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【おともだち - いつもありがとうver.】Hitの理由分析レポート〜TikTok今週の1曲 [No.4 - 24.09-01]

こんにちは!山本です。
今週もやってきましたTikTok Hit曲分析です!

今回は「おともだち - いつもありがとうver. / edhiii boi」
分析していきます。

@localcampione

dc:@YUKI🍓【ローカルカンピオーネ】 毎日おれらのチャレンジを踊ってくれるみんな!もうおともだちになれたよな❤️‍🔥死ぬまでおともだちに囲まれてカメラにハイチーズしてたいぜ✌🏼✌🏼 #おともだち #edhiiiboi #ローカルカンピオーネ #localcampione

♬ Friends - Itsumoarigatou Version - edhiii boi

最初に補足になりますが、本楽曲がリリースされたのは約1年前の2023年11月です。
それでもあえて"今"この楽曲を取り上げる理由。
それは本ヒット事例を分析することで
「王道ヒットから一つ違ったポジションを取る楽曲のポイントを理解できる」からです。

現代楽曲バズの理由を理解し、
音楽×SNSにおいて一歩先の知見を手にしたい方は
ぜひ最後までご覧になって下さい!


おともだち - いつもありがとうver. はUGC数が驚異的

リリースから3ヶ月でTikTok内総再生数が6億回を超え、それ以外にも公式動画のみでミリオン超えの数字を複数達成した本楽曲。
着目したいのはUGC数(User Generated Contentの略)が7万を超える点
さらに目を見張るべきは、この数字をリリースから2ヶ月足らずで達成しているということ。

※本レポートでは公式音源のTikTok内動画使用数のことをUGC数と表記します
※ここでいうUGCはTikTok内でその音楽を使った他のクリエイターが作った動画のことを指します。


ちなみに楽曲使用数(UGC数)はこちらの方法で確認できます。


参考までに、似たようなHIP HOPダンス系の楽曲でTikTokにて直近ヒットした楽曲だと「UCHIDA 1 / GINTA & ODAKEi」が存在しますがが
初投稿が2024年7月1日ーーつまり約2ヶ月以上前にリリースされーー現在のUGCが【6.9万】であることを踏まえると、
UGC数もさることながら、その数字を生み出したスピードについても本楽曲の凄さが窺えるのではないでしょうか?

@moemomo0307

こう見えて四大卒業してます#合法ロリ

♬ UCHIDA 1 - GINTA & ODAKEi

ヒット理由の分析に入る前にTikTok楽曲では3つのヒットパターンがあります。
毎回本レポートシリーズをお読み頂いている方にとってはお馴染みだとは思いますが、まず本楽曲が【TikTok内でどんなバズり方をしたのか】について見ていきましょう。
3つのパターンは以下に分けられます。

①TikTok内で公式動画が多く再生された曲
(例:Overdose/なとり 香水/瑛人 など)
②TikTok内で使用数が多かった曲
(例:おともだち - いつもありがとうver. / edhiii boi など)
③TikTok外でHitしていたものがTikTokに持ち込まれ更にブレイクした曲(例:美少女無罪♡パイレーツ/宝鐘マリン ヴァンパイア/DECO*27 など)

本楽曲はお手軽で可愛らしいダンスが多くの二次創作を生み出した②に該当する楽曲です。
まずこの「TikTok内でどのバズパターンに該当する曲なのか」を把握することによって初めて分析のスタートラインに立つことができます。

それでは早速、どのような順序で楽曲使用数が伸びていったのかを確認していきましょう。


なぜUGCが増えたのか?

ここからは本楽曲がTikTok内でUGC数がどのような流れで増え、
その後どのような流れで他PHへ遷移したり、バズの恩恵をどのような形で受けたのか順番に解説いたします。


1、バスの拡大経路

UGCが増えたということはリリースから拡散に至るまでに明確な流れが存在します。
そしてその流れを押さえ、各フェーズにおいて伸びた要因を紐解いていくことこそ、バズが起こった理由を知る最も本質的な近道になります。

ですのでまずは楽曲が公開された日から時系列順にどのようなタイプの動画がアップされ、どのように広がっていったのかを見ていきましょう。
弊社ではこれを【イノベーター理論】を用いて分析しております。


今回もそれに倣い拡大経路の順を以下の3つに区分してリサーチいたしました。
それぞれの区切りは本家リリースから投稿までの期間で判断します。
ざっくり以下の通りの認識で今回は分析します。

(1) イノベーター (一番最初に広まったきっかけ)
 →今回は初期の投稿から約2週間以内で投稿されたもの
(2) アーリーイノベーター (初期段階で拡散されたきっかけ)
 →今回は約2週間〜3週間以内で投稿されたもの
(3) アーリーマジョリティ (早期段階でさらに拡散されたきっかけ)
 →今回は約3週間後以降で投稿されたもの


(1)イノベーター

今回のイノベーターはおなじみ『ローカルカンピオーネ』さんというフォロワー100万人越えの男性二人組ダンス系クリエイターであり、
一番最初 (2023/11/9)に投稿された動画の再生数は400万回を記録しています。

@localcampione

dc:@YUKI🍓【ローカルカンピオーネ】 毎日おれらのチャレンジを踊ってくれるみんな!もうおともだちになれたよな❤️‍🔥死ぬまでおともだちに囲まれてカメラにハイチーズしてたいぜ✌🏼✌🏼 #おともだち #edhiiiboi #ローカルカンピオーネ #localcampione

♬ Friends - Itsumoarigatou Version - edhiii boi

TikTokUGCバズの第一フェーズは「イノベーターが現れること」です。
つまりこの楽曲がなぜ彼らに取り上げられ、そして伸びたのか?
ここを分析することが本楽曲のHitの理由を紐解く最初の鍵です。

