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銀座ヤマガタ・サンダンデロでおじさんとの再会

オジサンになると奇跡的な出会いというか面白い再会がある。今回はそんな面白い再会をしたおじさんの話。

私は幼稚園の頃、地元の道場で剣道を始めていた。尚武館という道場で生徒は30名ぐらいだろうか、なかなか活発に活動をしていた道場で、夏には合宿に行き5歳だった頃の私も参加していた。

そんな道場で記念大会があり、学年ごとにトーナメントで争う機会があった。私が小1の頃だっただろうか、決勝まで残り、接戦の末私が勝った(らしい)。生まれて初めて優勝しメダルをいただいた。

あまり記憶にないが、そのメダルは今も実家にあるので優勝したのは事実だと思う。そしてその決勝での相手が今回のお話に出てくる秋田君だ。

その後剣道場が急に移転となり、そしてかなり遠くに行ってしまうというので、事実上生徒はみな解散となった。秋田君もそれをきっかけに剣道をやめたので、それ以降試合を行った記憶はあまりない。

同じ小学校であり、ご近所でもあったので顔馴染みではあったが、一度も同じクラスにならなかった。そして中学もすべて別のクラスだった。地元の行事では一緒だったが、遊んだ記憶はあまり無い。

ふざけた私とは違い、彼は勉学も優秀で生き方がスマートだった。でも嫌味がなくて人気もあった。彼の悪口を言っている人を見たことが無い。

そんな彼は有名な都立高校に進みその後料理の道を選んだ、という風の噂を聞いていた。そして20年振りに再会したら立派なシェフになっていた。

イタリアンのスパークリングワイン。優しい味わい。


一時彼は下北沢でシェフをしているという噂を聞いた。その頃私は自分自身や家族を養うことで精一杯だったので、彼の職場に行くことは無かった。そして彼は別のお店に移ったと、これまた風の噂で聞いた。

ホッとする突き出し。ズワイ蟹のクリームクロケット

そして2010年に同級生の親友小糠君が亡くなった。地元の友達数名に連絡をし葬儀に向かった。これがきっかけで同窓会を開くことになって、懐かしいメンバーに再会した。100名ほど集まった中に秋田君はいた。爽やかな笑顔は中学時代と変わらない。でも凛とした雰囲気があった。

山形の白ワイン(シャルドネ)

同窓会で再会し、たまに会うようになった。その頃彼は表参道で働いていて、それはそれはゴージャスな世界にいた(ように見えた)。持ち前のスマートさで会社の中心となり切り盛りしていた。物凄く大変そうだったが、会社の愚痴は一切こぼさないのが秋田流だろう。でもちょっとハードワーク過ぎじゃないの?と、私は何となく感じていた。

ワクワク!ホワイトアスパラガス!

そしてこのコロナ禍に入る少し前だろうか、銀座にある有名なレストランに移ったと耳にした。行こうかと思った頃から緊急事態宣言やらマンボウやら、中々行く機会を逃していた。

イタリアの樽熟白ワイン

山形にある有名なレストランを経営する奥田シェフのもとで腕を振るっている。同級生からそう教わり、行きたい気持ちは高まったが、これまた自分達の会社も大変なことばかりで。ゆっくり食事をする気持ちになれなかったことも多く、中々行けなかった。

仔牛とジェノヴァの食文化

なんだかだらだらと言い訳じみてしまったが、今年の2月にこそっと行ってみた。何だか照れくさかったので、何も言わずに。

山形の白ワイン

ソムリエでもある店長さんの素晴らしいサービスと美しいお料理を堪能し、最後に料理長に挨拶をしたいです。呼んでくださいと言って、ちょっとしたサプライズをした。調理場から出てきた彼は嬉しそうにしてくれた。何だよ言ってくれよと。

本日のメニュー

そんな訳で数年振りに彼の料理を味わえるという目標を達成し、また伺いたくなった。今度は違うお料理も頼んでみたい。

山形のピノノワール

そして先日また伺った。今度は前日に一休という予約サイトを通じて席を抑えておいた。

FromTheCladle。太いパスタとなめらかなトマトソース。燻製リコッタチーズがけ。

前置きが長すぎたが、今回のお料理はとても美しく感動した。まずは超極細のパスタを衣に纏ったズワイ蟹のクリームコロッケに度肝を抜かれる。ジュニパーベリーと黒トリュフの香りなんかも添えられてる。精密な中に大胆さがあるお料理であった。

桜鱒のソテー

その後も今回の写真の通り、ホワイトアスパラガスのソテーや仔牛のお料理。そして濃厚なトマトソースを使った太くてもっちりしたパスタ。これは食べたら、脳が酔いから覚醒モードに変わったほど。

ソムリエさんのセンス抜群

桜鱒のソテーも銘柄豚のグリルも素晴らしい火入れ。褒めてばかりで、お店の回し者のように聞こえるかもしれないが、時間が経っても感動を覚えているほど素敵なお料理達だった。

そしてペアリングをお願いしたワイン達がピッタリとお料理に寄り添っていた。イタリアと山形のワインを上手に合わせてくれた。店長さんでもあるソムリエさんのセンス。そして秋田シェフとの信頼関係を感じるマリアージュであった。

庄内豚のグリル(アロースト)

初めてあったのが剣道場なら、彼と出会って45年が経っている。そんなに深い付き合いはしていないかもしれないが、お互いをずっと覚えていて、こうしてお料理をいただける時間が今ここにある。そう思ったらすごくまた別の意味で感動をした。生きてきて良かったって。

お芋を使ったブリュレ。控えめに言って最高。

学生時代も社会人時代も今の仕事に入ってからも、まあ大変なことが多かった。もちろんその中にも楽しいことは沢山あったのだけど。こうしておじさん同士が再会して、今度飲もうか?って話が出来るの、控えめに言ってこれ最高だなって思った。

締めのお菓子

今度会ったら昔は語ることの出来なかった、これからの人生を、そして彼の頭の中を覗いてみたいと思います。50年も生きてると若い時とは違った面白いことがあるんだなー。今日はそんなおじさんの話でした。最後までお付き合いくださりありがとうございます。

秋田和則シェフ。オジサンになっても爽やかな奇跡の人。

追伸。食事が終わって最後に秋田シェフは挨拶に来てくれました。『この人は面を狙うと見せかけてコテで一本を取ったんだよ』って話してました。どんだけ記憶力も良いんだよ!あんたやっぱり天才だね!と心の中で呟きました。おしまい。

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