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事業再建/テコ入れ実績(3)

家具販売(EC/楽天)

1.事業概要

年商2億円、楽天を主としてソファやテーブルを販売する企業。販売不振で赤字が拡大しているとのことで相談依頼。商品は中国の工場でOEM生産し、船便のコンテナで日本に輸入、自社倉庫にて保管。

2.調査(1)

赤字は営業利益▲7~8%で推移。低単価の商品の販売比率が高く、薄利モデルに陥っていた。資金繰りも芳しくなく、改善開始後に多少の追加借入はできたが、金融機関もそれ以上の資金提供は難色を示していた。
中国でのOEM生産だけあって、できるだけコストを下げようとコンテナに商品を満載して輸入していたので、倉庫にも大量の在庫があった。

そのように仕入量が多かったので、在庫処分のためセールも頻繁に行っており、グロスの粗利益率は経営者の想定よりも10%程度、低くなっていた。かといって、頻繁なセールをやめると過剰在庫に陥るというジレンマを抱えていた。

さらに大量の在庫を補完するための倉庫費用が月に180万円程度かかっており、高コスト体質になっていた。

3.調査(2)

とりあえず高単価商品の販売にもっと注力するという対策を立てたが、根本解決ではなかった。
そこでEC家具販売の業界の市場特性をヒアリングしたところ、ヒットしたソファ・テーブルのデザインや機能はすぐに競合に真似をされてしまい、真似の応酬が日常的に行われているとのこと。
それにより、流行のサイクルが非常に速いので意匠登録する余裕はどの企業にもなく、仮に登録できたところでアレンジによる抜け道はいくらでもあるのであまり意味はないとのこと。

この市場でのポイントは「商品開発のスピード」をいかに早めるかであった。

では当該企業での商品開発はどのように行われたかというと、

・新デザイン企画の立案
・中国の提携工場にサンプル製作を依頼
・1~2カ月後に初回サンプルが中国から船便で到着
・修正を依頼
・また1~2カ月後に修正したサンプルが到着
・その繰り返し

という具合で、ひとつの商品開発に最低でも半年はかかるという状況であった。

4.調査(3)

中国の提携工場の状況について。資本関係は全くないが、その工場の売上の95%以上は当該企業からの発注で、提携工場というより子会社に近いものであった。
また、従業員も5~6名程度の小さな工場だったが、中国による「零細工場の淘汰政策」によって、事業継続には多額の更新費用を当局に支払わなければいけない状況であった。

5.対策

このような調査状況から以下のプランを企画。

・中国工場は閉鎖
・当該企業による日本国内での製造にシフト
・工場の従業員のうち希望する者は当該企業の日本工場に移籍

当該企業は小売からメーカーに業態変更するということである。

6.結果(1)

当該企業の経営者・幹部と共に中国工場に視察にいき、現地で工場職員と話した結果、いまよりも大幅に給与が上がるという条件で全員が来日を希望した。会食の席で全員かなりアルコールが入っていたので、日本への出稼ぎについて子供のことはどうするのかと聞いたら、「中国では夫婦で出稼ぎをしても、親戚が子供の面倒をしっかり見てくれるのが普通」とのことで、全く問題はないとのことだった。
製造に必要な機械も日本に運ぶコストはさほどではなく、全員分の就労ビザを取得することも可能だった。

メーカー化による製造効率の変化については以下。

・直接原価で試算
(工場の従業員の人件費は製造原価の労務費ではなく、本社販管費で計算)
・材料は日本で調達するため製品原価は10%ほど上昇
・ただし中国産から国産になるため、売価も20%以上アップして販売が可能になった
・結果、粗利益率は平均で10%以上アップ
・原材料だけ置いておけば製品在庫は必要なぶんだけでよいので、倉庫スペースを大幅に削減でき、倉庫代が月間で150万円削減できた
・削減できた倉庫代は増えた工場の人件費の一部に充てられた
・在庫が少なくて済むので、財務が大幅に改善された
・在庫が必要以上に増えないので、頻繁にセールを行う必要がなくなった
・一番の課題だった商品開発のスピードがあがり、半年以上かかっていたのが1~2カ月程度に短縮された

これらの結果、初年度で月間の平均営業利益率が15%まで改善した。

7.結果(2)

メーカ化でも充分な改善効果があったが、この半年後にコロナ禍が発生し、中国からの船便が完全にストップ。競合店舗はどこも販売できる商品がなくなってしまったが、メーカーとなった当該企業は原材料もほぼ国内調達なので製造可能。製造したそばからどんどん売れていき、あまりに多い受注にゆるやかに制限をかけるため、価格を2割以上アップさせたが売れ行きは変わらず、コロナ禍の中で大きく収益を伸ばすこととなった。

その他の実績

実績(1)
年商3億円/営業利益▲200万円 → 年商3億円/営業利益2,100万円
おせち販売(EC)

実績(2)
年商2億円/営業利益▲8% → 年商1億2,000万円/営業利益11%
ベビー用品レンタル業

実績(4)
年商1億5,000万円/営業利益▲10% → 年商2億3,000万円/営業利益15%
大手衣料メーカー(EC)


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