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現代にも通じる、江戸時代・大坂のお米×金融市場

先日、「大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済」という本を読みました。
本書は、江戸時代に大阪の堂島に置かれていた米市場のことが描かれている本です。この大阪堂島米市場は世界的にも最古の先物市場の一つと評価されているほどです。
大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済 (講談社現代新書) | 高槻 泰郎 |本 | 通販 | Amazon
 
読後の感想は、いやあ、人間のやることはいつの時代も同じだなーとしみじみ感じました。
 
この市場ですが、大名が商人に将来引き渡すお米の引換券として「米切手」というものを商人に渡し、商人は米切手分のお金を大名に渡します。実際にお米と米切手が交換されるのは数か月先なので、その間は米切手を商人間で売買することができます。
 
その売買の際、その年のお米がたくさんできそうなのか、そうでないかによって米切手の価格が上下してきます。お米がたくさんできそうなら(お米があふれるので)米切手の価格は下がるし、そうでないなら(お米が少ないので)米切手の価格は上がるのです。その価格が決まっていたのが大阪堂島米市場で、その価格動向は全国の米の値段も決めていたといいます。
 
さて、この米切手、大名からみるとお米を裏付けとしてお金を調達できる、立派な「金融」手段です。
 
でも、実際には引き渡せるだけのお米が十分にないにも関わらず、米切手をたくさん出していた大名が結構いたというのです。こうした米切手は空米切手と呼ばれていたようです。お米が空なのに米切手を出していたのです。
 
なんだか、住宅ローンに実態がないのに、それを裏付けとしてお金をたくさん調達していたサブプライムローンのことを思い出しました。そう、空米切手は江戸時代のサブプライムローンだったのです。
 
空米切手は、実際に引き渡せるだけのお米がないのですから、当然トラブルになります。商人は、「米切手とお米を交換しろー」となるわけですが、大名には引き渡すだけのお米がないのですから、引き渡すことはできません。
 
実際のところは、お米を引き渡せない米切手については、お米の代わりに現金を引き渡して決着していたようです。ただ、大名の規模に対して過大な米切手を出していた大名もあり、米切手が無価値になるリスクは常にあったと思います。
 
こうした空米切手に対する江戸幕府の規制や、また米の価格を安定させる為に裕福な商人たちに米切手を強制的に買わしていたこと(最近の日銀の銀行に対する国際買取推奨を連想させます)等、詳細は省略しますが、現代にも通じるお話しがたくさんありました。
 
歴史×金融に興味がある方なら、ぜひおすすめの一冊です。
 

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