具体的な分析ポイントは3つ。

①彼らが案件でないのにこの曲を取り上げようと思った理由
②この動画の再生数が伸びた理由
③この動画がイノベーターとなりUGCが増えた理由

順番に解説します。


①ダンスクリエイターが「取り上げたい!」と思う理由

案件委託やそれに類するもの(事務所ぐるみでイノベーターを依頼できる体制があるなど)、またはアーティスト自身がインフルエンサーなどでTikTokで影響力を持っているパターン以外では、
"イノベーターとして影響力のあるTikTokerに動画化して貰えるか"が分析の肝となります。

ローカルカンピオーネさんはその最大手と言っても過言ではありませんからこれがなければこのバズは生まれなかったとも言えます。

それではまず何故この曲で彼らが動画を作ろうと思ったのかを分析していきましょう。
その答えはなんとご本人の口から既に明かされていたのでそちらをまとめます。

1, 印象に残るユニークな言葉選び

歌詞が聞き取りやすく、キャッチーなワードであること。
振り付けしやすいし、みんなも覚えやすいのが理由
とのこと。

…今回であれば以下が該当するかと思います。

「食べきれない今日のご飯お残しなし」
「カメラ目線でみんなでハイチーズ」
「ラブアンドピース」

フリのイメージとシンクロし、動画的な印象に残るもの。
これはインフルエンサーでもあるダンスクリエイターたちの動画が伸びる予感をさせるので『取り上げたい!』と思われやすい要素と言えるでしょう。

2, 共感性が高く等身大

"短尺なので壮大なもの、感動的すぎるものは向かない。端的に共感できる楽曲のほうがマッチ。真似してくれるのは圧倒的に女の子。彼女たちがかわいい、と共感して踊れるものを多く選んでいます" と彼らは言います。

本楽曲は「大切な友達との友情や愛」を謳った曲ですから、これが共感を呼びやすく特に女子ウケが良いと判断するのは妥当だと思います。
さらに1で触れたキャッチーなフレーズについている振り付けもどれも可愛らしく、この部分についても女子ウケを意識したものであることは間違い無いでしょう。

3, 踊れる効果音

「ダンスにハマるフックとなる効果音があると良い」という基準もあるようですが、今回は該当部分が存在しないため補足として紹介させていただきます。


これらの発言からも、彼らがTikTokという媒体の中でどのような曲でどのような踊りをしたら自分たちのダンスをより多くの人に見てもらえるのか (=再生数が伸びるのか)を考えていることが見て取れますし、
本楽曲はそのキャッチーさや共感性、可愛さが彼らの哲学に刺さったため取り上げられたのです。

そしてより多くの人に刺さる楽曲を探している彼らに選ばれるこの楽曲は、その時点でTikTokで人気となりやすい要素を大きく押さえていたとも言えます。


彼らが取り上げる基準を楽曲側が満たし、その時点でTikTokウケがある程度良いことが保証されていたとして、それだけでここまで伸びるのでしょうか?

彼らのアカウントでこの動画が投稿された時期、彼らの他の動画の平均再生数は約50万再生でした。
対して該当動画は400万再生。

明らかにこの楽曲の動画だけ伸びています。

その理由を見ていきましょう。


②カッコ可愛い系という斬新なダンス系UGC楽曲

結論、今までのダンス系のヒット曲にあまり存在しなかった感情を呼び起こせる曲だったという見解なのですが、これについて「そもそもTikTokにおいて伸びるダンス動画とは何なのか?」という話からしていきましょう。

これは当然の話ですが、TikTokのアルゴリズム上、
視聴選択率や視聴維持率が高く、いいねやコメント、保存・シェアなどのエンゲージメント率が高い動画ほどインプレッションが広がり再生数が獲得できる構造になっています。

つまりダンス領域においてそれを言い換えると
「ずっと見ていられるシュールさやキャッチーさ (視聴率の高さ) がありながら、可愛いなどの何らかの感情を動かす要素 (いいね・コメント) があり、真似したいと思えるダンス (保存・シェア)」

この総合値が高いほど伸びる確率が高くなるということになります。

例えば、直近で流行りUGC16万を達成した『Giri Giri / KOMOREBI』なども「従来のヒップホップ的サウンド✖︎コンパクトな踊りがシュール感を生み出し維持率を担保、ギリハッピーのポーズ決めの可愛さが感情を動かし、簡単なので真似できる」といったような総合値が高くて伸びているのは間違いないでしょう。

@amika0429.14

ギリはっぴー✌️✌️

♬ Giri Giri - KOMOREBI

ではこの総合値を高めるというゲームの中で「おともだちダンス」が持っていた強さとは何なのか?

それが「カッコ可愛い」という要素です。

従来のカッコイイ系ダンスUGCが回っている曲だと、それこそ直近であれば「Giri Giri / KOMOREBI」「UCHIDA 1 / GINTA & ODAKEi」などいわゆるイケイケ感の強い楽曲が多いですよね。

過去のヒット事例なら「カンナムスタイル / PSY」などもそうです。

事実「おともだちダンス」も従来のカッコイイ系ダンスUGC楽曲が持つノリの良さは当然あるものの、先ほど触れたキャッチーなフレーズ&可愛い振り付けなどを始めとし、他の楽曲に比べ良い塩梅で可愛い要素が入っていたと考えます。

そしてこの可愛い要素がバズに繋がる理由はヒップホップ系領域の外に目を向ければ明らかです。

例えばUGC13万を記録した「おとせサンダー / ぼっちぼろまる」はキャッチーで可愛い印象を与える楽曲で、ダンスのUGCが数多く回っています。

@yuraneko_

髪色ただいま〜!🐈‍⬛💚実家のような安心感! 振付@nakanoaki 様 #おとせサンダー #踊ってみた #猫耳ヘッドホン #ぼっちぼろまる

♬ おとせサンダー - ぼっちぼろまる

さらにTikTok全体に視野を広げた時、可愛いコンテンツが人気であることは皆さんご存知だと思いますが、その根本の理由は、主に「可愛いを様々な形で見せたいクリエイターの欲求」と「可愛いを摂取したい視聴者の欲求」という需要と供給が成立しているからです。
これについては前回のnoteでより深く触れていますので、興味のある方は併せてご覧になっていただければと思います。

