ポケモン剣盾のはなし~挫折の重要性と世代交代~

クリアしたゲームについて、感想がたまっている蛍石です。
あちゃ~~。
あと残ってるのは『Detroit』(ps4)と『off』(フリゲ)、デルタルーン体験版かな。

今回は表題の通り、ポケモンソード&シールドについて思うところを書いていきます。
主に「ここが良かったよお!!」という叫びと、「これはこうじゃないの??」という個人的な考察になります。

あ、エキスパンションパスによる拡張を控えている発展途上のソフトなので、あくまで現時点での感想になります。
またネタバレありのため、プレイ済みの方推奨の記事となります。

それでも大丈夫!という方はスクロールお願いしますだよ~!





………………………

①キャラがいい!!

まずこれに尽きます。
個性豊かなジムリたち、愛らしいポケモンたち。
皆様どのジムリ推しですか?この話題でごはん三杯食べられる。

特に描かれ方で感動し、膝を打ったのはビート、ネズ、ホップの三人でした。
以下は彼らへのラブコールと考察です。


【ピンク師弟】
⇒ビート!!!!!!!君の事が好きだ!!!

選ばれしエリートと自称し、自分ただ一人がローズ委員長の寵愛を受けるにふさわしいと鼻にかける「いけすかないジャリンコわたあめ」

初っ端から偏見(視野の狭窄)と暴走の片鱗を見せていた彼に、どことなく危うさといとおしさを感じていました。
スゲー好き、人間臭くて。
さてこの手のライバルはどんな風に絡んでくるんだろう?とはらはらドキドキしながらプレイしました。

で。
案の定やらかしたビートくんは、ローズ委員長からお役御免の三行半を突きつけられます。
まあホップを虐めたし?
嫌みな奴だし?
と一瞬思わないでもなかったけど、彼への風当たりについては「哀れだな」と。
彼はライバルの中で唯一、負けではなく、見放される、失望されるという形で挫折を味わうこととなりました。
これは、かなり、惨め。

ローズ委員長からの頂き物であろう、身の丈にあわぬブカブカの金時計。
身寄りもなく、手本になる大人もそばにいない。
ビートくんの威嚇行動は孤独感と表裏一体なんだなと誰もが察するでしょう。
そんな中で、唯一の支えであったローズ委員長との繋りを失うのです。

自分は物語の中盤で退場となった彼をずっと気にしていました。
どう足掻いても主人公になれない、王道ルートが用意されていない彼のことを。

ビートくんへの救いの手はポプラさんが差し出してくれたのですが、この展開にはとてもぐっときた。
ポプラさんは言うのですね。
「人間深みがなきゃね」と。
これに救われたプレイヤーも一定数いるのでは?(私のことだ)

ビートくんのことを、自分は冒頭で「いけすかないわたあめ」と言いましたが、このいけすかなさこそ「人間味」「深み」である。
短所と長所は紙一重。捨てる神あれば拾う神あり。適材適所。
ローズ委員長は不適切と判断した彼が、ポプラさんには必要だった。(それこそ駆け寄って肩を掴み目を剥くほどに!笑)
その事実は「よく考えたら当たり前のこと」としてドライでさらりとしていつつも、優しい色を帯びています。

ビートくんが救われていく様、特に斜に構えたモーションから、闘志を宿したモーションに変化する様にどばっと涙腺が緩みました。
ええ、緩みましたとも。

切磋琢磨しあうライバルに、彼がようやくなり得たこと。
もとい、世間からあぶれていた彼に居場所ができたことに心底嬉しく思いました。

こんなライバルの描かれ方、これまでなかったじゃんか。
ポケモンの新作は「ちゃんと人を描いている」「主人公をさせられながら、私たちはドラマを観ている」とはっとさせられた瞬間でした。

ていうか、意地悪ババアと意地悪孫の組み合わせほんと好きなんだ…。
彼らのお陰でピンクが好きになっもん。
とにかく、あれだ、ポプラさん長生きしてください。
(16歳と答えられなかった節は失礼しました…)


【スパイク兄妹】
⇒ネズさんのコンサート行きたいよおお!!!!!!!チケットかわせてくれよおお!!!!

