武士階級でないものを軍事責任者とすることは当時の常識を超えていました。また、大村は、特定能力が高い人にはよくある話しですが、コミュニケーションに難点があり、周囲の反発を買うこともあったのです。
 
しかし、そんな大村益次郎を抜てきし、そして対幕府戦争で力量を存分に発揮し、最終的には幕府に勝利できたのには、大きなリーダーの存在がありました。それは長州藩の木戸孝允(1833~1877年)です。
維新の三傑として名前を残している木戸孝允は、自分自身も武士でありながらも、幕府に勝つためには身分に関わることなく、高度な専門性を有する大村益次郎を採用すべきだと考えたのです。そして大村益次郎を採用したのちも、大村を徹底して支援していきます。
木戸孝允のリーダーシップなければ大村益次郎の抜てきはなく、大村益次郎がいなければ対幕府戦争での勝利もなく、明治維新もなかったのです。
 
それに対して、現代の「高度専門人材」の一つである博士課程修了者に対する対応はどうなのでしょうか。記事では経団連は「必要な専門性を備えた求める人材像を示し、職務を明確にしたジョブ型採用や通年採用を通じて多様な人材に門戸を開くよう呼びかけた。能力や成果に応じた手厚い処遇も必要」とあります。
 
こうした取り組みも必要かもしれませんが、本質的には木戸孝允が幕府に勝とうとしたような高いビジョンをリーダーがもち、そのビジョンに向けて必要な人材を採用、抜てきすることが必要なのではないでしょうか。実際、アメリカの巨大IT企業は将来のビジョンを描いたうえで、その実現に向けて博士課程修了者を大量に採用しているのです。
「高度専門人材」の採用、抜てきは、企業のリーダーがどれだけ高いビジョンをもち、その実現にどれだけの覚悟をもっているかによるのです。

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