以上のことから「可愛いが正義」ということはTikTok市場において確定していました。
そしてその「可愛い」をHIP HOP系陽キャダンス曲にエッセンスとして加えたのが今回の楽曲なのです。

つまり、ここでHIP HOP系陽キャダンス曲がTikTokにおける音楽ジャンルそのものとしてシンプルに強いということが改めて分かったとともに、

「陽キャダンス曲 × 可愛い」

という
「"王道✖️スパイス"の掛け算を上手いこと当てたのがこの楽曲である」
と分析しています。

実際イノベーターとなった「ローカルカンピオーネ」さんの動画のコメント欄を見てもこの可愛さが女の子ウケしていることが見て取れます。
さらにインフルエンサー側も「可愛い = 女の子が共感や真似をしやすい = 再生数が伸びやすい」から楽曲を使用したいという感情が生まれます。
このことはローカルカンピオーネさんの発言からも分かっていますので、双方向で「可愛い要素」がバズの鍵を握っていたのは間違いありません。

ローカルカンピオーネさんの動画のコメント欄より抜粋


また補足としてその「可愛さ」の方向性が「おともだち」や「ハイピース」など"幼稚な可愛さ"の切り口だった点も評価したいです。

幼稚な可愛さはふざけていると解釈もできるので"張り切りすぎない感じ"が現代の若者にウケています。

例えば「猫耳メイド服で踊る曲」でコスプレまでしてバズらなかったら"ガチ感"が強いだけに虚しいですが、
「おともだち!ハイピース!」とやってバズらなかったとしても「あれはおふざけだから…」と言い訳できるのです。

現代の女の子はSNSに自分の可愛い姿を上げて承認欲求を満たしたい気持ちがありつつも、他の女の子たちから自分がどうみられているのかもとても気にします。ですので「やりすぎない可愛さ」は自分もやってみたいと思う気持ちを刺激しやすく、UGCのハードルが低いのです。


【補足】ローカルカンピオーネのアカウント運用と本動画投稿タイミング

彼らのアカウントを400万再生された本動画が投稿された11/9以前に少し遡ってみるとわかるのですが、再生平均は数十万に落ち着いていて、その多くはチルな雰囲気の楽曲なんですよね。
そんな中「おともだちダンス」はアップテンポで冒頭から直感で興味を惹かれます。

つまり、この動画が伸びた理由をアカウントの舵取り的観点から紐解くと…

- チルでゆったりめの雰囲気の動画をリピーターが見続け、その平均が数十万再生
- そこにアップテンポ要素を持つ楽曲が投稿されたことで、直近と比較して感情をより強く動かしリピーター層のエンゲージメントが増加
- ライト層や新規層にも露出 (=バズる)

といった流れを踏んだ可能性が高いのではないでしょうか。
(当然その他にも様々な要因が存在します)

この根拠として、ちょうど同じ時期に220万再生という頭一つ抜けた数値を出している動画があり、こちらで使われている楽曲もかなりリズミカルです。

@localcampione

今日は@RYOMA【ローカルカンピオーネ】 の振り付け🩷可愛い曲に可愛い振り付けなんてなんぼあってもいいですからねえ🥛👦🏻俺らの可愛さでみんなをその気にさせたならとことん縛りつけます☺️ @SILENT SIREN (サイサイ) #silentsiren #milkboy #ローカルカンピオーネ

♬ オリジナル楽曲 - ローカルカンピオーネ🗾👑 - ローカルカンピオーネ🗾👑


ですので、至極単純かつ感覚的な要因にはなりますが、少なからずこのアカウント内ではチルなローテンポ系の動画主体で来ていた流れに、真逆のアップテンポをぶつけたことで感情を強く動かし、エンゲージメントに繋がったのではないかと考えています。

加えて、これだけのバズが生まれるということは上記の文脈抜きにして動画単体が持っていた強みがあると考えます。
これが冒頭3秒の期待感と音ハメが綺麗にされたダンスです。
こちらに関しては第3章で詳しく解説しますが、他の動画との比較なしに視聴率を担保する仕掛けが施されていたのが本UGCがバズった理由でしょう。

ーーーーさらにアップテンポやノリにインパクトのある楽曲が前提として益々有利になっているというのはTikTok全体の流れからも明らかで、
今年の特大ヒット事例を見ればわかる通り、
「Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts」 / 「しなこワールド / しなこ」/ 「シカ色デイズ / シカ部」など直感かつ短期で感情が動くコンテンツを視聴者は望むようになってきています。


あくまで本楽曲の分析をわかりやすくするために上記のような表現をしましたが、
・テンポが速い=伸びやすい
・遅い=伸びにくい
と言い切るのは全く本質的な分析ではないです。

本質は『動画に滞在させる力が強い曲かどうか』です。
テンポの遅い曲はショートで切り抜いた時滞在させる別要素がないとそれを成せないので作るのが難しい。
速い曲は速いだけで『グルーヴの心地よさ』という滞在させる理由が一つ作れているので遅い曲より難易度が低い。
なのでヒット曲の曲数を比較すると速い曲の方が多い。

…というのが解像度の高い理解です。


「おともだちダンス」が流行ったのはこれらの楽曲リリースよりも前の話ですが、この時から「視聴者が瞬間的な刺激をより強く求める傾向」は見え始めていて、当時からそのエッセンスを持ち合わせていた、というのがこの楽曲のもう一つの着目すべき点だと思います。

まずここまでがイノベーターが本楽曲を取り上げた理由と、その動画がとりわけ伸びた大枠の理由になります。


その翌日、カップル系TikToker"🦖カレシとカノジョ"の彼氏『taiyo』さんが投稿し、これが60万再生を超えるなどかなり早い段階でUGCを生み出すクリエイターも一部散見されますが…

