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[無料]危険情報満載の登山系Youtube動画を見つけてしまったので、どこが危険か解説する【跡地】

ここにあったもの

ある日Youtubeにある動画をオススメされまして、それを見ました。途中であれ?と思い、続けて見ていくと「こんな事を続けていたらいつか重大事故が起きますよ…」という内容が写っていました。

最初に見た動画は撮影者本人が1人でやっていた事なので「まぁ、自己責任だし…」と思ったのですが、他の動画(こちらは非公開になりました)も見ると、他の人も出てきて危険なロープ確保で岩登りをしていました。

「こんな事を続けていたらいつか人を殺してしまいますよ…」

と思ったので、それらの動画の何が危険なのかを解説する文章を書きました。それがここにあったnoteです。

夕暮れの富士山

言っておけば良かったと後悔するくらいなら、言うことにしてます

「他人の間違いや危険性を指摘する文章」を書くと、だいたい「偉そう、こいつ嫌い、何様?、気に入らない」なんてギャラリーから言われます。「お前はどうなんだよ」って話なんでしょうね、たぶん。実際、そういう反応がありました。

私もクライミングについては分かってないことだらけなので、抜けもあったし要らぬ心配もあったかも知れません。私の文章が拙い点については大変申し訳無いのですが、それでも書かずにおれませんでした。

放置すればマジで人が死ぬと思ったからです。

あとで「言っておけばよかったなぁ」って独りごちるのは簡単です。「いつかやらかすと思ってた」とかね。でも、それは、なんていうか、冷たい。

一言言うだけで防げる事故ってあります。「あー、こう言っておけばよかったなぁ」って後悔したことが僕にはあるんです。「言っておけば起きなかった事故だったのかも…」と未だに後悔することがあります。

その後悔をもうしたくないなと思って書きました。私に頭の中は、登山の事故を防ぐことでいっぱいなんですよ。

だから、しつこいと思われようが大きなお世話と思われようが、危ないと思ったら言うようにしています。心配性のオカンみたいになってます。

私が間違っている部分や要らぬ心配、ここも注意するといいよという指摘もあり、とても勉強になりました。ありがとうございます。書いてよかったです。

南アルプスに日が沈む

ある程度伝わった気がするので要約することにした

そういう気持ちで書いた結果、16000文字になってしまい、大事な部分が分かりにくくなってしまいました。公開から3日程度で問題のある確保をしている動画が非公開になり、更に分かりにくくなってしまいました。

非公開になったということは、きっと危険と間違いを本人が認識したのでしょう。おそらく一定の目的は達成できたと判断したので、大事な部分だけ残して書き直すことにしました。

悪天候と樹林帯

それでは、ようやく本編です。毎度前置きが長くてすみませんね。

動画の配信者を否定したいわけでも嫌いなわけではありませんので、出来るだけフラットに大事なことだけ書くように努力して書きました。

落ちたら死ぬ場所では命綱を付けましょう

どんなに慣れても、落ちれば死ぬ状況では命綱を付けましょう。ロープを使うクライミングでは、まず命綱の使い方を習います。「確保」と言います。

他人をロープで確保する事をビレイと言います。自分を確保することを自己確保(セルフビレイ)と言います。落ちたら死ぬ場所では、一瞬でも確保されていない状況を作らないのが原則です。

特に懸垂下降(ロープを器具を使い崖を安全に降りる方法)をする際は、まずセルフビレイをします。懸垂下降は単に崖の上にいるだけでなく、降りるときは空中に出て体重の殆どをロープに掛けます。懸垂下降のセットが正しいか確認する際、ロープに体重を掛けるのですがそこでミスが見つかってもセルフビレイが無ければ落ちて死んでしまいます。だからセルフビレイは必須なのです。

人はミスをする生き物ですからね。

補足:というのが原則ですが、状況によって手順が省かれる事はあります。それでも事故はそういう一瞬の隙で起こるものだと思うので、出来るだけ基本どおりにやるよう心がけています。

リスクを自覚しましょう

ふんふん、命綱を付けましょう、と。

では、剱岳の別山尾根はどうなのか?と疑問に思うでしょう。普通の登山者が断崖絶壁に着けられた鎖を手で持つだけで上り下りするじゃないか、と。槍ヶ岳の穂先だって命綱も付けずに垂直のハシゴを何十mと登ります。ちょっとした山でも鎖場や急斜面はありますよね。

当たり前ですけど、メチャクチャ危険ですよ?

よくみんなやるなぁと思います。手や足が滑ったら死ぬか大怪我ですよ?皆が皆クライミング経験者というわけでもないでしょうに、なんて危ないことをしてるんだろうと思います。

一般登山者がけっこう危険なことをしているので、クライミングをある程度知ってる人が危険と思うことを危険と思わなかったりする逆転現象が起きます。落ちたら死ぬ場所で命綱付けないのは、本当は危険なんです。

でも、落ちたら死ぬ場所なんて山にはいくらでもあります。近郊の低山でも登山道の横が崖になってて、でも木やヤブであまり下が見えないので危険に見えない場所とか、高尾山だって登山道の横は崖だらけです。でも、そんな登山道を怖いと思ったり、確保しながら歩く人はいません。私もしません。

