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【WSET diploma】 学習の準備編

※2020年3月 内容更新しました

お久しぶりです、WSET diplomaの記事、第2弾です。
今回は、「diploma学習の準備」について整理したいと思います。

ちなみに日本で独学でdiplomaを学習する方には、諸先輩方のブログがとても参考になるかと思いますので、リンクを貼らせていただきます。

●diploma受験の金字塔的ブログ → アホおやぢの日々のブログ
●2017年より挑戦中の水上様のブログ → 余韻手帖 | きものでワイン

私はお二人ともお会いしたことがないのですが、いつか機会があれば是非直接お話を伺ってみたいです!


さて前回はdiplomaを勉強する準備段階のところを少しお話しました。
あらためて、「diplomaを取るためには?」の道筋をまとめますと、

1. WSET Level3を取得すること(キャプランとアカデミー・デュ・ヴァンが認定校)

2. キャプランにてDiplomaオンラインコースを申し込む あるいは 独学で勉強する(登録料・チュートリアルは受講必須)

3. D1からD6に分かれた6つの試験に全て合格すること


学習に必要な教材って?


認定校への登録、あるいはオンラインコースの申し込みが完了すると、晴れて「Diploma Candidate」の一員となります。

「さあ!これから勉強だ!・・でも何勉強したらいいの?」

diploma学習に「最低限」必要なものは下記の通りです。

・Study guide
・Specification
・Tasting/Theory Guidance
・Diploma Reading
・The Oxford Companion to WINE


ところで、私はLevel3を日本のAPPで合格し、diplomaの申し込みはLondon Schoolで行ったため、Candidate numberを引き継ぎする必要がありました。そうしないと、「君、Level3受かってるの?」と疑われますからね。こういったイレギュラーなケースにも(意外なことに)割とメールで丁寧に対応してもらえますので、自分の事情やスケジュール感なども合わせてチューターの方にお話しておくとよいでしょう。
これも余談ですが、イギリス含めヨーロッパの方達の中には「言った者がち」精神がありますので、自分の都合や「こうしてほしい!」というお願いも、叶うかどうかは別にして、どんどん伝えたほうが良いと思います。日本人の【わがまま】が、ヨーロッパ人の【控えめ】と同程度と思ってください(笑)。

Candidateになると、Study Guideと呼ばれるテキスト一式が送られます。(日本で学習される方の場合は別途申し込みが必要、という記事がありましたので、気になったらAPPの担当者さんに聞いてみてください)

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そして!

いわゆる教科書的なStudy Guideももちろん大事なんですが、それより見落としがちなのが「Specification」、「Theory Guidance」、「Tasting Guidance」そして「Diploma Reading」という資料です。これはオンライン上で入手することになります。

これ自分でダウンロードしないといけないのでPC苦手な方は要注意です!もしかしたらキャプランさんで申し込みした場合はガイダンスがあるかもしれませんが、ロンドン校で一緒に受講したCandidatesの中にも何人か「ナニソレ?」な人がいましたので気をつけてください!

CandidateにはWSET Online Class Roomに入るアカウントが与えられます。ここにログインして「Diploma Resource Area」という部屋に行くと、これらを含めた重要な資料が保存されていますので、それらをダウンロードしてくださいね。

まずはSpecification。
Specificationには合格までの道標、各ユニットで求められるスキルと評価基準、そして学習範囲が記載されています。diplomaの学習は、ソムリエ試験のように与えられた教科書を全て暗記したら合格する、という類のものではありません。もちろん後述するDiploma Readingに必要な情報は網羅されているわけですが、一つの設問に対してあらゆる知識を総動員する必要があります。つまり、Specificationに記載された学習範囲の中のことは何を聞かれても良いように準備しておかないといけません。

・・・これ、WSETの本質だとぼくは思います。つまり、
diplomaのスゴさは「試験に合格すること」がスゴいのではなく
「試験のために膨大なリサーチをしてそれを身につけること」がスゴいんです。

この考え方ってすごくイギリス的だな、って思います。
日本って、試験日に向けて詰め込みまくって、「攻略法」を読み込んで、試験のテクニックを磨いて、そして試験日は瞬間最大風速を吹かせることが求められます。センター試験のように・・・
でもイギリスは、日本の高校受験のようなすごく大事な試験を、数週間にわたってひと科目ずつこなしていく。きちんと、その人に資質が備わっているのかを、じっくりと見ていく。だから付け焼刃が効かない。攻略法がない。その代わり、実力がある人はその実力に見合う称号が与えられる。

さて話を戻して。

Theory GuidanceとTasting Guidanceには、diploma試験ではどういう問題が出されるか、どう答えたら良いか、試験官は何を求めているか、といういわゆる「心構え」が記述されています。2018/2019年度まではもっとページ数も多くて非常に細かく記載があったのですが、随分ライトになりました(Theory 23ページ相当→7ページ)。

分量は多くないですがとても大事なんで、必ず全部目を通してください!

