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「業務に詳しい人」の話は聞くべきか?〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#10 #PMの仕事

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

要件定義に呼ばれる「業務に詳しい人」

新しいシステムの導入やシステムの刷新などの際、業務部門から有識者が呼ばれます。業務部門の偉い人が「彼(彼女)は詳しいから意見をしっかり聞いてくれ」と紹介して来るわけです。
システム化の企画段階や要件定義では彼(彼女)らからヒアリングをするのですが、けっこう良い確率でうまくいきません。

何故か大きな抜けがあったり、結論が「現状維持」に偏ってしまったりしてしまうことも少なくありません。

期待値としては「業務に詳しい人」に聞けば抜け漏れもなく、確実な改革ポイントが把握でき、画期的な改革が実現される・・・・と思うのですが、実際にそうなることは少ないと言わざるを言えません。

なぜならば「業務に詳しい」人は業務に詳しい人ではないからです。

その傾向を書き出してみます

その1:体系的に理解できていない

「業務に詳しい人」がその業務を直接実施している人の場合があります。その際に多いのが、その業務とそれを取り巻く周辺の業務を網羅的、かつ体系的に説明できないというケースが非常に多くあります。彼(彼女)らに見えている業務は自分の目の前で行われる作業だけなので、その業務の前後とか、並行で行われる業務があるのか、ないのか。関連しそうな事項がそれだけなのか、うまく説明できていない場合がほとんどです。

言ってしまえばジグゾーパズルの一部分の組み合わせには詳しいけど、パズルの絵は何なのかが判らないと言った状況です。

これでは部分最適なシステムになってしまうとか、業務全体がうまく回らないという事態が発生してしまいます。

こういった場合は、業務のルールを決めている側の人からもヒアリングして、双方の話の整合を取っていくことがベターなのですが、往々にしてルールを決めたのははるか昔で、それを知っている人はすでに会社には居ない・・・という場合があるので、ヒアリングする側が想像で良いので、ある程度汎用的な業務体系を考えておき、そこのピースに当てはめてながらヒアリングする必要があります。

その2:そうなっている背景がわからない

あと、よくあるパターンとしてはその業務が行われている背景や理由がわからないというケースです。その業務を行う上での詳細な手順やルールそのものは詳細で正確に理解していても「なぜそれをしているのか?」がわからないケースです。

システム化に限らず改善の基本はいくつかのパターンがあります。例えば「廃止」「削減」「容易化」「標準化」「計画化」「同期化」「分担」「機械化」などですが、いずれの手法にしても判断を行う上では、その業務や判断の背景とか理由の理解が必要なのです。それがないと廃止してはいけない業務を廃止してしまったり、その逆で間違いが怖くて「現状維持」になり効果が殆ど出ない・・・・・なんてことになってしまいます。

これを防ぐためにはヒアリングする際に「それを行うのはなぜですか?」と聞くのが有効ではあるのですが、これはやりすぎるとヒアリング対象の仕事に対するプライドを打ち砕くことになりかねない(もし不要な業務であればひろゆきさんの論破みたいになる)ので、あまりお勧めはしません。

本当は、その人に仕事を与えている上位の人に理由や背景のヒアリングを行い、そこでガン詰めをするのがいいのですが、SIerさんやコンサルさんは何を恐れてなのか、それは避ける傾向にあります。この仕事は情シスを含めた「中の人」にしかできない仕事ですが、なかなかやる人はいません。

ヒアリングの前に関係性を構築するとか「悪役」になる決意が必要です。


その3:客観的に見れていない

最後は現状その会社、その職場で行われている仕事の内容についてはわかるものの、そのやり方が業界や職種の中でスタンダードな手法や手順なのかがわからないことです。
多くの場合は会社や職場の中でローカルに培養された業務を、なんの比較もなく聞かされることになります。

井の中の蛙の話を聞いて何をする?

こういう事になってしまいます。外の情報はぜいぜいその業務に簿記みたいな資格試験があって、その受験をしたから得られる話くらいで、客観的な情報はヒアリングではなかなか得られないものです。

本来は「仕事のプロ」であるならば、外の世界を知り、自分たちのやり方がたと比較してどういう位置づけであり、どこが不足しているのか、どこが過剰なのか、その理由は何なのか知らないといけないのですが、多くの場合、特にバックヤードのしごとの場合は知らないことがほとんどです。

もし、これができているのならおそらくは、ヒアリングされる以前にその業務はすでに改善し尽くされて居るはずですし・・・・


・・・で、どうすれば良い?

結論としては現場のヒアリングだけで、システム刷新や業務改革を考えるのは非常に危険です。「業務に詳しい人」は決して「業務のプロ」ではないからです。
いくら詳細に聞いても結果は「なんだかよくわからないので現状維持」になってしまいがちですし、その業務の客観的で詳しいプロを読んできてヒアリングさせるのもお金とか人材確保とかでなかなか厳しそうです。

いっそのことグローバルなERPなどのパッケージやSaaSに仕事を合わせちゃったほうが大量の血は流れるとしても結果としては「マトモ」になる気がします。


まぁそこまでいかなくても「業務に詳しい人」の話は鵜呑みにしてはいけません。




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