【WSET diploma】 D1 Wine Production編
お久しぶりです!
前回の投稿からずいぶんと時間が空いてしまい、季節はもはや秋を通り越して冬・・・寒い!
6月にイギリスから帰国し、早4ヶ月。10月末のD4&D5試験(おまけにD3も)に向けて仕事&勉強に邁進する日々を送っていましたが、とりあえず落ち着いたので順番にnoteを更新していこうと思います。
さて、ぼくが試験準備に追われているうちにAcademic yearは2019/2020へと変わり、diplomaルールも諸々変更となりました。そのへんも踏まえつつ、これから受験を目指す方に役立つ内容を目指します!
今回はdiplomaという大冒険の最初の関門、D1 Wine Productionについて、ぼくの実体験をもとに簡単にまとめたいと思います。
D1では何を学ぶのか
D1はdiplomaのスタート地点であり、全ての受験者が最初にテストを受ける必要があります。僕はロンドン校のIntensiveコースを受けましたが、リアルの授業に加えてオンライン授業も約1年間ついてきます。
D1では、大きく4つのことを学びます。
・Vines(ブドウ樹の性質、生育サイクルなど)
・Growing environment(気候、土壌、水など)
・Viticulture(栽培全般)
・Winemaking(醸造、熟成、処理、瓶詰とラベリング)
D1だけは他のユニットと違ってテキスト(大判160ページの大作)がもらえます。テキストもらえるとテンション上がりますよねー。
喜び勇んでテキストを開きます。
「よーし、いよいよ始まるぞー」
ぺらっ
・・・。
・・・・・・。
(|| ゚Д゚)
文字ばっか!
なにこれ全部英語だし(当たり前)
専門用語多すぎるし(decapitationって何)
てかなんの話してるか途中から分からんくなってくる・・眠い・・・zzz
と、全然読み進められず。。。
最初の1ヶ月くらいでさらっと終わらせるぜーひゃっほー・・などと甘く考えていた自分は初日から大いに挫折し、結局このテキストを全部読んで理解するまでに丸っと4ヶ月かかりました。。
よく考えたら洋書ってほとんど挿絵とかないんですよね。日本の本が丁寧すぎるのかな、洋書ってひたすら文字が並んでるんです。だからこういう文字だけのテキストってごくごく一般的なんですが、ビジュアルを使った解説が多いのかな♪と期待していたので、さすがに面食らいました笑。
しかーし!このdiplomaのD1。
最初に理解するまでは時間がかかるわけですが、一度頭に入ってくるとその内容の面白さにすっかり引き込まれてしまいます。
ソムリエ(あるいはWE)の愛読書「ソムリエ教本」では、こういった基礎的な内容に多くのページが割かれていません。ソムリエ教本は「知識を網羅」した本で、世界中の産地、原産地呼称が一通り載っているのでそういう調べ物には悪くありませんが、ワイン造り・ブドウ栽培の「なぜ?」を理解するための本質に迫るには、正直物足りないところがあります。
一方WSETでは、その「なぜ?」の部分に多くを割いています。
例えば「仕立て方」一つとっても、日本のワイン本では「コルドンとギュイヨが代表的な仕立て方です」という説明にとどまってしまいますが、WSETではそれぞれの仕組み、長所と短所、どういった産地・畑・生産者に選ばれているのかの解説があるため、「なぜシャンパーニュではコルドンが多いのか」という疑問への答えが導き出せるというわけです。
生産がわかる、というのは特にプロにとって非常に大事なことです。ワイナリーの人たちとコミュニケーションをとるときに、「どうしてこのワイナリーではこの作業を行うのか」という疑問を抱くことができるからです。そしてより深い話題に掘り下げることができ、造り手のこだわりや想い、あるいはその土地の慣習的方法などを知ることにつながります。
生産への理解は全ての基本ですから、当然D2以降の理解に不可欠です。カリフォルニアは温暖な土地にもかかわらずどうして高品質なピノ・ノワールワインが造れるのか、エルミタージュはなぜ高いのか、ガリシア地方ではなぜアルバリーニョばかり造られているのか・・・こういった疑問の全てに明確な理由があり、その理解のためには基礎が必要だと、WSETは言います。
そんなわけですから、僕は4ヶ月かかりましたが、4ヶ月かけてよかった!とも思っています。というのも、このユニットの理解をないがしろにすると、これ以降の学習に支障が出てしまうからです。
ぜひ、みなさんも頑張ってください!!
D1の試験方法は?