パンクなあくタイプジムリ、ネズさん。
彼の妹マリィは主人公のライバルの一人です。
物語を進めていくと、彼ら兄妹は「世間から取り残された地元を復興する」という使命を負っていることがわかります。

重いなあ。
実に重い。

時に、ネズさんはパンク系シンガーです。
パンクってなに?というのを簡単に説明すると(メタルロック好きの知識が火を吹くぜ)、
まずロックからパンクが派生した後、同様にロックからメタルが派生したとされます。

パンクの定義、モットーは「反権力主義」「世間への反発」「地元愛」です。
演奏においては技術よりも、どれだけ心を乗せられるかが重要でした。
(対してメタルは卓越した技術で魅せることに重きを置くのですが、それについてはここまでとします)

・ジムリの集まりをボイコットするネズ
・ローズ委員長の危機にゲス顔をするネズ
・スパイクタウン愛溢れるネズ
・歌詞に心情(本音)が出やすいネズ

ね????
超パンクでしょ??????
尖った装い、皮肉っぽくも愛情深い言動、世間に要求を燻らせている内心、それらが一目でわかる
本当にデザインも描かれ方も秀逸。

スパイクタウンは残念ながら、ダイマックスできない土地柄世間からは不遇の扱いをされているのよね。
ネズさんはジムリなので、自分が頑張らないとと張りつめつつも、すでに限界だとわかっている。
だからこそ、マリィが街を出てチャレンジャーとして活躍することを望んでいるわけで。

切ないのは、エール団(ジムトレーナーたち、すなわちタウンの人たち)ですら、マリィを応援した方がいいとわかっていること。
閉鎖されたタウンで「ネズさんは大丈夫しか言わない」と彼らは嘆きます。
その心は「ネズさんは頑張ってるけど、もうダメじゃないか」「マリィに賭けよう」という諦めでしょう。

ネズさん自身も「おれはダメなやつだから」と自虐的ですし、世代交代を意識しているわけですから、エール団の行動を表立って諌めはしないわけです。
プライドより地元愛を取り、現実的にかつ客観的に行動している彼は正に「哀愁」の二つ名がよく似合う。

つうか、この、
兄貴を信じてるからチャレンジャーをやってチャンピオンを目指すマリィ
妹を信じてるから腐りきらず世代交代を信じて待つネズ
という関係よ…。

互いを思い合ってる兄妹だからこそ、スパイクタウンの閉ざされたシャッターは開かれたのだと考えると、また視界に水がたまります。
ほんと、ここら辺のバランス感覚が素晴らしい。

背景の事情には重いものがあるけれど、ひたすらに優しい兄妹の関係が見れて、もう、めちゃくちゃ好きです。
スパイクタウンの商工会にお金を落としたい。まじで。
いくらでも納税するからグッズだして…。


【ホップ】
⇒ラスト、ライバルのホップ!!
もうね、彼については色々思うところがある。

お役立ち情報キャラか?と思うほど親切にしてくれるご近所さん。
いつでも明るく、誉めてくれ、行く先々で待っててくれる。

赤緑のグリーンが頭にあるせいか、ライバルってこんなんでいいんか?とやや頭がバグってしまったのは置いといて。

ホップくんは「チャンピオンのダンデを尊敬し、目指す弟」「ポケモン歴先輩の男の子」なわけだけど、
これが「分析力に長け、人に教えるのが好きなトレーナー」という博士の道に繋がっていく過程がうまい。
知識を他人に与えることを惜しまない性格や、ポケモンがとても好きなところ、他人を分析するのは得意だけど自分のことでは悩みがちなところ、どれもが彼の決断を支えている。

彼はビートくんに敗北したあと、バトルの意義や目的を見つめなおし、生まれ変わって挑んでくる。
そしてムゲンダイナ騒動では心強いバディとして活躍してくれる。

敗北しても腐らなかっただけでなく、何かと応援してくれる、そばにいてくれるというライバル像に心打たれていたため、トーナメントで彼を打ち負かすことにほとほと気が滅入りました。
主人公が勝たないと、話が進まないんだよゲームだから…;

ホップくんの立ち位置の本質が段階的に明らかになっていく様、すなわち「ポケモンプレイヤーがストーリーに失速感を覚える、不要な解説要員」が、「親切で心優しい、そして悩み多きライバル」であったこと、そして「自らの特性を活かして勉学の道へ進むライバル」としてホップ、ステップ、ジャンプする様
はとてもドラマチック
でした。
一緒にチャンピオンまでの道のりを走ってくれるのが彼で良かった。

切磋琢磨しあう、成長を喜びあうことがライバルの意義とするならば、ホップくんこそ「一番のライバル」に他ならないなあ、とプレイ後しみじみしました。

気遣いやさんだし、絶対いい男になるよ、うん。間違いない。


②世代交代の物語

ここで、剣盾と赤緑と比べた上で感じたことを、物足りなさという観点から列挙してみる。

○大人の事情に首をつっこめないもどかしさ
(剣盾でも遺跡の謎を追ったり、トラブルを解決したりがしたかった)

○絶対的悪がいないという物足りなさ
(ロケット団ファンなのでどうしても贔屓になるが、やはり「悪を倒すぜ」という赤緑の爽快感はすごかった)