やはりイノベーターとして大きな役割を果たしたのは前述した『ローカルカンピオーネ』さんでしょう。

そして以降も彼らは約1〜2週間の間に個人アカウントでも同楽曲のダンス動画を投稿し、最初の動画も含めた累計再生回数は約800万にまで到達。彼らが作ったダンスが「おともだちダンス」という名前となり、他クリエイターが続いていく流れとなりました。

※個人アカウント投稿の一例

【余談】ダンス系TikTokerへ案件を委託する際の注意

ローカルカンピオーネさんはダンス系イノベーターの最大手といえるアカウントですので、案件委託するアーティストも非常に多いことは動画のキャプションに『#PR』がついた投稿が多いことからもすぐにわかります。

ただその多くが案件費を払うだけでアーリーアダプターには繋がらず終わっていますね。

当然ですがこれはローカルカンピオーネさんの動画が悪いのではなく(むしろ彼らは通常の投稿に馴染むように案件動画を投稿しておりインフルエンサーの立ち回りとしては非常に優秀です)
前述の条件や以降で紹介するアーリーアダプターへ繋がる要素を楽曲がそもそも満たしていないことが原因です。

ゼロにいくら掛けてもゼロのまま……といいますか、
そもそも楽曲自体にダンスを拡大させる要素がないといくら大手さんに踊ってもらっても無駄、と言うことです。

この辺りの考えは別のnoteでガッツリ解説しているので案件委託を検討の方は是非一読ください。

案件を委託された側のクリエイターも、せっかく動画を作ったのにUGCが増えなかった、動画が伸びなかった、となれば悲しいものです。
なので弊社ではそもそもTikTok UGCが伸びなさそうな曲を強引に案件費を払ってTikTokで回そうとするのはお勧めしていません。

弊社でPRを代行する際は楽曲を拝聴し、深く理解した後、それが最も輝くプラットフォームを探すところからはじめ、それがうちがもっている強みと合致する場合には代行をお受けしております。

お互いがWIN-WINになる案件委託にするために、TikTokを正しく理解した上で委託を進めたいですね。


(2)アーリーアダプター

その後、アーリーアダプターとして2つの界隈でUGCが拡大していきます。

※期間区分的にギリギリイノベーター枠に入る事例も出てきますが、どの投稿もイノベーターである「ローカルカンピオーネ」さんを見ての参入と判断し、分かりやすくアーリーアダプターとして紹介しています。

① 本家を始めとした男性HIPHOP界隈

まず本家 "edhiii boi"が自身で踊ったUGCが80万再生を記録。

@edhiiiboi

edhiii boi 「おともだち」ダンス🕺🪩 @ローカルカンピオーネ🗾👑 さんが作ってくれた"おともだち"ダンスにチャレンジ! みなさんもおともだちと踊ってみてくださいねー💙💙💙 #edhiiiboi #満身創意 #おともだち #BMSG #NewMusic

♬ おともだち -ズッ友 remix- edhiii boi Verse - edhiii boi

それだけでなく同じヒップホップやダンスボーカル界隈の男性アーティストたちとコラボして100万再生超えの動画を連発します。

さらにこれに続いて2023年の紅白にも出場した7人組ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」などの超大手アーティストが取り上げ始め、こちらも250万再生を記録。加速的に数字が回り始めます。

本家がUGCを回すのは自作品なので当然として、
一体なぜここまで多くの有名アーティストが取り上げ、そしてその多くが揃いも揃って高再生数を叩き出せたのでしょうか?


-繋がりを活かした半セルフPR

まず、多くのアーティストとコラボしたり取り上げられたりした理由について。
実は、上記事例で登場したコラボ先や各アーティストは本家 edhiii boiが所属する事務所BMSGのアーティストだったのです。
つまり「イノベーターがバズったことをきっかけにチャンスを確信し、事務所総出で拡散体制を取った」というシンプルな理由でしょう。

手伝ってくれる仲間がいる=UGCが絶対増える
は絶対に違うと確信を持って言えますが、やはりUGCのお願いができる仲間がいる事はとても有利です。


-視聴限度回数を高める複数の条件

数多くのコラボや別アーティストが取り上げた理由がわかった上で、なぜそれらの動画が繰り返し高再生数を叩き出すことができたのか?
それは「視聴限度回数を高める複数の条件が揃っていたから」だと考えます。

前回noteでも登場したこの概念ですが、視聴限度回数とは「同じ企画を繰り返し見てもらえる回数」として扱っています。

例えば最近だと、TVアニメ『推しの子』2期OP 「ファタール」で話題になっているキタニタツヤさんが分かりやすい事例かと思います。
同じアカウントで似たダンス動画を擦っているのに毎動画かなりの再生数を獲得しています。

この現象が起きる理由として、

  • かっこよくキレのあるダンスはそれだけで感情が揺れるので似た動画でも何度も見れる

  • 踊っている人やシチュエーション、背景などがちょっとずつ違いそれが面白いので同じ企画でも違う感情でみれる

という点があり、

これこそまさに「視聴限度回数が高い」状態と言えます。

そして今回の事例では"2つ"の視聴限度回数を高める条件が整っていたと筆者は推測しています。


1, ダンスという性質そのもの

既にキタニタツヤさんの事例でダンスが繰り返し見てもらいやすいということは証明されてしまっているので簡単な説明に留めますが、キレのあるダンス・可愛いダンスなどはそれだけで感情が揺れるため何度も見ても飽きないという特徴を持ちます。
その中でも今回のダンスではビートに合わせて動きがパッパッと切り替わっていく音ハメが綺麗にされており、これが直感的な心地よさを演出し繰り返し視聴しても飽きにくい工夫が施されています。


