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坂道グループの違いを改めて考える

以前、「アイドルをどう見るか?」という記事で、乃木坂46・欅坂46・櫻坂46・日向坂46の違いを“対比”で捉えた。ただ、個人的な推し度合いが乃木坂>櫻坂>日向坂だったこともあり(あくまで個人としての推し度合いで序列ではない)、日向坂に関する理解が若干浅いままに書いてしまった。

最近、日向坂の5周年を記念して発刊された『H46MODE』を読み、日向坂に対する理解が深まり、それによって他グループとの違い(あくまで違いであって優劣ではない)が私の中でくっきりしてきたので、それについて書いていきたい。

改めて坂道の各グループは何が違うのか?

今回は、各グループの目標設定に着目して違いを捉えてみたい。日向坂はメンバーとファンの間で目標を共有しながらその達成を目指すというグループ運営を行い、一方で乃木坂は2024年時点でグループとしての明確な目標を持っていないように思う。

『H46MODE』から抜粋して引用すると、インタビュアーとメンバーとの間で以下のやり取りがある(※久美:佐々木久美。日向坂46のキャプテン おひさま:日向坂46のファンの総称)

久美 メンバーみんなで話し合って「どんどん目標を立てていこう。そしてそれをおひさまに伝えていこう」と決めました。日向坂46の目標はおひさまがいないと達成できないので。

メンバーとファンで目標を共有して、ともに目指すわけですね。

久美 はい、そんなグループであり続けたいです!

『H46MODE vol.1』(2024年3月19日発売)

また、日向坂は、2024年の初めに“Let's Be Happy!”というグループコンセプトを発表した。私が知る限り、乃木坂や櫻坂はこういったコンセプトを対外的に発信していないと認識しているため、このことも日向坂特有だと言える。

乃木坂と櫻坂には目標がないのか?

このように書くと、「乃木坂と櫻坂には目標がないのか?」という疑問が湧く。乃木坂については、2014年頃には「紅白歌合戦に出場する」という目標を持っていたが、2015年に初出場した後は敢えて目標として掲げることもなくなり、その他にも対外的に打ち出していた目標はないと認識している。メンバーが個々に「海外でライブをしたい」「誰もが知るヒット曲を生み出したい」といった目標を発信していたが、日向坂のようにファンとも共有しながら達成を目指す目標ではなかった。

また、今はグループとして特に目標を持たず、個々人が目標を持ち、それをメンバー同士で応援し合いながら、運営サイドが活躍の基盤を整えながら、ファンが支えながらグループとしての発展を目指しているように感じる。

では、櫻坂はどうか。グループとしての目標は持っていると思うが、ファンと共有しながら達成を目指すことはしていないように感じる(念の為、櫻坂がファンを蔑ろにして目標を目指すグループだと言いたいわけではない)。

モデルプレスの「櫻坂46大園玲&守屋麗奈「2023 AAA」で受けた刺激 目標は海外単独公演「世界でも戦えるようになりたい」(2024年1月23日)という記事から引用すると、メンバーの一人である守屋麗奈ちゃんは以下のように語っている。

私たちももっと実力をつけて世界でも戦えるようになりたいと思っています!海外でも単独ライブができるグループになることが目標です!

モデルプレス「櫻坂46大園玲&守屋麗奈「2023 AAA」で受けた刺激 目標は海外単独公演「世界でも戦えるようになりたい」(2024年1月23日)

ファンの一人としても、「海外」「世界」ということをキーワードの一つとして活動している認識はある。ただ、その目標を「一緒に達成しましょう」というメッセージ付きで発信しているわけではない印象だ。

メンバーとファンが“横に並んで共に”達成を目指す日向坂と、メンバーが目標を達成するのをファンが“前から/後ろから”応援する櫻坂というイメージだろうか。

目標の立て方から見るグループの違い

また、目標の立て方を考えても日向坂と櫻坂には明確な違いがあると思っている。日向坂はメンバー発で目標を立てている一方、櫻坂はどうやってプロデュースするのかを運営サイドが緻密に設計して目標を目指している印象がある。

先ほど引用した『H46MODE』の中でも、キャプテンの佐々木久美ちゃんは「みんなで話し合って」という表現を用いている。また、今年の9月に開催が予定されている「ひなたフェス」も、冠番組である「日向坂で会いましょう」の中でメンバーから発案があり、開催に至っている(勿論、メンバーだけで考えて実現できるわけではないことは付記しておく)。

他方、櫻坂は、どういうコンセプトで曲を制作してMVに落とし込んで世の中に発信するのかがきちんと設計されている。これはメンバー発で行っているというより、運営サイドで方針を決め、アートディレクター等と共に練り上げ、最終的にはその期待を上回るパフォーマンスをメンバーが体現することによって行われている。

つまり、制作陣と共に目標を定め、その目標を当初の想定以上にやり切るというメンバーの覚悟や意志にこそ、櫻坂というグループの強さがあるのではないかと思う。

と思いつつ、櫻坂もファンの総称を“Buddies”と名付け、ファンのことを共に歩んでいく仲間だと位置付けていると思うと、日向坂はファンと共に、櫻坂は制作陣と共にという単純な切り分けはできないとも思っている。

この違いはなぜ生まれるのか?

ここまで目標の目指し方と立て方に着目してグループの違いを書いてきた。おわりに、なぜこのような違いが生まれるのかを考察して本稿を閉じたいと思う。

端的に言ってしまえば、元も子もないが、今のグループの発展フェーズに合わせた目標設定マネジメントを行っているだけだと言える。

日向坂は、メンバーが直接的にこのような表現を用いているわけではないが、「再生」「再建」を目指すフェーズにある。とすると、明確な目標を持ち、そこに向けて一丸となって進んでいくことが求められる。

櫻坂は、改名後のドタバタを乗り越え、グループとしての新しい核を見出し、次なる成長を目指していくフェーズにある。とすると、目標は持ちながらも、それに向かって突き進むと共に、メンバー個々の力を高めていく必要がある。今回の記事では触れなかったが、櫻坂は3期生(2023年1月5日に加入が発表)をグループの一員にしていくプロセスに優れていた。言い方を変えれば、目標達成と人材育成が優れており、そういうグループ運営が必要なタイミングだったのだろう。

乃木坂は、世代交代も成功し、安定化しているフェーズにある。とすると、より自律的な組織として個々人が目標を持ち、それぞれが外で活躍していくことが必要になる。他方で、世代交代も上手くいっているが故にグループの基盤は盤石で、下手すると単なる安定化の道を進んでしまうため、一定の不確実性が必要だろう。その意味で、現在実施中の6期生オーディションで選んだ新しいメンバーをどのようにグループの次の成長に繋げていくかが問われる。

あくまで個人的な見解ではあるが、同じ坂道と言えど各グループにこれだけの違いがある。これからますます発展し、次にどのようなグループの形が見えてくるのかが非常に楽しみである。

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