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七夕に思う、年に一度の客は神様扱いするべきか?「カスハラとLTV」

七夕は、天の川を隔てた恋人同士の織姫と彦星が、年に一度だけ会える日と言われています。

このロマンチックなストーリーから、「年に一度」について今回は考えてみます

私たちは、年に一度だけ訪れる客を「神様」のように扱うべきでしょうか。

しかし、理不尽な要求を繰り返す「カスハラ」による従業員への精神的負担は見過ごせません。

顧客との健全な関係を築きながら、企業と従業員を守るために何ができるか、一緒に考えてみましょう。


カスハラとは

カスタマーハラスメント、通称カスハラは、顧客が不当な要求や過剰なクレームを行う行為を指します。

カスハラには、合理的な理由なく過度なサービスを要求するケースや、不適切な言動を伴う事例が含まれます。

カスハラは単なる顧客の不満とは異なり、従業員に対して不当な圧力や精神的苦痛を与える特徴があります。


カスハラが与える悪影響

カスハラにより従業員が感じるストレスは、業務の効率低下や職場離れを引き起こす原因となります。

また、継続的なカスハラは企業のブランドイメージを著しく損なうことがあり、顧客満足度の低下にも繋がります。


顧客は常に神様か? 

日本において「お客様は神様です」という考え方が広く浸透している背景には、日本独特の文化的要因が大きく関係していると考えます。

この概念は、日本のサービス産業、特に小売や飲食業において、非常に根強いものとなっています。


日本のサービス文化の背景

おもてなしの文化
日本の「おもてなし」文化は、相手に対する細やかな気配りや尊敬の念を示すことを重んじます。

集団主義の影響
日本は集団主義的な価値観が強い社会だと思います。個人の利益や欲求よりも他者に対して調和を図り、不快感を与えないように行動してしまいます。

商道徳の伝統
江戸時代には「商いは道徳である」とする考え方が商人の間で根付いていました。顧客を神と見なし、彼らの要求に忠実に応えることが、商売の成功への道とされていたからです。


「客は神様」の現代的な考え

しかし、これらの考え方がすべての状況において適切なわけではないと思います。

カスハラ問題が注目される中、顧客との健全な関係を築くためには、相互の尊重が必要ではないでしょうか。

顧客が求める価値や体験も、以前とは変化しています。

過剰なサービスを要求するよりも、相互に良い関係を構築しながら、満足いく対応に重点を置き始めています。

顧客体験を向上させるためには、適切な境界を設定し、公平なサービス提供が必要です。

理不尽な要求には明確かつ敬意を持って対応すれば、より健全な消費者体験を提供できるはずです。

企業は顧客満足を追求する一方で、従業員が働きやすい環境を整えることで、全体の生産性と満足度を高めることが可能です。

このように、「お客様は神様です」という概念は、時代と共に進化し、現代のビジネス環境に合わせて適切に調整される必要があります。


年に一度の客との適切な向き合い方

年に一度の客。

彼らは短期的には少ないリターンしかもたらさないかもしれません。

しかし、その一度きりの出会いで顧客関係を構築できれば、長期的には大きな収益になる可能性はあります。

特に小売業やサービス業では、顧客ひとりとの関係が事業の成功に直結しやすく、LTV(ライフタイムバリュー)の観点から客を見ることが重要といわれています。


短期的なリターンを超えた価値

LTVとは顧客がもたらす生涯価値を示します。

年に一度しか訪れない客であっても、彼らが長期にわたってリピーターとなる可能性を見逃すのは賢明な選択とはいえません。

年に一回、特定の商品を購入する顧客が、数年後に大きな買い物をするかもしれません。

そのため、一見小さな取引でも、顧客に感謝の意を示し、次回の訪問を心待ちにさせるような対応は必要でしょう。


カスハラ顧客への対応

一方で、不当な要求を繰り返すカスハラ顧客には、適切な対応が必要です。

カスハラは従業員のモチベーション低下や業務効率の悪化を招くため、これらの顧客には明確なポリシーを持って接することが重要です。

たとえば、クレーム対応のガイドラインを整備し、従業員が安心して仕事ができる環境を提供するのは組織としての義務といえます。

ガイドラインの整備は、結果的には顧客満足度を高め、ブランドイメージを保護することにつながると考えます。

適切なガイドラインを設ければ、従業員はクレームには一貫した対応を行えます。


クレーム対応ガイドラインの基本要素

  1. クレーム受付のプロセス

    • クレームを受け付ける方法(電話、メール、直接対面など)と、それを受け付ける窓口を明確にします。

    • 受付時に必要な情報(顧客名、連絡先、購入製品、クレームの内容など)を記録する手順を定めます。

  2. 応答時間の基準

    • クレームを受けてからの応答時間を明確にし、迅速な対応を保証します。例えば、24時間以内に初回応答を行うなどの基準を設けるのが一般的なようです。

  3. クレーム解決のプロセス

    • クレームの種類ごとに具体的な解決ステップを設定します。問題の調査から、関係部署へのエスカレーション、解決策の提案などです。

    • 解決策が顧客に受け入れられるかどうかの確認と、それに伴うフォローアップの手順を定めます。

  4. 従業員の研修とサポート

    • クレーム対応の研修を定期的に実施し、従業員がガイドラインに従って適切に対応できるようにします。

    • クレーム対応が困難な場合のサポート体制を整え、必要に応じて上級管理職や専門家の介入を容易にします。

  5. 法的要件と倫理基準の遵守

    • 法的な規制や業界の倫理基準を遵守するためのクレーム対応ポリシーを含めます。

    • プライバシー保護や顧客情報の安全な取り扱いに関するガイドラインも確立します。

  6. フィードバックと改善

    • クレーム対応後に顧客からフィードバックを収集し、サービス改善のために活用します。

    • ガイドライン自体の定期的な見直しを行い、継続的な改善を図ります。


実装のポイント

  • 顧客中心のアプローチを採用することが重要です。顧客の不満が発生した本質的な原因を理解し、根本的な解決を目指すことで、顧客との長期的な関係を築きます。

  • 従業員のエンゲージメントを高めることも重要です。クレーム対応のプロセスが従業員にとっても明確であればあるほど、彼らは自信を持って対応でき、結果的に顧客満足度の向上につながります。

最後に、内部通報システムを確立し、カスハラの早期発見と対応を可能にするべきです。

心理的なサポートやカウンセリングの提供も、従業員が心身ともに健康でいるためには欠かせません。

これらの措置は、従業員と企業の両方を守り、ビジネスを支える基盤といえます。


まとめ

本記事では、七夕という年に一度のイベントから発想を得て、「お客様は神様」という日本特有のサービス精神の背景と現代におけるその課題を探求しました。

特に、不当な要求を繰り返すカスハラ顧客に対して、企業がどのように適切に対応すべきかを考察しました。

クレーム対応のガイドラインを整備し、従業員は一貫性のある方法でクレームを効率的に解決できると考えます。

結果的に、このようなシステムは、顧客だけでなく従業員の満足度も向上させ、組織全体の成長を促進するために不可欠でしょう。

相互の尊重と理解に基づく健全な顧客関係が、より良い消費者体験の提供につながることを期待します。

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