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ポストコロナの消費行動(後編)

前編のテーマは、コロナ禍の影響によって、裁量支出(買うか買わないかの判断を自分でする買い物)に対する消費者心理にどのような変化があったのか?についてでした。
後編では、その変化をどのようにビジネスに活かしていくべきかというという視点での分析になります。

ポストコロナの世界を勝ち抜くためのキーワードは「顧客との関係性」かもしれない。
ビフォーコロナと大きく異なる消費者の行動様式にフィットする市場戦略/事業戦略をもつことが未だかつてないほど重要になっていくことが考えられる。
これからの変化に対応していくため、各企業はどのようなことを考えて行動すべきだろうか?マッキンゼーが調査から導き出した、ニューノーマルな時代に向けて今準備すべき5つのポイントは以下の通り。

①.リアル店舗の価値

ポストコロナのリアル店舗は、オンラインでのショッピング体験を経た顧客による「リアル店舗の価値」に対する根本的な再評価を受けることになる。
今回の調査を通して、消費者が「実際に触る/感じることができる体験」をリアル店舗の価値として評価していることがわかっており、店頭で商品を見た上で実際に購入はオンラインで行う、という購入経路が今後より一般的になることを鑑みた上で、『A店舗の売上=A店舗の店頭売上』という収支の考え方について変える必要がある。
店頭におけるオムニチャネル化が加速していくことを考えた時、購買する場所の多様化を進めながら、オフラインでの体験価値を高めるという、オフライン&オンライン、両面で強いブランドになるための努力が、これからの顧客の支持を勝ち取るために必要になっていく。

②.ブランドへの信頼

コロナ禍の影響による家計へのダメージや、景気の先行きの不透明感を受けて、消費者がブランド選びについてより「信頼」を重視していくことが調査結果から示されている。
新しく商品やサービスを世の中に出していく際に、そのブランドがなぜ信頼に足るのか?に対する理解を広めていくための活動や、その商品をはじめてつかった時に「いいな」と感じさせることができているか?といったブランドと顧客とのコミュニケーションが今まで以上に大切になっていく。

③.価値に対する判断基準

オンライン、オフライン問わず、顧客にとって価値があると感じさせる商品のもつ『価値への判断基準』をスピード感をもって把握することが非常に重要になってくる。
どのような基準を満たすことでお客様にとって満足度の高い商品になっているのかを理解することで、どのような商品ラインナップにするべきか?
どのようにプロモーションを打つことが効果的なのか?手を伸ばしたくなる価格設定はいくらぐらいか?などの様々な意思決定をより効果的に進めることができるようになる。
顧客セグメントによって価値への判断基準は大きく異なるため、顧客理解を深め、よりパーソナルな視点で情報収集をできるようにすることが必要になる。

④.お客様目線とタッチポイント

調査結果からは、消費者が多様なチャネルで商品へのタッチポイント(=商品に触れる機会)をもっていることが示されている。
オフィシャルサイト、SNS、オンラインプラットフォーム、単独ブランド店舗、セレクト型店舗など、消費者にとって様々な場面で商品に触れる機会があるからこそ、それぞれのタッチポイントで一貫性をもてているのか、良い顧客体験を提供できているのか、ブランドイメージを正しく伝えられているのか、を正確に把握することが重要になってくる。
より正確な状況を把握するため、ブランドや企業にとって、「分析」という分野に対して、より多くの人的、金銭的な投資をしていくことの必要性が高まっている。

⑤.ブランドの誠実性

マッキンゼーの実施した2020年4月の調査により、顧客そして従業員の両グループとも、会社の「社会的な意義」について説明している企業、コロナ禍が自分たちのビジネスにどのような影響を与えたのかについて、誠実なコミュニケーションをとることができる企業、を前向きに評価するという分析結果がでている。
今後、どのような状況がおとずれるのかが分からない中で、その会社の商品を買うことに対してポジティブな印象をもつことができるように、消費者の気持ちに寄り添ったマーケティングのトーンやメッセージを発信することが必要になる。

最後に(新井の所感)

今回、ポストコロナの裁量消費についてのレポートを読み、noteに起こす中で、自分が事業責任者をしているSEEPの6月の自主調査結果に表れていた「良い店舗はより良く、残念な店舗はより残念に」という傾向について、とてもハラオチしたのが印象的でした。
どこからその納得感が生まれているのかと考えたとき、リアル店舗の価値は「店舗スタッフによるブランドに対しての信頼感を作り上げること」であり「お客様が自分自身で気付かないニーズを読み取り、提案する力」である、ということがコロナのビフォーアフターで全く変わっていない、ということに起因するのだと思い当たりました。
ファッションやリテールがニュースになるとき、前向きな話題として「ECの売上が伸びている」ということばかりがフォーカスされていますが、店頭でいかに前向きで素晴らしいマインドをもったお店の方が日々努力をしているのか、ということに目を向けられる自分でいたいと感じましたし、そのヒントが詰まったレポートだと思いました。

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