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恩師へのご報告

昨日、塾・予備校講師として、もう教壇には立たないと決めて、現役を引退することを、ボソボソと呟くように書いたら、思いのほか、たくさんの方から労いのお言葉をいただきました。

思ってもみなかったことで、素直にうれしかったです。

こんなにたくさんの方がみてくださっていて、いいねをしてくださり、コメントをくださったのは、本当に素直にうれしかったです。

全然、大したこともできず、ただ、だらだらと続けただけの35年のような気がしますが、こう言って労っていただけることは、何よりうれしいことです。

私がこの世界に入るきっかけになった恩師も奥様も、もう鬼籍に入られています。恩師がこのことを聞いたら、なんとおっしゃるかな、とふと昨日の夜思いました。

きっと「自分の好きなことをしたらいいよ」とおっしゃってくださるようには思います。

心のやさしい方でした。同級生、今から24年も前に若くして癌のためにこの世を去りましたが、この同級生と私を本当の子どものようにかわいがってくださいました。

恩師は塾・予備校講師として生涯現役を貫かれた方でした。

最後は私の教室で、子ども達に授業をしてくださっていました。それを間近に見せていただき、自分が子どもの時のことを思い出しているたことが昨日のようです。

私は恩師から見ればできの悪い弟子だったと思います。
それでも、私が塾・予備校講師として、そして不登校の子ども達の支援者としてここまでやってこれたのは、恩師とのご縁があったからだと感謝しています。

忘れもしないエピソードがあります。

奥様に頼まれて、ある大学病院に恩師の診察に付き添ったことがありました。その時に、「白い巨塔」に出てくるほどではないのですが、10人弱くらいの大学病院の先生方が私たちの前を通っていかれた時に、私よりも若い先生が恩師に気がつき「先生、ご無沙汰しております」と声をかけてこられたのです。

その先生の声で若い先生方がこちらを見られた時に、若い先生方のほとんどの方が、「え、先生、ご無沙汰しております」とご挨拶に近くにこられたのです。実は、先生方もお互いにはご存知なかったのですが、挨拶にこられた先生方は全員、恩師の教え子だったのです。

難関私立中学・高校への受験で恩師がお教えになられた方々が、大学病院で医師として勤務をされていたのです。

その時の大学病院の大学の先生と思われる方の、ものすごくムッとした顔も面白かったのですが。

この時に、恩師は受験勉強を教えていただけなのに、教えてもらった当時の生徒にここまで慕われ、10年以上経っていても、すぐに挨拶に来てもらえ、また、恩師自身もすぐに全員の名前を思い出していらっしゃいました。

「医者になったんやな。元気にしてる?頑張ってるんやな。立派になって。」と声をかけていらっしゃる姿を見て、恩師が塾生に教えていたのは、受験勉強ではなかったんだと確信したのを、今もはっきりと覚えています。

恩師の口癖が「子どもはな、知りたがってる、学びたかってるんや。だから、出来るだけ最新のサイエンスを伝えていかないとあかんねん。」でした。

実際に亡くなった当時、4つの学会に所属し、最新の論文にも全て、目を通されていたのです。

膨大にある先生の資料を、お亡くなりになって3週間くらいした時に、奥様から頼まれて、少しずつ整理をし始めた時に、全ての論文に線が引いてあり、コメントが書いてあるものがたくさんあることに気がつきました。

後日、四十九日の法要の時に、先生の同級生の大学の教授がいらっしゃっていて、この話をさせていただいたら、ぜひ、見たいとおっしゃって、お見せしたのですが、この大学教授が、「このコメントをもっと早く見ていたら、研究がどれだけ違ったものになったか!」と悔しがっていらっしゃり、その論文集は、その同級生の大学の先生が、全部見返したいと奥様から譲ってもらっていらっしゃいました。

そのくらい、最新のサイエンスに精通し、子ども達の知的好奇心を満たし、ただ受験勉強を教えるのではなく、子ども達にサイエンスの素晴らしさ、学ぶことの楽しみと素晴らしさを伝え続けていらっしゃったのだと思います。

私のところで恩師の最後の生徒になった子どもも、現在、国公立大学の医学部で6回生として学んでいます。

私は、こんな偉大な恩師の元にいながら、本当に恩師の意志をついで、子ども達に学ぶことの楽しさ、素晴らしさを伝えられたかというと、到底思えないのが本当のところです。

ただ、恩師が学ぶことを通して、生きることの素晴らしさを伝えようとしていたことだけは間違いないと、最後まで、すぐ近くにいて、まるで子どものように接していただき、実感していました。

35年の間、子ども達に教える、子ども達の思いを聞くという仕事の中でこの部分だけは、ほんの少しだけできたかな、と思います。

そして、これからも、多くの塾の先生方や中小企業の社長様、若いこれから起業しようとされている方の支援をしていく中で、生きることの素晴らしさを伝え続けたいと思っています。

そう思って、今日は恩師のお墓参りに、引退とこれからの仕事のことをご報告に行ってこようと思っています。


よろしければ、ぜひサポートをお願いしたいと思います。