旧ルールでの試験はmultiple choice(選択式問題)100問だったのですが、新しいSpecificationによるとOpen-response paper、つまり筆記問題になるようです。
(Specificationより "Assessed by an open-response paper that is to be completed in 90 minutes")
選択式から筆記に!? ということで「聞いてないよー(古)」と嘆く声も出てきそうですが、D1は上でも書いた通り「全ての基礎」とも言えるほどめちゃめちゃ大事なユニットなので、ここをしっかりと勉強することは必ずや後々の学習にも良い効果をもたらすと思いますので、是非乗り越えていただきたいなと思います!
追記)英語による筆記問題について
ところで、diploma筆記問題への誤解・・誤解というより「恐怖」だと思いますが(笑)、diplomaを受けるにあたって英作文のスキル、英文法のスキルが要求されるのでは・・・と恐怖に慄いてる方が多いと思います。(すでにLevel3を英語受験されてる方はもう体験済みですよね)
もちろん「何書いてあるかわからん・・」というレベルの文章では内容も伝わらないのでアウトですが、基本的に文法力(例えば時制の一致や冠詞の使い方など)は採点には一切影響しないとWSETは言っています。
大事なのは「理解できているかどうか」を示すこと。
だから、筆記といって特別な英語の学習をしなければいけないとは私は思いません。
とはいえ、ワイン用語はきちんとスペルミスなく書けなければいけません。こればっかりは覚えるしかないので、暗記暗記暗記です。。
(補足:Specificationでは「IELTS6.5以上あるいはそれと同等のレベル」があることが推奨されていますが、別にチェックされるわけでもありませんのである程度英語で文章が書けるようになればOKだと思います)
ぼくは5月末にロンドンでのIntensiveコース期間中にD1を受験しました。結果は数日ののちにメールで送られてきました。結果はPass with Distinctionで無事合格!
まずは第一関門突破です!
次回はD2 Wine Businessの試験についてお話したいと思います!
※これから受験する!という方からのご質問、ご要望大歓迎です!コメント欄に是非ご記入ください!
※参考になった!と思われた方は、是非ハートボタンもよろしくお願いします(モチベーションになります!)
追追記)new specificationでの結果について (2020/04)
ルールが一新されたD1試験の第1回結果について、Examiners reportがアップされていましたので簡単にご報告です。
ちなみにExaminers Reportというのはdiploma試験の試験官たちによる結果報告と、受験者たちの回答の傾向を解説するもので、合否にかかわらず、受験者たち必読のとてもためになる報告書です。diploma candidateの方たちは、定期的に配信されるこの報告書を必ず読んでおくことをおすすめします!
2019/2020シーズン、4月9日までの合格率は67%、Pass with distinctionが3%、Pass with meritが18%、Passが46%、Failが23%、Fail unclassifiedが10%という内訳です。
明らかに、難易度が上がっています。やはり選択式からオープン・レスポンスになったのが大きいのだと思いますが、試験官のコメントには「高得点を取れた人が少なかったのは、質問の意図をきちんと汲み取れていない受験者が多かったからだ」とあります。「解答を書き始める前にきちんと文章のプランを立てること!その間に、なにが問われているのかをきちんと理解することができる」とアドバイスをしています。
問題ごとの点数配分もとても重要です。なぜなら、試験官が想定する模範解答は、この点数配分に応じて組み立てられていると想定されるからです。つまり、例えば配点50%の問題では、解答時間の50%程度を費やしてじっくり取り組まないと答えられないほど、深い内容の解答が求められているということです。反対に配点10%の問題などは、概要だけをさらりと説明するだけで十分な問題ということであり、細かすぎる説明はなんの加点にもならず、時間の無駄になってしまいます。オープン・レスポンス形式はD1に限らず具体的な模範解答が存在しないため、この点数配分が「どれくらいのレベルで問われているか」を測る重要な鍵になるのです。
せっかく勉強して理解したとしても、試験本番で慌ててしまって、とんちんかんな解答をしてしまってはとてももったいないです。先述の通り、英文が洗練されているかどうか、文法が正確かどうか、というのは二の次です。(WSETはdiploma candidateにIELTS6.5以上かそれ相当の英語力を身につけることを強く奨めています)
①質問の意図をきちんと汲み取り、的を射た解答をすること
②点数配分に応じた「深さ」の解答をすること
この2点が非常に重要である、ということはSpecificationにも書かれています。勉強そのものはもちろん大事ですが、試験への取り組み方というのも、きちんと学んでおきましょう。
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