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事業再建/テコ入れ実績(2)

ベビー用品レンタル業

1.事業概要

事業所近隣を中心にベビーベッドやベビーカー、小型大型玩具などのベビー用品を一般消費者に向けてレンタルしている。配送は自社便。楽天を通じたレンタルの受注も受けており、自社便の配送エリア外へは宅配便を使用。その他、衛生用品のクリーニング事業も行っている。年商は約2億円。

2.調査(1)

当該企業は赤字が続き、経営者も方策が分からずに困っていたが、三代目承継者であるため会社の清算にも躊躇していた。決算書ではレンタル用品の企業によくある高粗利益率が確認できたが、年商に対しての固定費が高さが際立っていた。その原因は、レンタルの主力となるベビーベッド、ベビーカーを毎年大量にメーカーから購入していたことだったが、1台当たりの仕入額は5万円程度ということもあり、償却ではなく全額期間費用として計上していた。

3.調査(2)

元々ベビーベッドは高耐久性の製品であり、通常の使用では簡単な修理や補修でも10年以上は全く問題なく使えるものである。それにも関わらず、なぜ毎年新品をメーカーから購入するのかと聞いてみると、「先代から、そして業界の商慣習なので」という答えであった。新品だとユーザーが喜ぶからという理由もあったが、通常の一般用品レンタルの概念では中古品が当たり前である。その場の聞き取りでは、「中古だとユーザーの満足度が低く注文が入らない」という合理的な根拠は出てこなかった。

3.調査(3)

例えば5万円で仕入れたベビーベッドは、平均して半年間、月額3,000円程度でレンタルしていた。返却されてから次の貸出までに行うクリーニングや修理補修も1,000円~2,000円程度のコストがかかるので、仕入れの5万円の元をとるのには、アイドルタイムなくフル回転しても2年半はかかる計算でである。新品状態での初回レンタルだけは月額料金を1,000~2,000円程度高くしていたが、その後は仕入れ額に対して非常に低価格でレンタルされていた。
また中には数回のレンタル後、中古品として販売にも回されていたが、こちらも市場には多くの中古品が出回っているので、大した収益にはなっていなかった。

ベビーベッドの購入資金が少なくとも2年半は塩漬けになる形で、それにより当該企業の資金が圧迫され、借入金の増大と金利負担がのしかかっていた。

年々子供の出生数は減っているのに、レンタル業者がメーカーから半ば強引に買わされる新品の数は減っていないという、いびつな業界構造があった。

4.調査(4)

自社配送エリアでは、ドライバーがユーザーに配送担当の社員が直接届けていたが、ただ商品の引き渡しと簡単な説明を行うだけで、特にユーザーとコミュニケーションを取っている形跡はなかった。

楽天経由の自社配送エリア外の受注は、宅配便での配送であったため、ただでさえ低い収益性をさらに楽天へのロイヤリティ運賃が圧迫する形になり、粗利はほとんどないと言ってもよかった。

また、レンタル以外の衛生用品クリーニング事業も、一定の売上高はあるが利益は全く残っていない状態だった。

5.対策(1)

合理的理由のない、過去の商慣習から行っていた毎年の新品購入は即時停止。レンタル用の在庫の半数を中古販売に回し、財務の改善を図った。
同時に、「出生数は減っているのに、市場への供給数は変わらない」という状況から、一般家庭には膨大な数の中古ベビーベッドやベビーカーが存在するということなので、中古品の買取に注力した。

中古品の買取は非常にスムーズに進み、これまで中古品として月額3,000円でレンタルしていたベビーベッドと同様の製品状態のものを、5,000円から高くても1万円以内で仕入れることができた。これによりベビーベッドとベビーカーのレンタルの収益性は劇的に改善された。

6.対策(2)

自社配送エリア外への受注も、運搬コスト高により停止。自社配送エリアのみの受注に注力した。配送ドライバーへの教育も行い、ベビーベッドの配送時に、レンタルが終了する半年後に必要な新たなベビー用品の案内も資料と口頭で行うようにトレーニングした。
それにより、コスト部署でしかなかった配送が、次の受注を生み出す収益部署になった。大手運送会社のセールスドライバーと同じ性質にしたということである。また、不採算部門であった衛生用品のクリーニング事業も撤退した。

7.結果

自社配送エリア外の受注停止、衛生用品クリーニング事業の撤退により年商は半減したが、改善から初年度で10%を超える営業利益を確保することができた。
この対策は金融機関からも高評価で、その後もレンタル品は中古品買取での調達を続けることによって、新品で購入してレンタルしている在庫の比率が低くなればなるほど財務と収益性が改善されていくという具合である。
また、配送担当者の営業スキルも向上すればさらに収益性は高まってくるであろうと考えられた。

その後、財務と収益性に改善が見られたため経営に余裕ができ、半減した売上高も回復傾向を続けることができた。

その他の実績

実績(1)
年商3億円/営業利益▲200万円 → 年商3億円/営業利益2,100万円
おせち販売(EC)

実績(3)
年商2億円/営業利益▲8% → 年商2億8,000万円/営業利益15%
→ さらに増加
家具販売(EC/楽天)

実績(4)
年商1億5,000万円/営業利益▲10% → 年商2億3,000万円/営業利益15%
大手衣料メーカー(EC)


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