2, コラボを促進させた"おともだち"という文脈

視聴限度回数が増える理由の一つとして、

踊っている人やシチュエーション、背景などがちょっとずつ違いそれが面白いので同じ企画でも違う感情でみれる

というのは先ほどお伝えした通りです。
特に今回の場合は様々なコラボ相手や複数のカップリングパターンによって数多くの動画を投稿しているのが印象的ですが、この状況をブーストしたのが"おともだち"という文脈だと考えます。

これはTikTok全般に言える話ですが、クリエイターは楽曲を使用する際その楽曲がどういうメッセージ性を持つのか、自分がこの曲を取り上げたらどういう印象になるのか…といった「文脈」を意識します。

ですからPR的観点から楽曲のあり方を考えた場合、こちらがしてほしい動きをクリエイター側が喜んでできるような楽曲のイメージを創り上げておくと拡散に有利に働くことがあるということです。

その点この"おともだち"という文脈はクリエイター同士が和気藹々と楽しい姿を見せる、要するにコラボを促すのに非常に自然でスムーズな文脈だったと思います。

加えて、視聴者も「大切な友達との友情や愛」というメッセージに共感しているわけなので「次々と様々なコラボをしていくクリエイター達をほのぼの眺める」という一種の小さな文化が視聴者目線でも形成され、これが益々多くのUGCが回る助けになったと考えます。


インフルエンサーはコラボ動画でお互いのファンを共有し交換し合います。
その際の題材として「おともだち」というのはベストにハマりすぎており、視聴者からも「この二人友達なの!?」というアツい展開が作れたのは文脈として最高です。
むしろアーリーアダプターに繋がった1番の理由はここだとさえ思います。



② 今日好き界隈

①と並行して「今日好き界隈」での拡散が始まります。
「今日好き」とは『今日、好きになりました。』という恋愛リアリティショーのことで、ここではそこで知名度のある女優さんやインフルエンサーが取り上げたことを意味します。

例えばイノベーター登場から約2週間後、中島結音さんの動画が投稿され130万再生を記録。

@yunon___1120

オトモダチ☆なんかクセになりますねえええ🫠#fyp #おすすめ

♬ Friends - Itsumoarigatou Version - edhiii boi

ここから周辺の出演者を始めとした、同年代のインフルエンサー間でUGCが一気に拡大し始めます。

@noanoa_38

みんなに第一印象怖いイメージ持たれがちやけど話すと真反対って言われる笑#今日好き #fyp

♬ Friends - Itsumoarigatou Version - edhiii boi

では一体なぜ彼女達はこの楽曲を取り上げたのでしょうか?

ーーーー彼女達の性質は前回noteでも紹介した「流行敏感女子界隈」に近く、ここから伸びていく期待の新星インフルエンサー達です。
彼女らは「バズって一発逆転したい!」などの欲求が強く、それゆえにトレンド曲にいち早く食いつくなどアンテナを敏感に張っていて、大手よりも早く楽曲を取り上げる傾向にあります。

ですから今回もバズの匂いを感じとり打算とスピードで本楽曲を取り上げた、という背景があると考えています。

しかしそれでもこの界隈が取り上げた理由には打算だけではない必然性があると思っていて、それがこの楽曲の持つ…

  • 可愛い要素

  • お友達文脈

ではないでしょうか。

先ほどもお伝えしたようにクリエイターは「文脈」や「印象」を重視します。それはこの界隈も同じで、いくら「バズって一発逆転したい!」と言えど、あまりにブランディングとズレるような楽曲を扱うのは気が進まないでしょう。
特に「今日好き界隈」の女の子は全女子の憧れになるような可愛い人たちの集まりですから、そういう意味でもイケイケのHIP HOPだけではない「可愛い」要素が入っていたこの楽曲はUGCの敷居を大きく下げたと思います。

さらに彼女らはいわゆる陽キャに分類されます。そこでこの"友達を大切にする文化"は陽キャ属性に歓迎される要素のため、こちらもブランディングと相性が良く、取り上げる要因になったと考えられます。


(3)アーリーマジョリティ

初期の投稿から約3週間後を境に、「TopTikToker界隈」でのUGCが本格的に拡大し始めます。

この界隈は文字通りTikTok内でトップの人気を誇り、TikTokトレンドの行方を決める層です。
そして彼女らは「自身のブランディング・魅力を引き出す曲を使う」傾向にあります。

ゆえに、彼女らに取り上げられた曲は瞬く間にトレンドとして認知されていきますが、ここで複数名のTopTikTokerが取り上げたことによっていよいよ本楽曲はトレンドと化していきます。

ここのUGCが広がった理由も、陽キャダンス曲は1軍として流行の最先端を行く彼女らのブランディングと相性が良いことから、問題なく広がったと考えられます。

@naenano

ねこミミみたいに見える(=^x^=)

♬ Friends - Itsumoarigatou Version - edhiii boi

さらにTopTikToker美女のまとめ動画が投稿され360万再生を達成するなど、誰が見てもトレンドであるという状態が完成し、このままリリースから2ヶ月と経たないうちにUGC数が7万を超える大バズ状態となりました。

-本楽曲がバズった本質的な理由まとめ

ここまでバズの拡大経路に沿って各フェーズにおいてUGCが伸びた理由を分析してきましたが、これらは以下の4つに集約するでしょう。


  • カッコ可愛い系という斬新なダンス系楽曲

  • 瞬間的に感情を動かすアップテンポという時代への適性

  • 繋がりを活かした半セルフPR

  • お友達という文脈


拡大の流れを改めてまとめます。

アカウントフェーズ的に使いやすくバズる嗅覚にも引っかかった曲のためローカルカンピオーネさんが取り上げた

 ↓↓

かっこいいダンス系UGCのノリの良さは保ちつつも、可愛い要素を掛け算することでイノベーターのメイン視聴者層である女子ウケを獲得。
さらにアップテンポという時代に沿ったチョイスがエンゲージメントを促進させインプレッションが拡大。

