あなたの年収が増えないのは、株式会社のサラリーマンだから
日本のサラリーマンの年収はなぜ停滞しているのでしょうか?
本記事では、その理由を探ります。
かつての「終身雇用」「年功序列」「企業別労働組合」といった日本的経営は、ある意味で長期的視点を持つ「人間中心に考えられた経営手法」でした。
しかし雇用を取り巻く社会状況は大きく変わり、日本的経営の継続は困難な時代になりました。
現在では株主価値の最大化が重視されるようになり、それが年収停滞の一因となっているのではないかと考えます。
今回、「株式会社とは何か?」を深堀りし、株主優先の文化が、あなたの収入にどのような影響を及ぼしているのかを考察します。
「株式会社」とは何か
あなたが働く「株式会社」とは、いったい何でしょうか。
株式会社とは資本を株式に分割して、株主から資金を集めることで組織される会社形態です。
株式会社の特徴は、株主が出資した金額に応じて会社の所有権(株式)を持ち、その会社の利益に対する権利(配当)や、会社の運営に関する議決権(株主総会での投票権)を持つことです。
では「株式会社」は誰のものでしょうか。世間では「従業員」や「社会全体」といった見解を述べる人もいます。
ただ、法的には株式を持つ「株主」が会社の所有者です。
株主は会社の最高意思決定体である株主総会を通じて重要な経営判断に関与します。また、日常の経営は、株主によって選出された取締役に委託し業務を行うのが一般的です。
したがって「株式会社は株主のもの」であり、社長や取締役は株主から経営を委託された存在です。
経営陣が、誰の価値を最大化するために行動するか?と考えれば、「株主のため」であるのは必然といえます。
広義には顧客や従業員、さらには社会全体や地域など世の中に貢献する存在とも言えますが、経営層が優先的に考えなければいけないのは、株主でなければいけません。
日本のサラリーマンの年収停滞の背景
では、次に会計の視点から考えてみましょう。
次の表は、損益計算書(P/L)とステークホルダーへの分配を示しています。
売上は顧客が製品やサービスへ支払った対価を表しますが、顧客は企業から価値を分配されているといえます。
次に、取引先や従業員への支払いが行われます。
残った営業利益から銀行などへ利息が支払われ、さらに残った利益から支払うべき税金が計算されます。
そして税金を支払った後、最後に残った利益が株主へ還元されます。つまり、株主は最後に残ったキャッシュが取り分といえます。
そう考えると、株主は非常にリスクが高いポジションです。
しかし、リスクが高いからこそ大きな儲けを得られるのです。
現状、日本企業はこれまで大切にしてきた顧客や取引先、従業員などのステークホルダーから株主への利益配分を重視する動きにシフトしています。
この背景には、いくつかの要因があります。
主な要因としては「グローバル化」「投資家からの圧力」「会計基準の変化」などが挙げられます。
グローバル化
日本企業が国際市場で競争力を持つためには、株主へのリターンを最大化することが求められます。
外国の投資ファンドや機関投資家は、投資した企業から高いリターンを期待し、その圧力に応じて日本企業も経営方針を変更せざるを得なくなっています。
投資家からの圧力
近年、機関投資家やアクティブ投資家からの要求により、短期的な株価の上昇や配当の増加に重点を置く経営が求められるようになりました。
企業は利益の大部分を株主配当や自社株買いに充てることが多くなり、分配の構図が従来から変化しています。
会計基準の変化
国際財務報告基準(IFRS)の導入に向けた動きも、企業が財務諸表の透明性を高め、投資家にとって魅力的な投資対象となるよう努力していることを示しています。
これは、企業価値の長期的な向上を目指す動きといえますが、株主への直接的な利益還元を伴い、株主優先の思考に陥っています。
このように、株主価値の最大化が日本の経済環境に大きな影響を及ぼし、サラリーマンの年収が停滞している原因になっています。
利益配分シフトの影響
株主に分配する利益を増大するためには、2つの方法があります。
1つは、顧客へ提供する価値を向上させることです。付加価値を増加させれば最後に残る利益も増えます。
ただ、付加価値向上なのか、単なる値上げ(ぼったくり)なのかは、顧客の判断に委ねられています。
顧客に提供する価値は「価格」として、企業側がコントロールできるとはいえ、企業の思い通りになるかどうかは微妙です。
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