4番目のDiploma Readingは、オンライン上で読める教科書といったところです。
今まではこういったきちんとした教科書がなかった(はず)ので、オンライン上とはいえ、かなり有難い存在です。
Specificationにはこう書かれています「The materials prepared by the WSET provide all the factual information that a student needs, and distinction grades can be achieved with this alone, as long as the required skills are also sufficiently demonstrated」。ということで、しっっかりこれを勉強しましょう、ってことですね。Required skillsについては、上述したGuidanceとSpecificationに記載があります。

5番目のOxfordについては説明不要ですよね。ワイン界の辞書みたいなもんです。

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ぼくももちろん家に持ってますが(London schoolでもらったやつは重いのでホストファミリーにあげました)、Kindleでも購入できるのでiPadなどタブレットを持っている人はダウンロード版をおすすめします。必要な箇所をハイライトできますし、単語の和訳もできます。そしてなんといっても軽い!(笑)

以上が、最低限必要な教材です。ですが、先にも書いた通り、diplomaの試験に合格するためにはこれだけでは足りません。それはなぜか?


Diplomaに必要な「8つ目の要素」・・・マーケット

それは、Diploma試験では全ての産地の自然要因(Climate / Weather / Soil / Grape Variety)人的要因(Vinification / Viticulture / Maturation)、そしてマーケット(Trading and Fashion)の相互関係が主に出題されるからです。これら要素をぼくらCandidatesは、"8 factors"と呼んで学習の柱にしています。

Level 3では自然要因と人的要因の7つを総称して"7 factors"と呼んでいました。しかしDiplomaでは、これらに加えて8つ目の要素、マーケットが非常に重要になってくるのです。

過去問を一つ、例にしてみましょう。

◆June 2018 : Unit-3 (D-3) Section B 試験 より
"Outline the origins of the Zinfandel grape variety (25% weighting). Explain how it came to play such an important part in the California wine industry (75% weighting). "
「ジンファンデルの起源について概説せよ(配分25%)。さらに、この品種がどのようにしてカリフォルニアワイン産業においてこれほど重要な地位を占めるようになったのか詳述せよ(配分75%)。」

※この動詞部分(outline / explain)に注目!これが問題を解く鍵になります。「outline」だったこう答える、「explain」だったらこう答える、、という手引きは上記Guidanceに記載があります

この問いに答えるためには、ジンファンデルというブドウ品種のスタイルやホワイト・ジンファンデルについての知識などではなく、なぜジンファンデルのワインが成功したのか、その背景を知らなくてはいけません。これは歴史的な流れに加えて、ジンファンデルワインの価格帯と流通先、消費者構造、消費者がカリフォルニアワインに求めているものなどといった、より広い「マーケッター」としての視野が必要になることを意味しています。

Diploma試験がこんな感じなので、学習方法もおのずと、よりマーケット要素を拾いにいく学習スタイルになります。ではどうやって拾えばよいか。ぼくのおすすめはオンライン記事です。

例えば
Decanter(雑誌を購読するのが一番ですが、プレミアム会員になると雑誌の記事も全て読めるので、ぼくはプレミアム会員になってオンラインで読んでいます)
Harpers
Drinks Business
Jancis Robinson
 などが最新情報を入手できて良いかと思います。

あとは為替情報、政治ニュースなども軽〜く触れておいたほうが良いかなと思います。EPA発効による関税撤廃とか、中国の贅沢禁止令とかは、ワイン業界も大きく影響を受けましたからね。オーストラリアドルの変動は、イギリスの輸入量にも影響を与えていました。

試験でマーケット要素が求められるのは、D-2、D-3そしてD-6です。それ以外の酒精強化やスパークリングについては、より栽培や製法に特化した問題が出題されます。

最後に一つ、おすすめアプリ情報を。

ぼくは全てのノート、pdf資料をiPadアプリの"Goodnotes 5"にまとめています。Apple Pencilを使ってハイライトや注釈を書いたりできるので、とても便利です!!

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特にイギリス滞在中は自宅以外で学習することが多かったので、タブレットで全てがまとまっているのは最強ツールとしか言いようがありませんでした。激奨です!!!!

さて、次回はロンドン校ならではの小ネタ的な話をしたいと思います。この中のどれかを書こうと思います・・・

・ロンドン校では講師がMW!
・ロンドン校で気づいた、テイスティングを磨く極意とは?
・試験監督者が語る!Diploma試験官は何を見て採点する?

それではまた!


(追記)書籍のことを書くのを忘れていました!

推奨書籍はDiplomaのStudy Guideなどに掲載されていますが、さすがにこれ全部読んでたら10年かかるわ!ってくらいたくさん載っているので、この本だけは必ず持っておきなさいという本をいくつかご紹介。

まずは定番の「The world Atlas of Wine」。ワイン産地の地図が網羅されていて、読んでいて飽きません。が、楽しすぎて逆にメインの勉強からどんどん脱線する危険さも兼ね備えています・・・。
この秋に最新版 8th editionが出るので、これから受験される方はぜひご予約を!

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次にこちらも一般書並みに面白い「新しいワインの科学」(ジェイミー・グッド著)。名著「ワインの科学」の改訂版です。Diploma candidateの学習用として、日本語版と英語版(Wine Science)を両方持っておかれると理解が深まる&英語での表現が分かるので良いかと思います。

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最後にJancis Robinsonらが編纂した名著「Wine Grapes」。世界中のブドウ品種について、シノニム、起源、近縁種、代表的産地とそれぞれの産地で栽培された場合のワインの特徴、などなど網羅されています。日本語版も出るらしいと風の噂で聞きましたが、diploma学習なら絶対英語で読むべきなので原語の方を書いましょう。こちらも軽いKindleがおすすめ!

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参考になれば嬉しいです!

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