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MBAでの学び⑩「ビジネスは再現性に乏しい」

経営学はビジネス界における中心的な学問分野ですが、自然科学のように、一貫した結果が得られるわけではありません。

私は元々理系の背景を持っており、解答が明確でない分野には苦手意識があります。

それでもMBAを取得したのは、社会科学でも一定の理論や再現可能なモデルを構築できるのではないかと考えたからです。

この記事では、社会科学における再現性の問題と、経営学を学ぶ価値について考察していきます。

自然科学と社会科学

自然科学と社会科学は、それぞれ異なる対象を研究する学問領域です。

ただし、共に世界を形作る重要な役割を果たしています。

また、どちらも公務員試験の教養科目でもあるので、どのような違いがあるか理解している人も多いかもしれません。

簡単に自然科学と社会科学について説明します。


自然科学(Natural Sciences)

自然科学は自然界の法則を理解するための学問で、物理学、化学、生物学などが含まれます。

これらは、自然現象の原因と効果を明らかにし、予測可能なモデルを構築するのが目的です。

実験、観測、数理モデルなどを用いて仮説を検証し、結果の再現性と客観性によって評価され、方法論に基づく研究が継続的に行われます。


社会科学(Social Sciences)

社会科学は人間の社会的行動や社会構造を研究する学問で、心理学、社会学、経済学、政治学などが含まれます。

人間の行動や社会システムの動きを理解し、改善の知識を提供することを目指しています。

調査、インタビュー、ケーススタディ、統計分析などを通じてデータを収集し、パターンや原因を解析します。

ただし、変数が多く、コントロールが難しいため、結果の標準化には限界があります


再現性の問題

再現性とは、ある実験や研究を同じ方法で繰り返した際に、同様の結果が得られることを指します。

科学的な研究においては、この再現性は非常に重要で、研究の信頼性や有効性を評価する基準の一つとされています。

再現性が高いと、その研究結果が偶然の産物ではなく、信頼できるデータや理論に基づいていると世の中で理解されます。

自然科学と社会科学の再現性に関する違いは、それぞれの学問が扱う対象の性質に基づいています。

自然科学が扱う物理や化学の現象は比較的一定の法則に従い、再現性が高いのが特徴です。

これに対して、人間の行動や社会構造を研究対象とする社会科学では、その性質が複雑で予測が難しいため、再現性が容易ではありません


自然科学の再現性

  • 法則性と一貫性
    自然科学では、実験による観察から得られる結果は、条件が同じであれば一貫した結果が期待できます。例えば、物理法則や化学反応は、同じ条件下では同じ結果を再現します。

  • 実践的な応用
    自然科学の発見は技術や医療など、具体的な応用が可能で、日常生活に影響を与える製品やサービスが生み出されます。


社会科学の再現性

  • 変数の複雑さ
    社会科学では、個人の意識や感情、文化や経済状況など多くの変数が絡み合うため、完全に再現するのが困難です。そのため、研究結果の一貫性を保証するのは容易ではありません。

  • 理論的な枠組み
    社会科学は「理論上、そうなる可能性が高い」ということは示せますが、実践で応用できない場合が多いと言われています。ただ、投資の意思決定や経済予測など、間接的ながら実践的に応用されるケースもあります。


経営学は学ぶ価値があるか?

では、再現性に乏しいとされる社会科学の一分野である「経営学」は、学ぶ価値があるでしょうか。

私は「再現性の問題は、目的と応用の範囲を理解しておくべき」と考えます。

経営学は、組織が直面する複雑な問題に対処するための理論やビジネスモデルを、一定レベルまでは提供します。

しかし、確実性の低い社会科学の理論を、実践でそのまま使用しても成功するかどうかは分かりません。

この社会科学分野における不確実性を理解しているかどうかこそ、重要ではないかと思います。

ただ、残念なことに理解していない人たちは多数存在します。


ビジネス書にそのまま飛びつく愚かな人たち

ビジネス書は、専門知識や成功の秘訣、効率的な働き方を学ぶための重要なリソースです。

しかし、これらの書籍が提供する情報が全てのビジネスや個人に適合するわけではありません。

なぜなら、ビジネスは同じ条件で始めることができないからです。

成功談や理論が豊富に盛り込まれている書籍は多くありますが、それが自分の業務や業界にどのように応用できるかを理解する努力が必要でしょう。


批判的思考の訓練

ビジネス書から得られる情報は一つの視点に過ぎません。

著者の提案する方法が万能であるとは限らず、場合によっては全く異なるアプローチが効果的なこともあります。

自身の判断で内容を吟味し、疑問に思う点はさらに調査を進めるべきでしょう。

また、時代と共にビジネス環境は常に変化します。

過去に成功した手法が現在や未来に通用するとは限りません。

常に「それって本当なのか?」という視点で書籍や論文を読むクセをつけることが、社会科学を学習する上ではとても重要です。

そういった意味では、経営学の研究は批判的思考の訓練になり得ます。

私がMBAで理解したのは、社会科学分野における理論は、常に批判的に考察するのが重要だという点です。


結論

経営学は、再現性の問題に直面しながらも、ビジネスと個人の成長において大きな価値を提供してくれます。

経営学の理論が常に完璧に機能するわけではありません。

ただ、それを適切に理解し応用できれば、実際のビジネスシーンでの意思決定を大いに助けることができます。

経営学は、不確実なビジネスの世界において、批判的思考を常に持つために学ぶべきものかもしれません。

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