でも、ちょっと想像してみてください。

「手すりがない高さ40mのビルの屋上で、幅50cmのフチを歩いている」

メチャクチャ怖くないですか?でも多くの登山道って実質そういう事です。

「高さ50mのビルの外壁に付いた10cmの足場を、鎖の手すりだけ持って横移動していく」

普通の登山者って、実はそういう事をやってるんですよね。自覚してないだけで。自覚していないから、例えば登山道のすれ違いで谷側に避けてしまう。ぶつかったりよろけたりしてバランスを崩せば谷底で落ちますよ?避けるなら、うっかりがあっても落ちない場所に避けなければいけません。

普通の登山道でいちいち確保しろというのは無理です。私だってしません。槍の穂先も普通にハシゴで確保もせずに登ります。しかし、自分がどういう状況なのか、リスクを自覚する癖を付けたほうがいいと思います。転落・滑落だけでなく道迷いや転倒も同じです。今歩いている道にはどういうリスクがあるのか考えましょう。(慣れてる人は無意識で常にそういう思考が働いています)

クライミング中に下を見ると、こう。

地図もGPSも無しでピクニック気分のまま登山をする人、視界ゼロの吹雪の中で楽しそうな登山初心者、山頂が黒い雲で覆われて雷がドカドカ落ちてるのに登り続ける登山者、間違った方法で確保されているのに平気でロープに体重を掛けるクライミング未経験者…。リスクが見えないと平気で危険な事をしてしまいます。リスクが見えるようになるためには、登山の勉強をする必要があります。

登山はメチャクチャ危険な遊びということを忘れないでください。

装備は正しいものを正しく使いましょう

登山の装備はとてもたくさんあります。そのどれもが、なんか格好いいんですよね。特にクライミングの装備は格好いい。機能的で無駄がないデザインは惚れ惚れします。ルベルソなんて、さすがフランス(ペツルはフランスのブランドです)というセクシーなデザインです。それらをテキパキと使うだけでなんか成し遂げた気持ちになったりしませんか。

ですが、それらは命を確保する大事なもので、正しい装備を正しく使わなければ無駄なリスクを招きます。

現代のクライミングのシステムは、人間が一つ間違えても簡単には死なないように考えられています。バックアップの仕組みがあるわけです。確保・自己確保もバックアップの考え方ですし、命綱を接続する「支点」というものにもバックアップの考え方があります。

装備は、正しい物を、正しい状況で、正しい使い方をすることで予定の性能を発揮します。それらを違えれば却ってリスクが増大するかも知れません。

ウツギの花

ネットの情報を鵜呑みにしてはいけません

インターネット上の情報は発信者によってその信憑性が左右され、正確性が必ずしも保証されません。しかし初心者にはその信頼性を判断することは難しいです。これはAIの回答が正しいかどうかを判断する問題に似ています。

そのため、信頼できる出版社の本を読むことが、コストパフォーマンスと正確性の観点から推奨されます。興味がある分野を少しずつ読み進めて学ぶことで、安全に長期間登山を楽しむことが可能になります。

登山の技術は信頼できる人から習いましょう

上で本はコスパが良いと書きましたが、本で学べることには限界があります。実地で学ぶには、やっぱり信頼できる人から習う必要が出てきます。

では誰から習うか?

分かりやすいのは資格を持ったガイドさんです(※)。あとは登山団体や登山メーカー主催の講習会など。山岳会ももちろんよいでしょうが、山岳会にもいろいろありますし、習ってサヨナラでは技術的泥棒です。それがしがらみと思うならお金を払って習ってください。

登山の道具や技術、思想は年々変化していきます。畑違いの技術を登山に応用する人もいますし、30年以上前の道具や技術を使い続ける人もいます。なぜ道具や技術が変化したかと言えば、その方がより安全と判明したからです。

登山においては、登山の技術を正しく学んで変化もキャッチアップしている人から習ってください。

※ガイドさんにも色んな方がいますので、複数のガイドさんから習って知識をすり合わせたり、違いがあったら質問してみるといいです。ちゃんと答えてくれる人から習ってください。

ヒメレンゲ

トラロープや鎖を信じ切るのは危険

登山道でロープや鎖が出てくると無条件で信じて両手で持ち、全体重を掛ける人が少なくありません。が、本当に信頼できるロープなのかは分かりません。根本を見たらグラグラで鎖やロープは劣化して切れそうかも知れませんよ?

このロープに全体重を掛けていいのか?

ロープや鎖は補助として使うべきで、両手で持って体重を掛けるものではないと思ってください。もしロープや鎖が切れたら?支点から外れたら?死にます。信頼できるものかよく観察してから使ってください(もしくは使わない)。

まとめ

  • 落ちたら死ぬ場所ではセルフビレイ(自己確保)をしましょう。

  • 自分の状況やリスクを自覚して行動しましょう。見えていないリスクから突然刺されると死にます。

  • 人間はミスをします。現代のクライミング技術は、ミスをしてもある程度助かるように考えられています。よく理解して、ミスっても死なないシステムを使いましょう。(それでもリスクゼロにはなりませんが)

  • 登山用の技術は信用できる人、できればガイドさんなど有資格者から習いましょう。

  • ネットの情報は鵜呑みにせず、複数の情報を当たりましょう。この文章もそうです。鵜呑みにせず確認してください。

  • その人が良い人であることと、技術的に正しいことを言ってるかどうかは別です。切り分けて考えて、もし間違っていても人格的な否定はしませんように。だから僕のことも嫌いにならないでね😸

わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。