 ↓↓

その初期バズを確認してから即、繋がりを活用した拡散体制を本家とその周りで構築

 ↓↓

"おともだち"文脈を活用したい外部のTikTokerがそれに乗っかる。特にコラボ系動画で使いやすかった。

【+@】UGC拡大にブーストをかけたもう一つの大きな要因

さらに補足として「簡単かつコンパクトな振り付けがクリエイターの投稿を手軽なものにし、UGCが加速した」というのも挙げられます。

それこそ上記TopTikTokerのUGC例として紹介した以下の動画は移動中の座席で撮影されています。
他にもタクシー内での撮影など、明らかに隙間時間で撮ったようなケースも少なくなく、手軽に投稿できるというのはクリエイター目線ではUGCが増加しやすい重要ポイントだったと言えるでしょう。

事実、過去にポケモンダンスで有名となりUGC60万超えを記録した「Bubi Tan Tan」などは振り付けが非常にシンプルで可愛く、一般ユーザーの投稿も多く見られることから、"お手軽さ"はUGC拡大において大切な要素です。


2、楽曲の音楽的特徴の整理

ここまで楽曲がバズった理由を文脈や感情から解説してきましたが、これではまだ不十分であると考えます。

『カッコイイダンス系の曲に可愛いを上手く掛け算したから伸びた』

ではその"可愛い"とは何?
どうやって"上手く"掛け算した?

この辺りも言語化しなければ再現性のある知見は得られません。
そこで本セクションでは、楽曲が与える抽象的な感情の正体を音楽的要素から具体的に紐解いていきたいと思います。

今回取り上げる要素は大きく2つ。

(1)ノリを作る最少で最高のオケ
(2)カッコ可愛いを作る編曲・ヴォーカルアレンジ

それぞれ解説します。


(1)ノリを作る最少で最高のオケ

まずはカッコ可愛いの「カッコイイ」部分から見ていきましょう。

①一定なキック

本楽曲のキックは終始一定の間隔で連打されています

TikTokで何億、何十億と再生されることになれば中にはお風呂でスマホスピーカー直で再生している人とかもいるわけで、劣悪な再生環境でも伝わる音響を作ることが肝となってきます。
そう考えると『キックが一定』は最強だとわかるでしょう。

例えば直近のヒット事例だと、それこそ冒頭でも紹介した「UCHIDA 1 / GINTA & ODAKEi」です。

一つ異なる点としてはそのバスドラムのグルーヴ感。
「UCHIDA 1 / GINTA & ODAKEi」は一個一個のアタックが長く重く、イケイケ感の強い印象を与えますが、「おともだちダンス」はドラムのアタックが短く軽やかなのに加え、この後"(2)①従来のダンス系HIP HOPの逆を行くアクセント"で解説する電子音が裏で鳴っていることでよりリズミカルでワクワクする印象を与えています。


②少ない音数での構成

TikTokはUGC前提の文化なので、背景としての楽曲 × 映像としての絵が合わさって一つのクリエイティブになります。

つまり、楽曲はあくまでBGMで、主張が強すぎてはいけない。

その点、本楽曲で主張してくる音のメインは①のドラムとボーカルがほとんどです。
これはヒップホップが直感的に与える音楽的なカッコよさは演出しつつも、TikTokでUGCされることを前提して音の密度に余白を残した素晴らしいチョイスだと思います。

例えば最近のヒット事例ですと『Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts』もまさに少ない音数で構成されていますね。

BGMのトラック数が少ないながらも狙った効果が出せていると言うことは、
上に乗る音声やSEなどの余白があると言うことで、UGCを作るクリエイターのクリエイティビティを刺激します。

このような理由からトラック数の少ない曲はTikTokで有利になりやすく本楽曲もそれを踏襲していると言えます。


(2)カッコ可愛いを作る編曲・ヴォーカルアレンジ

①従来のダンス系HIP HOPの逆を行くアクセント

第1章で「カッコ可愛い」という要素が重要という解説をしましたが、これを音楽的に演出する一つの要因はその楽器構成にも存在します。

先ほど説明したバスドラムとボーカルをメインに少ない音数に加え、アクセントとなっている"音"。

それがベースの4オクターブ上で鳴っているsin波系シンセです。

こちらが"可愛いスパイス" (というよりはイケイケになりすぎないチョイス) になっていることがカッコいいダンス系楽曲と比較すると分かります。

直近でヒットしている、「UCHIDA 1 / GINTA & ODAKEi」「Giri Giri / KOMOREBI」を例に挙げますと、この2曲は重低音や歪みの多いサウンドが特徴的で、これがいわゆる"パリピ"や"イケイケ感"を与えています。
そしてそのバックサウンドの主張がそこそこ強いですよね。

@amika0429.14

ギリはっぴー✌️✌️

♬ Giri Giri - KOMOREBI
@moemomo0307

ジェットコースターで意識失っちゃいます#コスモワールド

♬ UCHIDA 1 - GINTA & ODAKEi

このように『UGCを使ってもらいたい意図』を掛け算する形で作用する『編曲』はUGCをブーストさせると言えます。


②ビートに乗せたボーカルのグルーヴ感 (ノリの良さ)

端的に言えば、ボーカルのアクセント (強調する部分) をきっちりビートに合わせることで勢いがつき、これが俗に"ノリがあってカッコ良い"という印象を与えます。

例えば「遊んでるLife With お友達」の部分。
「あ」「で」「ら」「うぃ」「お」「も」「ち」が強調されていますが、これは裏で鳴っているビートに合わせてそのようにアクセントを置いています。

これがつい身体を乗せて踊りたくなってしまうような効果を感覚的に与え、先ほど紹介した『Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts』もまさに同じ効果を持っています。
例えば「ブリン」「バン」「バン」という歌詞が「ボンっ」「ボンっ」「ボンっ」というビートにピッタリハマっているのがその具体箇所になります。

