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Google広告を10倍以上も伸ばすためのプロモーションミックス

実務的な話を書くためのnoteなんですが、ようやっと前段で整理しておきたい話が終わったため、
今後はできるだけ実務の話を色んなバリエーションで書いていきたいと思います。

今回は、Google広告によるユーザー獲得が飛躍的に伸びた事例について、考察を交えて書いていきたいと思います。
事例としてはスマホゲームの話になりますが、概念的には業種を問わず、ダイレクトレスポンスの獲得を伸ばすためには共通する話になると思います。

【Google広告による獲得が、どれくらい伸びたのか?】

Case1:
ゲームタイトルAは、リリースから半年以上経過した時点で、毎月数千万円ほどの予算をかけてGoogle広告のアプリキャンペーン(以下AC)に出稿していた。配信はCPI(インストール単価)最適配信と、課金最適配信(※)を併用していた。
TVCMとYouTube広告(True View)、OOH出稿などを併用した月は、そのタイミングで出稿額が3.5倍に伸長し、かつROASは前月比で120%に改善した。
Case2:
ゲームタイトルBはリリース数か月が経過し、ACの配信規模が目標予算数十万円~/日程度であるのに対し、目標の4分の1程度まで縮小し、かつROASも目標未満で推移していた。
あるゲーム内キャンペーン(初心者への報酬配布強化)を実施することになったタイミングでTrue Viewやゲームメディアなど純広告の出稿を強化したところ、その期間中の配信額が一日あたり10倍~30倍程度まで伸び、かつROASは150%程度改善しペイラインに到達した。

上記は特徴的な例を記載していますが、事業的にみてパラダイムシフトが起きるレベルの成果だということが伝わるのではないでしょうか。

※課金最適という言い方は正確ではない!とかの話は割愛します。Google先生が全部ドキュメントを用意してくれているので、それが正です。
https://ads.google.com/intl/ja_jp/home/

【事業的にみてGoogle広告の一番すごいところは”ボリューム”だと思う】

さて、「なぜそこまで伸びたのか」の話をする前に、Google広告についての個人的な考えを書きます。

アプリビジネス(ゲームに限らず)をする人間にとって、Googleのアプリキャンペーンは非常に大きな事業的意義を持っています。
少なくともスマホゲームにおいては、ACが伸びるかどうかが事業の成長・持続を左右しかねないほどのインパクトがあると思います。

そんなGoogle広告は、一般的には「AIがやべえ」みたいな話が先立つことが多いような気がします。
Deep Learningの精度の高さをもって、人間ができないような最適化をしてくれるというところです。

ただ事業をやる側からしたら、極論をいえば、AIが凄かろうがポンコツだろうが、効果がよい広告が良い広告です。
さらに言えば、効果がいくら良くとも、事業に影響がないような小さなボリュームでしか配信できないと意味がありません。

そういう意味だと、効果もさることながら、GoogleのACはボリュームをめちゃくちゃに出せるだけの在庫量を持っています。YouTubeとかGoogle Playみたいな、独自配信面もあります。
単一のスマホゲームタイトルで、月間に1億円とか2億円とか配信できるのって、まあ物凄いことだと思います。

そんなわけで、
・そもそもAIが優秀で効果が良くなりやすい
・在庫量もめちゃ豊富でボリュームが出る

という二点が、Google広告の凄いところですね。

※Google様からは1円ももらっていません。この記事を見たGoogle様が「いい記事書いてくれてるからサービスしますよ!」とか言ってくれたらいいなあゲヘヘ…みたいなのは1ミリくらいあります

【ボリュームもROASもそこまで伸びたのはなぜか】

さて本題です。何をしたのかという話。

まず前提として、ACに入稿するクリエイティブは頑張りました。
ゲーム内キャンペーンのメリットが伝わるように、わかりやすい訴求のクリエイティブを特急で追加しまくったりもしました。

ただ今回は「プロモーションミックス」という視点で考察しておきたいので、以下のポイントで解き明かしたいと思います。

■Google広告が伸びた理由
①LP改善:Google PlayのアイコンやスクリーンショットのABテストを通じて、"CVRを改善"した
②認知強化:TVCMや純広告を中心としたプロモーションでターゲットユーザーの認知を強化し、”CVRを改善”した
③配信面チューニング:入札単価をドラスティックに変更し、配信面の最適化を一気にかけた
④内部KPI改善:キャンペーンと商品強化により課金KPIが改善した

