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経セミ・2020年の「特集」を振り返ります!

2020年も残すところあとわずか(投稿日は2020年12月28日です!)。今年は本当にいろいろなことがあって、なんだかあっという間に過ぎてしまいました。

かくいう経セミ編集部も、在宅勤務が恒常化したり、インタビューや対談・鼎談の収録がオンライン会議ツールを使ったものになって、掲載する写真をどうしようかと悩んだり……。印刷所や製本所とのやりとりをする製作部門や、流通・営業部門とともに、毎号きちんとお届けすることができ、たくさんの反響もいただきました。本年も、本当にありがとうございました。

……と、前置きはここまでにして、このnoteでは2020年に刊行した『経セミ』の特集などを振り返っていきたいと思います(2019年以前の経セミ・バックナンバーは【こちら】からご覧いただけます!)。なお、連載については別の投稿で振り返る予定です。

■2020年の特集ラインナップ

経セミは隔月誌なので、年間6冊の発売です。2020年は以下のような特集ラインナップをお届けすることができました。なお、現在下記の特集は「経セミe-book」として、550円(税込)でいつでもお求めいただけるようになっていますので、ぜひご利用いただけたら嬉しいです(今年は、幸いどの号も大変ご好評をいただき、雑誌本体自体は多くが現在品切れになってしまっています…)。

「貧困削減のこれまでとこれから」2020年2・3月号
 インタビュー:グローバル化する世界における経済学者の役割とは……ジョセフ・スティグリッツ×聞き手:島田剛

「実践で活きる経済学」2020年4・5月号
 鼎談:経済学でキャリアを創る……西尾昭彦(世界銀行副総裁)×泉敦子(公取企業結合課)×渡辺安虎(東大教授)

「ナッジで社会は変わるのか」2020年6・7月号
 鼎談:社会で活きるナッジの手法……竹内幹×星野崇宏×山根承子

「経済論文の書き方[実証編]」2020年8・9月号
 対談:ISFJの活動から見る 経済論文を書くコツ……赤井伸郎×千田亮吉

「変貌する経済学:実証革命が導く未来」2020年10・11月号
鼎談:実証革命が切り拓く、経済学の新地平……奥井亮×伊藤公一朗×依田高典

「ネットワーク科学と経済学」2020年12月・21年1月号
 鼎談:ネットワーク科学はどのように経済を読み解けるのか?……鬼頭朋見×小林照義×増田直紀

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■経済学の実践的な活用に向けて

全体を通じて印象深かったのは、経済学の実務・実践への流れを意識した内容が多かったなぁということでした。

4・5月号の「実践に活きる経済学」はそのものズバリで、国際機関や行政、民間企業で経済学を使って実務・ビジネスを行ってきた皆さまによる鼎談ということで、世界銀行副総裁の西尾昭彦さん、当時米国のコンサルティング会社を経て公正取引委員会に所属され、現在は東京大学エコノミックコンサルティングの泉敦子さん、アカデミックキャリアからアマゾン・ジャパンへ移籍して現在は東京大学の渡辺安虎さんに「経済学とキャリア」に関するディスカッションをいただきました。また、本号の各記事でも現場で経済学がどう応用されているか、という記事で構成しました。

特集= 実践で活きる経済学(4・5月号)の目次:
【鼎談】経済学でキャリアを創る……西尾昭彦×泉敦子×渡辺安虎
テック企業は経済学をどう使う?……安井翔太(サイバーエージェント)
人と組織を経済学で活かす……大湾秀雄(早稲田大学)
マーケティングに活かす経済学……天野友道(ハーバードビジネススクール)
コーポレート・ファイナンス理論と企業価値評価の実務……鈴木一功(早稲田大学)

他の号でも、多くの特集で経済学の社会での活用や実践面に触れられる機会が多かった1年でした。「貧困削減」を扱った2・3月号は2019年ノーベル経済学賞と偶然テーマが重なりましたが、RCTによる社会実験も含めて開発現場での実践が強く意識されていましたし、「ナッジ」を扱った6・7月号も、政策やビジネスでの活用をたくさん扱いました。もちろん留意点などへ配慮した研究も紹介されています。

「実証革命」に焦点を当てた10・11月号、「ネットワーク科学」を扱った12・1月号も、学問的な発展や意義はもちろん、実務での活用も話題になりました。学問的な発展と言う意味で、この2つの号(と次の2021年2・3月号)の鼎談・対談で、「ルーカス批判」が立て続けに登場したのが印象深いです。この辺りからの議論からの反転は、特に理論・実証面での経済学のパワフルさが感じられるかもしれません。

2020年のノーベル経済学賞でも、オークション理論の発展と実務への応用がクローズアップされるきっかけになりました。12・1月号の巻頭インタビューでは、実際に不動産オークションで経済学を活用している今井誠・デューデリ&ディール取締役にご登場いただきました。

その今井さんへのインタビューのロングバージョンを、以下でご覧いただけます! 今井さんの経済学との接点、同社チーフエコノミストである坂井豊貴とのご関係や、実際の経済学での活用、さらには今井さんが主宰する「オークション・ラボ」に関することなどなど、たくさん語っていただいています。

■「論文の書き方」企画!