○田舎育ちが英雄へ、の仰々しさ
(赤緑は英雄視と無縁であり、世界を救ったりしないところが等身大だった。ほの暗い都市伝説に挑む程度の親近感ある冒険がミステリアス感をもたらしていたなぁと懐古)

思い入れのある赤緑との比較だからイーブンでないところがあるかも。
まあそこは脇に退けるとして、近年のポケモンについては、現実のテクノロジーの発達によって表現できる領域が広がったことが世界観に影響してるんだろうなと。
田舎物語の箱庭感がグローバル化され、スケールが巨大化していった。リアリティを指す場所が、点から面になった。
それから各キャラクターの表裏、深みを描けるようになったことも、次世代ポケモンから分かりやすい絶対悪が退場した理由なのかな。

毎回反社を成敗してたら某龍如みたくなっちゃいますし。
(それはそれでやりたい)

思えば
剣盾の物語は「古い者が新しい者へ席を譲ろうとする話」でした。
あるいは、「席をつかみ取りに行く物語」

剣盾の大人たちは自分なりの限界や終着点を見据えており、後継者を探していました
ソニアやホップは誰かの後継者になる道ではなく、新規開拓の道を選択する「つかみ取り組」なのですがさておき。

ここで触れなければならないのがローズ委員長。

彼なあ。
お気楽ワンマン社長かと思ってたら、神の視点から世界へ博愛の精神を向ける怪物だったのよね。
底の見えない、おっかない人だった。

けして悪役なのではない(はず)のだけど、世代交代がうまくいかなかったんだよね。
そもそも彼の思考についていける人物なんて物語のどこにもいないのである。
側近のオリーヴさんは優秀だし、ダンデだってこれまで協力関係にあったけど、二人ともローズ委員長の後継者というには器の色も形も違いすぎる
ことダンデとの関係については、トーナメント開催とエネルギー計画がブッキングしたことで折り合いがつかず破綻してしまったわけで。
仮にダンデが「じゃあトーナメントを延期して委員長の計画を優先しましょうか」と言ったら、おそらくローズ委員長は暴走しなかったのではなかろうか。
(これは明らかにバトルモンスターダンデを相談相手にした委員長が悪いと思うけどな!トーナメント延期なんてするわけないもん。いくらギリ後継者判定があったとはいえ)

ローズ委員長の暴走は、「世代交代を失敗するとこんな風になりますよ」「理由はどうあれ、長く居座る古参こそが未来を潰すのだ」という皮肉がたっぷり込められた演出だったように思う。

明らかに意図してるよね。
メタ的な意味でも、内容的な意味でも、あらゆる点を含んでバトンタッチが行われた今作の、託されたものとしての気合いが透けてみえるよう。

プレイ後の感想は人それぞれだと思いますが、概ね是とする声が大きい気がするのは流石ポケモンよねえ、と。

自分はとっても面白くプレイいたしました。
そして、今後のポケモンシリーズへの期待を大きく膨らませた次第です。


③挫折とは、勝利とは


今回の主人公は「英雄たれ、チャンピオンたれ」と背中を押してもらう形での冒険を強制されます。

主人公の挫折は所詮「やり直しの効く敗北」でしかない。
いくら負けてもリセットできるし、寄り道もし放題。
ではプレイヤーはどこで挫折を味わうのかといえば、ライバルたちの追体験で、なのです。

ホップは兄(理想像、目標)との離別によって
マリィはチャンピオンになれないことで
ビートはローズ委員長から見放されることで

それぞれ悩み、心を折って旅をします。
一方の主人公には勝利が約束されており、ストーリー上では敵なし。目の前が真っ暗になって、少し前に戻るだけ。
実は「勝利」のバリエーションより、「敗北」「挫折」「再起」のバリエーションの方が圧倒的に多く、長いのよ。
これに気がついたとき、なんて丁寧なゲームだろうと舌を巻きました。

主人公視点でのみ旅をしながら、オムニバスゲームをしているかのような充実感が得られたというか。

華々しい勝利だけでなく、敗北や挫折といった経験こそが道筋の緩急を増やし、面白みを添えるのだと教わった気分です。

悩んだっていいじゃない、人間だもの。

そんな某詩じみたメッセージに背中を押されることとなった作品でした。

すっごい楽しかった~~!!!
エキスパンションパスが待ち遠しいよお~!!!!!


【おまけ】


ダンデのリザードン!!!
ムゲンダイナから主人公とホップを咄嗟に守ってくれてましたね。
かっこいー!!!!!ってなってしまった。
胸キュン!!!!

あとイギリスライクな街並みが好き。
BGMも軒並み良く、手に汗握るバトルができた。
ダイマックスも面白い。キャラクターの、大きくなったボールを投げるしぐさが好き。みんなポケモン大事にしてる!とわかる投げ方してて。メロンママの投げ方~!!


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