ここから詳しく考察していきます。

【Google広告が伸びた理由:①LP改善】

これについては詳しく書くまでもないですが、広告のLP(ランディングページ)からの成約率(CVR)は、デジタルマーケの基本中の基本であります。

特にアプリであれば、Google Play ConsoleのABテスト機能で簡単に検証できるので、使わない手はないです。
Google先生マジで素敵。
(ここまで書いたらGoogle様も何か…ゲヘヘ)

WEBであれば、Kaizen PlatformのようなABテストプラットフォームを活用するのも有効です。
過去に使ったとがありますが、工数は少なく作れるし検証は簡単でわかりやすいので、めっちゃ良かったです。
(Kaizenさんも何か…(以下略))

CVRが良くなると、当然広告の効率も良くなります。
仮に1クリック100円でCVR1%なら、CV単価1万円ですが、CVR2%なら5千円でいいわけなので、当然の話ですね。

そもそものLPのCVRを最適化するというのは、当たり前すぎて忘れがちなポイントです。

特に、一度「うちはLPのCVR改善はやりきった!!!」と思っている事業であっても、時間の流れとともにCVRは悪化していくものです。

理由は外部環境の変化によるUSPのニーズ低下だったり、単にLP来訪者のリピーター含有率が高くなったことによる陳腐化だったりと色々ありますが、
LPの改善は思い出したときに実行するに越したことはありません。

特に継続的に事業に取り組んでいると、プロダクトのもつ魅力自体がより強化されているはずなので、同じLPをずっと使い続けるというのは事業の停滞を意味しているようなものではないかなと思います。

【Google広告が伸びた理由:②認知強化】

上述のように、CVRが改善すれば広告効果は改善します。

そして、CVRはプロダクトの認知が高まることでも改善します。

よく社内では消費財メーカーの話に例えるのですが、消費財(例えば柔軟剤)の場合、ブランド認知やブランド選好度が高いほうが、商品棚に並んだ競合製品の中から選ばれる確率が高くなります。
ソフランでもいいけど、最近よくCMをみるレノアを使ってみよう、みたいな話ですね。

アプリやWEBのプロダクトでもそれは同様で、需要を感じているユーザーが広告等に接触したとき、認知しているものであるほうが選ばれやすいというのは当然の話ではあります。

例えばあるスマホゲームでの例を紹介します。
ここでは仮に、怠惰な学生が東大に簡単に合格するドラマを体験できるRPG「なんで、おいらが東大に」略して「なん東」というゲームだとします。

TVCMでは以下のような形で、
・「なん東」というブランド認知
・利用ユーザーの声にもとづく便益の訴求

といった構成をとったと思ってください。

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するとCM接触ユーザーは、「なん東」=「なんか本当に面白い東大を舞台にしたRPGだ」という認知をします。

すると、CM接触ユーザーは広告接触時に、高い確率でコンバージョン(この場合はダウンロード)してくれます。

同様にTrue View等でもこういうクリエイティブで認知をとったのですが、
CM接触ユーザーのオーガニックな(検索経由の)流入だけではなく、広告による獲得ボリュームを大きく伸ばすことができました。

広告が伸びた理由は言わずもがな、CVR改善によりCPAが下がり、よりボリュームを伸ばしても許容CPAにおさまるようになったためです。

【Google広告が伸びた理由:③配信面チューニング】

CVRが良くなったとして、AIがしっかり学習して良いユーザーを連れてきてくれなければ効果は良くなりません。

特にゲームのような課金プロダクトだと顕著ですが、そうでなくともプロダクトを事業として支えてくれるユーザーを多く獲得しなければならないわけです。

あるケースでは、少し前まで好調だったACのROASが良くない状況が続いており、CPAはそこまで悪くないにも関わらずROASがついてきていませんでした。

そこで、過去にROASが良かったときと、そうでないときのプレースメント(配信面)を比較してみました。

■ROAS良かった時

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■ROAS良くなかった時

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このように、配信面を比較したところ、明確な差がありました。
ROASが良かった時と比較すると、ROASが良くないときはほとんどの配信がGoogleの所有面(Google Playなど)に寄っており、
ROASが良いときは色々な配信面に広く出ています。
(省略しましたがROAS悪いときは動画もほとんど配信されていません)
※Google Play等の配信面が悪いのではなく、ユーザーのターゲティングが高LTVユーザーに当たっていなかったと推察しています

