「半径2メートル」に集中すれば、未来はコントロールできる-『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』
新規事業やスタートアップの起業に取り組んでいるけれど「どこから手を付けていいのか分からない」や「予想外のことばかり起こる」
「新しいことをやりたいけど、なかなか行動に踏み出せない」
という悩みや不安。チャレンジ心旺盛なボクたちにとって「あるある」なのではないでしょうか。
ここで紹介する「エフェクチュエーション」という考え方は、こんな問題を乗り越えるためのヒントになるかもしれません。
今回は「エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する5つの原則」(吉田満梨/ダイヤモンド社)について紹介します。
そもそも「エフェクチュエーション」って?
「エフェクチュエーション」という言葉、初めて聞く方も多いかと思います(ボクも去年、MBAの講義で初めて知りました)。
簡単に言うと、
「熟練した起業家の意思決定実験から導かれた、高い不確実性に対して予測よりもコントロールを優先する思考様式」
となります。
この理論は、サラス・サラスバシー教授(ヴァージニア大学ダーデンスクール)が、「不確実性の高い環境での問題解決の手法」として提唱したものです。
エフェクチュエーションの5つの原則とは?
エフェクチュエーションでは、優れた起業家に共通すると言われる5つの原則を提唱しています。
■①手中の鳥の原則(Bird-in-Hand Principle):
この原則は、手元にある資源(知識、技能、人脈など)を最大限に活用せよという考え方です。
いわく、「あなたが手にしている一羽の鳥は、姿の見えない多くの鳥よりも価値がある」。
「私は誰か?」「私は何を持っているのか?」「私は誰を知っているか?」という問いから出発し、そこから糸口を見つける心構えです。
■②許容可能な損失の原則(Affordable Loss Principle):
熟練した起業家は、命がけのジャンプはしません。
起業家は新しい事業やプロジェクトに投資する際に、最大でどれだけの損失を許容できるかを考慮します。
■③クレイジーキルトの原則(Crazy Quilt Principle):
不確実性の高い環境では、そもそも誰が顧客になるか?競合になるか?は分かりません。
そのため、顧客・競合ふくむ「ステークホルダー」に対して、積極的にパートナーシップを構築しよう、という考え方です。
■④レモネードの原則(Lemonade Principle):
予期せぬ出来事や偶然が発生したとき。それを機会として受け入れ、問題や障害を「チャンス」として捉え、それを利用して新しい価値を生み出そうという考え方です。
ちなみに「When life gives you lemons, make lemonade(人生にレモンを与えられたら、レモネードを作ればいい)」ということわざから命名されています。
■⑤飛行機のパイロットの原則(Pilot-in-the-Plane Principle):
未来に起こるだろう結果を予測したり、過去の成功・失敗に捉われるのではなく、まさに「いま・ここ」に集中して、望ましい結果を導こうという考え方です。
そして、これらの原則はそれぞれが単独で存在するのではなく、有機的に繋がっている考え方です。
不確実な状況では、「自分の半径2メートル」にまず集中する
「エフェクチュエーション」の本質をボクなりに表現すると、
「不確実なことが多い状況(特にまったく新しいチャレンジ)では、自分の半径2メートルにまず集中することが大事」
「未来は、予測するのではなく、コントロールするもの」
ということです。
そもそも「先行きがどうなるか分からない」という状況では、ゴールを見据えてそれに向かって最短距離で進むという、いわゆる経営戦略的なアプローチは困難です(エフェクチュエーションでは、従来の経営戦略的なアプローチを『コーゼーション』と呼びます)
そうではなく、不確実性が高い状況下においては「コントロール可能な範囲で、どう新しい行動を生み出していくか」という心構えが重要だと説いています。
単なるポジティブシンキングではない
特に、ボクが重要だと感じるのは「レモネードの原則(Lemonade Principle)」です。
この原則によれば、予期せぬ出来事や失敗に遭遇したとき、その状況を単に放棄するのではなく、新しい可能性として活用することが求められます。
具体的なステップは以下の通りです。
まず、予期せぬ事態に気づく。好ましくないと感じたとしても、それを無視しない
同じ現実に対する見方を変える(リフレーミング)
予期せぬ事態をきっかけに「手持ちの手段」を拡張する。それを自分のリソースとして活用する
拡張した手持ちの手段(資源)を活用して、新たに「何ができるか」と考える
また、この「レモネードの原則」は、自己啓発でよく言われる「ポジティブシンキング」とは似て非なるものかと。
比較すると、
ポジティブシンキングでは、
困難な状況でも、前向きな「態度」や「思考」を持つことを重視することが幸福に繋がる
と考えますが、
レモネードの原則は、
困難や偶然性を受け入れ、どのように「実践的に活用」していくか?
に重点を置いています。
まとめ
ー優れた起業家に必要なこと。
それは、不確実性の高い状況に陥ったときには、無力感を感じたり、能動性を失うことなく、「自分を取り巻く半径2メートルの世界」にまず集中することです。
そして、そこから得られるフィードバック(失敗も含む)を手がかりにして、コントロールできる範囲を広げていくことが重要だと、ボクは理解しました。
また、エフェクチュエーションは、
「キャリアプランニング」
「人間関係」
「プロジェクト管理」
「教育」
など、不確実性を伴うようなさまざまなシーンでも使えそう!
エフェクチュエーションは、これからの世の中を渡っていくための行動指針にもなりそうです。
※ここから結構な分量の試し読みもできるみたいです!
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