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素敵なクリエーターさん達の作品をお勧めしたいマガジン

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私の心が素直に動いた、他の方の素敵なお勧めしたい作品の掲載。 最近は、作者の方にきちんと許可を得て掲載してます。
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2024年6月の記事一覧

【詩】旅に出る

鳴く鳥の 声に誘われ開けた窓 日陰の風がひんやりと 半袖をすり抜ける ありふれた毎日に 心が小さくなっていく 見慣れた景色しか 見えない心になっていく 暖かさの余白さえ いつの間にか気付けずに やさしさの延長さえ いつの間にか気付かずに 大切なものを失くす前に もっと私を広げたい 今日をただ待つのではなく 今日を感じる旅に出る

写真詩「訃報」

それはいつでも唐突にもたらされる 代り映えのない日常を裂くように 平凡であることを見下していた 普通であることを嫌悪していた 個性的であることに憧れていた そんな子供じみた私に あなたは教えてくれた 平凡であることのしたたかさを 普通であることの強靭さを 個性とは無理に生み出すものではなく 自然と滲み出るものだと 紫陽花の季節に あなたは逝ってしまった あなたの遺影に寄り添うように BEATLESが流れていた あなたらしいお別れだった

【詩】ほんの一歩

ほんの一歩が大きくて 飲み込んでしまう言葉の行方 交われない気持ちには 寂しさが纏わりつく 思ったままに笑えなくて いつしか静かな笑顔に慣れて 気付けば隣人がとても遠い 人の中に沈むほどに 一人になって 守る心も孤独では 何を守ると言うのだろう ほんの一歩が遠すぎて 一人歩きばかりが上手くなる

【詩】どうしようもなく螺旋の渦

これは静止した世界で起こる 何時でも側にいてくれる人なんていない あなたがどうなんて言葉は出てこない 孤独で 孤独で 孤独で でも孤独で死んでしまう事もない 只生きてるだけの屍になる 空中に浮かぶ霧のようになり 誰かの息になるなんてことはない それが世界中でいちばんの孤独だなんて いったい誰がわかるだろう すぐに見渡してみて 周りにある堤防が決壊しそうで 怖くなる 唇から出る黒いものは何? それは澱のようなもの 孤独という名の澱のようなもの