③可愛いスパイスを足すボーカルの共鳴

カッコ可愛いの要素はボーカルにも隠されています。

それが「共鳴」です。
本楽曲のボーカルを聴いて、少し少年っぽさや可愛さ、あどけなさを感じると思うのですが、これを作っているのが「鼻腔共鳴」です。
「鼻腔共鳴」とは鼻に響きを集めるような発声方法で、これを行うことで明るさやコミカルさを演出することができます。

さらに本楽曲では喉頭 (喉仏) を引き上げることによって声のトーンを少し高くし、明るさ及び可愛さの演出を助けています。

これらが視聴者の心理的に「可愛らしい」印象を与え、今回の肝となった女子ウケしやすいサウンドになっていたと考えます。

先ほど紹介した、「おとせサンダー / ぼっちぼろまる」が可愛くコミカルな印象を与えるのも同じ現象が起きています。

@yuraneko_

髪色ただいま〜!🐈‍⬛💚実家のような安心感! 振付@nakanoaki 様 #おとせサンダー #踊ってみた #猫耳ヘッドホン #ぼっちぼろまる

♬ おとせサンダー - ぼっちぼろまる

このボーカルの調整もイケイケ感のあるヒップホップに"可愛い"を"上手く"掛け算した手法の一つですね。

あくまでTikTok攻略はUGCの数が増えるか否かのゲームです。
ここを基軸にサウンドから作っている曲は勝ちやすいと言えます。


3、楽曲および動画構成の整理

ここまで楽曲が描く感情やその全体像を作る音楽的要素を紐解いてきましたが、本バズの理由はこれに留まりません。
TikTokでのバズが起こっている以上、その視聴媒体に楽曲が適正化されていることが必要なわけですが、本セクションではその秘密を楽曲および動画構成から紐解いていきたいと思います。

着目するのは以下の2つです。

(1) 冒頭3秒で作る感情曲線
(2) ボーッと見れる音ハメダンス

順番に解説します!

(1)冒頭3秒で作る感情曲線

冒頭はTikTokというスワイプ戦争が起こる媒体の中でいかに視聴者の興味を引き留められるかの重要な勝負どころです。

今回本楽曲の冒頭3秒にその仕掛けが施されていると考えていて、分解すると以下になります。

1. 冒頭フック&サビ前盛り上がり = 緊張
2. ブレイク (ボーカルが消える) = 静止
3. サビイン (サビが始まる) = 盛り上がり

この1-3の流れで感情を揺らし、期待感を演出する。
これがスワイプ防止に寄与していると考えます。

事実、ダンス系のUGCヒット曲は昔からこの手の構成が使用されることが多く、過去の事例であればUGC50万以上を記録した「カンナムスタイル / PSY」がかなり近い構図になっています。
他にはロカロカダンスの呼び名で有名になった「Toca Toca - Tik-Tok Challenge / FLY PROJECT」なども近いですね。

さらにその手法が今でも有効であることは証明されていて、
今回何度か紹介している「UCHIDA 1 / GINTA & ODAKEi」
冒頭の「Everybody wanna say!」をフックにしつつバックミュージックは徐々に盛り上がり、サビ前の「これ私のスタイル!」でバックが消え、サビに入るという似たような構成になっています。

このように、これまでのダンス系UGCヒット曲の冒頭の流れを見ると、本楽曲もこの流れに沿っていると考えられます。

しかし、最近の冒頭は「シカ色デイズ / シカ部」の "ぬん!"というフレーズなど、より短期的で直感的なものが刺さりやすい傾向になってきていますし、先ほど事例に挙げた「UCHIDA 1 / GINTA & ODAKEi」についても、冒頭「Everybody wanna say!」のインパクトがエンゲージメントを獲得している側面が強いように感じます。

ですので、ダンス系UGCを狙う曲で先ほど紹介した構成が現時点では比較的安定して当たっているとはいえ、それを信じ続けるだけでは沼にハマってしまうでしょう。

まとめると、

'24トレンド……極々短いイントロでも直感的に感情を想起させられるもの
3秒かけるなら……別の視聴継続させる要素がある

これが最近のトレンドです。


(2) ボーッと見れる音ハメダンス

第2章でもお伝えした通り、TikTokUGCは背景としての楽曲×映像としての絵で一つのクリエイティブになります。

つまり、楽曲UGCヒット理由分析の際には、その楽曲が映像的要素と生み出すシナジーについても触れなければなりません。

そこで着目するのが本楽曲のダンス。

@localcampione

dc:@YUKI🍓【ローカルカンピオーネ】 毎日おれらのチャレンジを踊ってくれるみんな!もうおともだちになれたよな❤️‍🔥死ぬまでおともだちに囲まれてカメラにハイチーズしてたいぜ✌🏼✌🏼 #おともだち #edhiiiboi #ローカルカンピオーネ #localcampione

♬ Friends - Itsumoarigatou Version - edhiii boi

こちら第1章でも触れたように、ビートに合わせて動きがパッパッと切り替わっていく音ハメが綺麗にされており、これが直感的な心地よさを演出しボーッと見れるため、視聴維持率の向上に寄与していると考えます。

音ハメ感の心地よさは昨今TikTok全体のトレンドであり
例えばショート編集のスタイルでもこのようなものは流行っています。

実際比較的直近でヒットしたダンス系楽曲を見ても、「I wonder / Da-iCE」やカンカンダンスの名称で知られる「扛過槍 放過羊」、ポケモンダンスで有名な「Bubi Tan Tan」などどれもリズムに合わせたダンスが特徴的です。

@da_ice_official

「I wonder」× 桜さん @🌸桜🌸 Choreographer: 花村想太(Da-iCE)×Shungo(avex ROYALBRATS) @花村想太 from Da-iCE SOTA HANAMURA @Shungo @くるり〜誰が私と恋をした?〜火ドラ【公式】 #桜 #花村想太 #ダイスくる恋ダンス #Da_iCE #Iwonder #くる恋

♬ I wonder - Da-iCE

当然これらの楽曲がヒットしたのには様々な理由がありますが、こと映像的要素において"静と動"のメリハリがついた音ハメというのはエンゲージメントを獲得するのに有利であるというのは間違いありません。


4、時代背景における本楽曲の立ち位置


TikTokは流行りを創設するプラットフォームのため、そこでバズるには『今時代が求める曲をリリースすること』は非常に重要です。
昨今の流れにおいて本楽曲はどのような立ち位置になるのでしょうか?