そこで過去にROASが良かったときの配信面に近づけるのがROAS改善のための必須対応だと考えて、
課金アクション1件獲得するための入札単価を、3日間の間に3倍も高く変更しました。

仮に入札単価が3千円ちょいだとすると、それを1万円まで上げた、というようなものです。
ACのセオリーとして「1日の入札増減は20%以内にすべし」という話があるので、3日間の変更上限はセオリー通りなら1.7倍程度になります。

しかし、どうしてもボリュームとROASを改善したかったため、色々な数値を分析した結果、
この単価変更でAIにとらせる動き方をドラスティックに変えようとしました。

結果としては、冒頭で紹介したCaseのように、大幅な改善ができました。
過去のAIによる学習をすべて吹っ飛ばすような対応で、ROAS改善しボリュームも伸びたということです。ちなみにCPAも下がりました。

これは配信面のチューニングというより、入札戦略の話ですが、大事な示唆を含んでいると思います。
すなわち、「AIに学習機会を与えることで、効果は改善しうる」ということです。

入札単価が低いと、どうしてもそれを守ろうとして保守的になるのは、AIでも人間でも変わりはないようで、
おそらくAIの学習構造が人間と同じように設計されているだろうという仮説を立てたところ、大当たりしたということです。

なお正確に言えばACはユーザーターゲティングであり配信面ターゲティングではないのですが、そのあたりの正確性は割愛します。

ちなみに死ぬほど暴騰リスクがあるので、管理画面には張り付きっぱなしでした。
やる場合は自己責任でお願いします。

【Google広告が伸びた理由:④内部KPI改善】

最後に内部KPIの話ですが、これが一番マーケティングぽいかもしれません。

プロダクト自体の登録初期ユーザーの課金KPIを改善したところ、ACのボリュームが飛躍的に伸びたという話です。

簡単にいうと、キャンペーン期間中に限定販売した商品が登録初期のユーザーによく売れたため、
Googleの課金最適の学習が早くかかり、その分すぐにROAS改善とボリューム伸長が実現できたというものです。

ACの課金最適は、一定期間内に発生した課金の件数が多いほど、学習が早くかかります。
そのため、期間限定商品を購入する人が多かったぶん、一気に広告を伸ばせたようです。

事業には書き入れ時もあれば、閑散期もあるものですが、
書き入れ時にどれだけ売上を伸ばすかが成否をわける大きな要因になります。

そのタイミングで、上記③の施策などを一緒に実施したことで、
「めちゃくちゃ売上がいいから、今のうちにユーザー獲得しよう」
というのをAIが判断してくれるようになった
、ということです。

ユーザー獲得を伸ばそうと思ったら、プロモーションだけでは上手くいかないもので、
プロダクトの改善を含めた総合的なマーケティングが必要になります。

AIに任せておけばそれでよし、ということではなく、
「ちゃんと事業として魅力的な商品を提供すること」
ということそのものがユーザー獲得を伸ばすものであり、
特にGoogle広告においてはその傾向が顕著に出るということだと思います。

このあたり、プロダクトとマーケティング(ユーザー獲得)が分断している組織だと上手くいかないものですが、
それがいかに機会損失を生むものなのかを表している事例だと思います。

【まとめ】

こうしてみると、③についてはGoogle広告という広告商品の独自性に関する話ですが、
①②④については、マーケティング一般論として大事なことを実行しているにすぎない話だと思っています。
つまるところ、プロダクトの魅力の拡大をしたわけです。

実は一番伝えたかったのはその部分で、Google広告の本質は
「都合よく効果だけ伸ばしてくれるわけではない」
ということだと理解しています。

それよりも、高度な学習をするAIと豊富な配信面在庫により、
「本質的なマーケティング活動に取り組んでいるプロダクトの広告成果を最大化してくれる」
というのが、Google広告の本質的な価値なのではないかと思っています。

特に「デジタルマーケティング」という言葉を使うと、②④のような話は分掌外かのような話になることも往々にしてあるのですが、
実際には、デジタルの権化ともいうべきGoogle広告こそが、本質的なマーケティングを後押しする広告プロダクトの代表的な一つであると言えるのではと思う次第です。

まるで提灯記事のような内容を書いていますが、淡々と事実と思うところを書いてみました。
せめて「Google 広告」の検索結果で上位になり、このnoteのPVが伸びることを願うばかりです。

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