一方、学習・研究に役立つ企画も提供したい!ということで、「経済論文の書き方」というコンセプトの特集企画も組みました。

これは8・9月号での提供となりまして、学生団体による論文コンペ「ISFJ」に積極的に参加される先生方を中心に、論文執筆のノウハウや心がまえを解説いただくという、経セミにしては少し変わった企画でした。noteでも、以下のようにお役立ち情報をまとめて投稿しました。

そして、おかげをもちまして、この号は大変好評で、すぐに完売してしまいました。また、「理論編」「実験編」なども企画したいなあと思っていますが、果たしてどうなるか…。

■2021年は??

そういえば、この「経セミnote」自体も、2020年の4月頃からスタートしたのでした。もともとの意図は、緊急事態宣言で書店さんも営業できず、Amazonでも書籍・雑誌が買いにくくなるということで、その他のサービスをまとめて紹介するために作ったのですが、

やってみると意外に便利で、いろいろ特集や連載のおまけ情報などをつらつらと投稿してきました。ちなみに、今年の投稿の閲覧数を多い順に3つ並べると、以下の通りでした(途中まではずっと、遊びで投稿したMATLAB記事が1位でした…)。

2021年はどんな特集を組んで以降かな~~と悩み中ですが、2・3月号は現在準備中で、4・5月号も確定していて年明けに鼎談を収録予定です!

最後に、少しだけこれらをご紹介したいと思います。

まず、年明け1発目となる【2021年2・3月号】は、以下の特集を予定しています。

特集「マクロ経済をミクロの視点で考える」2021年2・3月号(2021年1月27日発売予定)
対談「多様性に目を向けたマクロ経済学の可能性」……北尾早霧×向山敏彦
家計間の異質性を考慮した金融政策分析……須藤直
資産・所得の格差はどこから来るのか……楡井誠
少子高齢化と社会保障の課題にどう取り組むか……西山慎一
経済ショックは労働市場にどのような影響を与えるか……宮本弘曉
企業のダイナミクスとマクロ経済……及川浩希

実は、バックナンバーを見返してみると、マクロ経済学を軸に据えた特集はかなり久しぶりでした。

この特集では、ミクロデータに基づいて家計や企業等の異質性(多様性)と、それらがどのように社会を構成しているかを考慮したうえでマクロ経済学を捉えるアプローチ(ヘテロマクロ)の紹介を行います。このアプローチをとることで何がわかるのか、何がうれしいのか、といったモチベーションから、重要な経済問題を例にとったさまざま分析例を紹介しつつ、マクロ経済学のフロンティアの一端が覗ける内容になっていると思います。ぜひ、ご期待ください!

対談のトップページはこんな感じ:

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扱うテーマは、以下の通りです:

なぜマクロ経済学に多様性が必要か?
経済を読み解くカギは多様な人々の分布
マクロ経済学を支えるミクロデータ
(調査データから業務・行政データまで)
精緻な分析を支えるコンピュータの進歩
政府が提供する保険の役割
労働市場の二極化への対策
(ベーシックインカムは解決策になりうる?)
少子化問題と女性の働き方
おわりに
(マクロ経済学を学ぶ方々へ)

【2021年4・5月号(新年度号)】は、以下のような構成で予定しています。鼎談は、一橋大学の宮川大介先生と、共同研究を続けておられる日経新聞社でPOSデータの業務に携わる久慈未穂さま、東京商工リサーチの柳岡優希さまによるディスカッション。いろいろな「データ」の収集・整理・活用と経済分析について真正面から扱った特集を予定しています! まずは年明けの鼎談収録が楽しみです><

特集「経済学でデータを活かす(仮)」2021年4・5月号
鼎談:「データ×経済学の可能性」……宮川大介(一橋大学)×久慈未穂(日本経済新聞社)×柳岡優希(東京商工リサーチ)
ニュース読み解くマクロ経済……新谷元嗣
データで見る雇用の格差……勇上和史
ビッグデータで人々の行動を読み解く……水野貴之
行政データで明らかにする教育の効果……田中隆一
公的統計の課題と可能性……北村行伸

■おわりに

というわけで、簡単ですが2020年の経セミ特集を振り返ってみました。また、簡単に2021年の前半の特集もすこしだけご紹介。

本年は、皆さまにとって大変な1年だったかと思います。一方で、科学の力も再認識できる1年だったようにも思います。本年も多大なご支援・ご愛読を賜り、誠にありがとうございました。

新年も、より良い誌面作りに努めて参りたいと思いますので、ぜひとも引き続き、よろしくお願いいたします。

サポートに限らず、どんなリアクションでも大変ありがたく思います。リクエスト等々もぜひお送りいただけたら幸いです。本誌とあわあせて、今後もコンテンツ充実に努めて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。