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起業家が学ぶべきはSF?世界を書き換えるSFプロトタイプング とは| 『古びた未来をどう壊す? 世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方』

今回は、「古びた未来をどう壊す? 世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方」(宮本道人さん/光文社 2023/1/25)を読んだので、特に前半部分のまとめを記しておきます。

この本のテーマをめちゃくちゃ要約すると「おはなしの使い方のおはなし」です。

そもそも未来というのは、実は自分たちで変えたり、いじれます。

でも多くの人がそう思っていないのはなぜか?ーそれは、「古びた未来(像)」が邪魔をするからです。

この本では「古びた未来(像)」=「決まった未来像」や「他人から与えられた未来」
を自分たちで新しく書き換えていくことの重要性と方法論について語られています。

そしてこの本では「SFプロトタイピング」という手法を用いれば、「外れる未来予想」を作り出し、それをテコにしてイノベーションを起こせると主張します。

ちなみにこの場合の「プロトタイピング」というのは、妄想を具現化するための「叩き台」という意味になります。

ボクの余談

ボクは以前ウェブディレクターをしていたのでよく分かるのですが、たとえばお客さんのウェブサイトを構築するとき。お客さんにウェブサイトのイメージを、いくら口で説明しても全然しっくり来てくれない。

だけど、イメージとかラフとかをつくって説明すると、いっきに「ここはこうしてくれ」「ここはこれでいい」といった対話が生まれるんです。つまり、プロトタイプには対話を生む作用があるんですね。

そうした対話を促すものとしてニュアンスを込めて、「プロトタイピング」と言っていると理解しました。

古びた未来とは何か?

この本では、古びた未来像とは以下の3つのタイプが挙げられています

・固定観念でガチガチの未来……専門家による未来予想
・一旦レールが引かれた未来……方針によって変化しにくくなった未来
・一部の人が決めた未来……親などが決めて、他人に押し付ける未来

本書の根底にあるのは、未来というのは、実は自分たちで変えたり、いじくることができるもの、という強い主張です。

多くの人はそうしたチャンスがあるのに、気づかず平々凡々として過ごしている。

こうした姿勢に至るのは、このような「古びた未来=過去の延長線上で考えられたものや、誰かから与えられたもの」によって視界が塞がれているからだ、と指摘されています。

未来について考えること

未来をいじるためには、未来について考えることが重要です。

ただし、未来について漠然と考えることは、古びた未来を考えることでしかなく、自分と世界の可能性を狭めてしまうと警告しています。

では、どうすればたくさんの可能性を持つことができるのでしょうか。

その答えは、「①フィクションの力を借りること」であり、「②対話を生み出すフィクションはSFがピッタリ」であると提唱されています。

①フィクションの力を借りることとは?

そもそも人間はフィクションフィクションから現実を生み出すことで発展してきた生物種です

「フィクション」とういのは、全く存在しないものについて、情報を伝達するもものです(サピエンス全史のハラリもそう言っている/ギルガメッシュ叙事詩/哲学者は小説で自分の思想を伝えた/蟹工船のようなプロレタリア文学もその例)

そのため、強い力を持つフィクションは、人類の歴史のなかで権力者が利用したり、制限されてきました。それだけフィクションには、世界を書き換える力があるのです。

②対話を生み出すフィクションはSFがピッタリ

そもそもSFは、「我々の世界のありえるかもしれない別の姿」を描くジャンルです。

特に変化が激しい現代では、異なる可能性を考えられるのは有利であると考えられています。これを「SF格差」という概念で説明しています。例としてトヨタとテスラの事例が挙げられています。

また、SFは対話のための文学だからです。

SFの起源であとされている「本当の話」、「フランケンシュタイン」、「ヒューゴー賞」のヒューゴーなど、SFは人々がコミュニケーションするための実用的なニーズに即して生まれたジャンルとされています。

さらにこの本では、SFは教育、行政、ビジネスなど、あらゆる面で応用が効くとしています。

SFを使って未来を変える

この本で提唱されている具体的な手法として、「SFプロトタイピング」と「SFバックキャスティング」が紹介されています。

前者は、ぶっ飛んだ未来像をみんなで考える手法であり、後者は、その未来像をもとにして、今やるべきことを考える手法です。

どうやって考える?=ワークショップ

「SFプロトタイピング」と「SFバックキャスティング」に関するワークショップの開催についても具体的なアドバイスがありました。

たとえばテーマは「未来の食卓」や「未来のレストラン」など、ちょうど良いサイズ感で決めること。

また、開催場所はフラットな環境で、オンラインの方が良いかもしれません。そして、ワークショップの時間は1回3時間で、開催日は2日とされています。

特にテーマを話し合う場合に大切なのは「ありたい未来を考えるのではなく、おかしな未来を考えること」です。

外れる未来を予測することが重要で、みんなが共感するようなアイデアは捨てて、馬鹿にされたり笑われたりするようなアイデアを積極的に拾うことが大切だと説明されています。そして、参加者は事前にじっくりと準備してはいけないとされています。

他にもワークショップには心理的安全性が重要だとされています(個人的には『いばらない、おこらない、否定しない、説教しない』のといったマインドが大切なのだと思いました)

まとめ

実は以前、同じようなワークショップに出たことがあります。

そこでは様々なテーマの未来についてみんなで語り合ったのですが、みんなで語り合うことでとても楽しかったですし、なんていうとか元気が出てポジティブな気持ちになったような記憶があります。

ボクもSFプロトタイピングのワークショップ、開催してみたいなぁと思っていまた。

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