結論
「ずっとある王道にスパイスを加えた変化球楽曲」
だと考えています。

そもそもHIP HOP系でカジュアルに楽しめる曲は歴史上ずっとヒットしてるいて、その文脈はずっと続いている中で「おともだち文脈」や「可愛いサウンド」が変化球としてハマった。

つまり、新しいトレンドを作るというよりは王道の中の上手い変化球的立ち位置としてヒットした楽曲だと言えるでしょう。


5、バズった結果得られたものまとめ

この楽曲がバズることに一体何の意味があるのか?

(1)成果

執筆時現在、フルバージョンMVがYouTubeで約130万再生を達成。
これはUGC数の割には流入が少なかった印象です。

その他の成果はどうでしょうか?

ヒットから約2ヶ月後にはTBS系「CDTVライブ!ライブ!」に出演。

さらにワンマンライブの追加公演も決定。


極め付けに今年 (2024年) 夏のROCK IN JAPAN FESTIVAL にも出演を果たすなど、アーティストとして日の目を浴びてこそいるものの、UGCの数値ほど大きな還元がなかったように思います。

一体その理由は何なのでしょうか?


(2)TikTokバズ → ファン増加への一貫性

まず本家MVの再生数が低かった原因として「TikTokでの期待値を回収できなかった」という理由が挙げられるかと思います。

この楽曲を聴きに来る視聴者のメインは少なからずヒップホップのクールな世界観をイメージしてくるはずです。対して、本楽曲のMVは3Dのコミカルな世界観で、テロップも表示が切り替わっていくだけのシンプルなもの。
これが一貫性のミスマッチを起こし、視聴率の低下につながったと推測します。

さらにチャンネルページに飛んでみると、ご本人ではなく事務所BMSGさんのCHであるゆえ、色んな企画やアーティストがごちゃ混ぜになっていて、edhiii boi さんのことをもっと知りたいと思った視聴者には少々届きにくいデザインになっています。
これが地味に痛い。

加えてご本人のチャンネルも、ドキュメンタリーやティザー動画とかなり内容にバラツキがあり、サムネでの差別化もされていないので、そもそもどれが楽曲作品なのか視認しづらい部分は正直あるかと思います。
つまりこの時点でかなり多くの視聴者を逃していて、もう少し深くまで入って色んな曲を聴いてもらえればファンになってもらえるところを、その前のフェーズで取り逃がしてしまっていたのではないでしょうか。


TikTokバズの怖いところは実はここで、
唐突にバズってしまうことが起こりやすいプラットフォームにもかかわらず、Tik内でバズっただけだとほとんどアーティスト活動への還元はないのです。

バズった後にフォロワーが増えたり、MVの再生数が増えたりするには全く別の理由と施策が必要です。
イメージとしては『宝くじ当たって数千万円分の広告費が無料だった!』みたいな現象が意図的に起こせるのがTikTokUGCバズ。
例え大量の広告費が無料になったとて、プロダクトに魅力がなければ意味がないですよね。

なので実はその後の動線設計や、このバズをIPやアーティストにどう還元していくのか?を考えることの方が大事だったりします。

弊社としてはレポートを通じてこの話を声を大にして伝えていきたいです。


6、再現性のある要素


(1)恒久的な需要を自身の音楽と掛け算してチャンスを狙え

恒久的な需要ーーーー今回で言えば「可愛い」という感情でしたね。

それをHIP HOPというイケイケ系のフィルターに掛け算してバズを生んだのが本楽曲でした。

このように、既に圧倒的に強いことが確定している要素を自身の音楽と掛け合わせて勝ち筋を見出せないか?という視点はチャンスを掴む鍵となるのではないでしょうか?

もしその要素を見つけたら、その全体の感情をどのように作り出しているのか…
・編曲
・ボーカルアレンジ
・歌詞や曲の文脈

等に着目して分解して見るとより精度が増すでしょう。


(2)UGC拡大を促す文脈を意識しろ

TikToker達はその楽曲を取り上げる背景や印象、つまり「文脈」を重視します。
今回は"おともだち"という文脈を用意したことでコラボ動画でのUGCが爆発的に増加しました。

具体的にはインフルエンサーに仲良く動画を作りましょうというメッセージを与え、その文脈が友達を大切にするっていう視聴者目線でも共感できる文化だったということ。
つまり、複数人で一つの動画を作るメッセージにしつつ、視聴者目線でも共感できる文化の楽曲を作るとバズる可能性が高いです。

例えば過去にUGC90万超えを記録している「Still the one / One Direction」は二人でハートを作るダンスで話題となりました。
このダンスを完結させるために、自然と複数のカップリングパターンが生まれUGCが広がりやすかったわけです。

@wrs1191221628

Still The One/사나 미나 몇 번이나 재구매한 동영상#TWICE#사나#미나

♬ One Direction - Still The One - いろはす、



この場合、曲のメッセージ性というよりはダンスに意味を持たせたケースにはなりますが、一つの楽曲をUGCする際に複数人を自然と巻き込めるような仕掛けを施すことが有効だとわかる面白い事例だと思います。

このような視点を持って日々バズっている楽曲を聴いてみると、自身に活かせるヒントが得られるというのは往々にしてあると思いますので、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。




「おともだち - いつもありがとうver.」の分析は以上となります。

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