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それでも私は手紙が好きと大声で言いたい

今日は嬉しいことが続く日だった。

まず一つ、メルカリで頼んでた8mmフィルムのビデオカメラが届いた。これでいつでもエモい映像を撮ることができるし、憧れの昭和70年代をお手元で再現できる。撮った映像をYouTubeにのせたら、それが「オシャレすぎる動画」特集に偶然載ってしまい、急に映像制作の若き天才としてもてはやされる準備はもうできている。

2つ目は、シンガーソングライターの友人と楽曲制作の約束をしたこと。最近ハマっているシティポップのテイストを盛り込んだ溢れるセンスが滴り落ちて止まらなくなってしまう楽曲が完成し、2020年のヒットチャートを席巻した香水をも凌駕するバズりをみせ、「ニート東京」のオファーが来る準備はもうできている。

3つ目は、パレスチナの友人から小包が届いたこと、だ。

3つ目が一番あっさりした書き方をしたのは、本当は3つ目に一番思い入れがあるからだ。いわば、ツンデレである。

あっさりといえば、友人と「ゆったり感」というお笑いコンビを真似して「あっさり感」というコンビでお笑いやりたいね、という話をしていたことがある。

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「はいどーもぉ、あっさり感ですウ、ハイッ、今日はね、お客さんの笑いも、あっさり、しているということで、ね、やっていきたいと思うんですけれども」という掴みだけは固めたのに、その後あっさり感はその場であっさり夢に散った。そんな話はどうでもいい。

パレスチナの友人から「小包を送った」というメッセージが届いたのは8月の半ばのことだった。二週間もすれば着くと思う、という彼女の言葉を受け、毎日楽しみに郵便受けを覗きに行ったものだ。

そして、今日、遂に「パレスチナから郵便届いたよ」と家族が嬉しい報告をしてくれた。帰宅すると白い紙に友人の独特の筆跡で私の名前と住所が記されてあった。うん、確かに彼女の筆跡だ、と幾度となく留学中にメッセージを書いてくれた彼女のことを思い出し、嬉しくなった。

すでに彼女らしさを感じる小包を早速開けてみることにした。白い紙(?)に梱包されたその小包。中身がやっぱり気になる。「中身」というのは隠されるほどに、その輝きが増す。かつて、大人の雑誌の袋とじの中身を見ようと必死になりすぎて、バターを塗って炙れば中身が透けるという伝説を実行した少年がいたという話を聞く。それくらい、隠されたものの中身は気になる。私も、今日付でその気持ちを味わった。少年よ、大志を抱け。

開封作業に当たった私だが、おかしいことに全然中が見えてこない。その包みは知らない構造で梱包されていた。文字で例えるのが困難な巻かれ方をしたその包みは、開けられたという手応えが得られないパレスチナの伝統技法(知らないけど)を用いた包まれ方だった。彼女はムスリムなので、ヒジャブを巻いているのだが、ヒジャブの巻き方も独特だったのを思い出した。あいつはきっと、ヒジャブ式梱包を取り入れたに違いない。これがメルカリなら「梱包が開けづらく残念でした。」のコメントと低評価を押されるぞ、と遠いパレスチナに想いを馳せつつ、私はやっとの思いで包みを開けた。

中に入っていたのは、アラビア語で私の名前が書かれたキーホルダー、なぜかエルビスプレスリーの栞、お手紙、そしてポストカード(?)だった。

4つ折りにされたポストカードをおもむろに手に取り、裏返してみると13歳の時の彼女のイキリ顔の写真だった。

センス。

私とその場にいた姉は激しい笑いに襲われた。

私の知る通常のポストカードとは、その国の風景写真だったり手書きの味のあるハガキであって、過去の己のイタ写は「ハガキ」の概念をアップデートする全く新しいものだった。

肝心の手紙は、実に真心がこもった嬉しいもので、すぐそばに彼女を感じることすらできた。

ひとしきり小包の中身をチェックした私は、異国の地に良い友達を持った喜び、留学への懐かしいあの日々にエモい気持ちをたわわにしながら、小包の入っていた元ヒジャブ方式梱包に使われていた紙を裏返した。

ハラリ。

くるり。ではない。この感触。上海蟹食べたい、あなたと食べたいな、ではない、この舞うような確かな感覚。

中にはまだ何か入っていたらしい。

そして私の目に入ったもの、それは

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コレだ。

⁉️😅🤦‍♀️・・・💡


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いっけない、戸惑いすぎて、つい、絵文字で気持ちを表現するグローバルな手法をとっちゃった⭐️

ほうきの先のよく分からない枝の端。それしか説明がつかない。

もしかしたら、今これを読んでくださっている数少ない読者の方は、間違って混入したものだと思うかもしれない、否、ご丁寧に二本入っていたところから推測するに、これは確信犯だ。

私の中に大いなる謎と笑いを遺し、パレスチナからの梱包を開けるという本日付のビックイベントは無事に終了した。

これだけSNSの発展した時代である。

当然のごとく彼女ともメッセージのやり取りはSNSが主流だ。時にボイスメッセージでお互いの声や現状を発信しているものの、やっぱり手紙はいい。

筆跡、文字制限のない手紙の内容、梱包のコンテンツ、その全てに「その人らしさ」が全開に現れ、すぐそばにその人を感じるような気持ちにさせてくれる。それはやっぱり手紙の凄みだと思う。手紙を待つその時間すら愛しくてたまらない。焦らされるほどに好きになる、それが人の心理でしょう。

しかし、ガラパゴス手法でこれだけ笑いを提供してくる友人への返信のハードルは鬼ほど高い。

私もその辺にある秋の新作の稲穂から出た米でも梱包しようかナ…


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