人生暇つぶし

私は真面目だ。
動作が遅いから真面目にしていても
ふざけているように見られる事が多いのだけれど
必死にやって人並み以下。
幼少の頃からそれは自覚していた。

思春期の頃、両親の家業が倒産してから
私の人生はハードモードに突入した。

「生きるってとても大変な事なのだ」

とずっしりと人生がのしかかった。
20代は転職を繰り返しながら、どう生きようか
そんな事ばかり考えていた。

30歳で結婚をしたけれどたったの半年で
重度パニック障害とうつ病を発症。

初めて精神科の受付をした時には
震えで文字も書けなくなり住所もすぐに言えない状態だった。

医者から家事、仕事、外出を禁止された。
仕事はやめたくない、家事もしなきゃと言う事を聞かなかったら

「あなたわかってます?、かなり重度なんですよ。
仕事や家事よりも、命の方が大事なんですよ。」

と、きつく言われた。
普通の人の感覚ならば
仕事しない、家事もしないなんて
生きている意味がないじゃないか…
社会的に抹殺されたようなものだと考える。
家事を続けた結果、悪化。
実家へ戻され離婚。

不安や恐怖から薬を1シート飲んだりした。

社会に居場所がなくなる。

これは働いてきた人にとってとても怖い事だ。

早く治すにはどうしたらいいか
調べまくった。

私がツイていたのは
実家の家族が理解があった事。
結婚前に仕事でお世話になっていた方が同じ病気の克服者で色々経験談を聴かせて貰えたこと。

普通に暮らせるようになるには
5-15年はかかるとの事。

きちんと良くなって元気に過ごせるには、
腰を据えて休まなけれどならない。
生きる屍になるのだ。

最初の2年はほぼ寝たきりだった。
食べることもままならず流動食ジュースでしのいでいた。

パニック障害やうつ病は心の風邪なんて言うけれど
風邪ってもんじゃない。
常にある心臓をエグられる痛み、呼吸も苦しいのに
検査をすれば異常なし。
誰か殺してくれといつも思っていた。

15年分書けと言われれば
延々と書けるのだけれど
まぁ、そんな感じで苦しい時期があったんですよね。

徐々に身体は楽になったけれど
不安感というのが10年経ってもなかなか取れなかった。

どうしていつもいつも不安で苦しいのか。
幸せになりたいのにいつも息苦しい。

行動認知療法のカウンセリングを受けると
どんな事が不安か
どうしたらそれが解決するかを細かく細かく聞かれた。

病気である事が不安☞どうして?
働けないのが不安☞なんで?
お金がないのが不安☞なんで?
将来が不安☞どうして?

意外と不安ってものは
漠然としたものに感じるもの。

お金はいくら位あれば不安じゃなくなるのか
とか
将来って何歳の事?
どんどん具体的にしていくと
悩んでもキリがない事に不安を感じている事に気がつく。

先の心配をしすぎの不安なのだ。
将来なんて誰もわからないから
悩むことが無意味。

解決策のある事は先が見えるから
不安にならないものね。

嫌な事で避けれる事は避ければいい。
現在を大事にしなければならない。

人間いつ死ぬかわからないのだから。

外を歩きながら上を向いて
このビルの上から何か落ちてきて頭にぶつかったら死ぬよね
とか
信号で急にトラックが出てきたら死ぬよね
など妄想をする。

体がだいぶん動くようになってきたかも
と思った頃に
生きているうちにしたい事欲しいものリストを手帳に書いた。

100項目書こうと思ってペンを取ったけれど
確か44項目位しか書けなかった。
自分は欲張りだと思っていたけど案外出てこない。

その中には

ティファニーのダイヤのネックレスを自分で買いたい

というのがあった。

数年コツコツと封筒貯金をして叶えた。
自分で買ったというのが
社会的に少し自立したという自信にもなったのだ。

小さな事なら自分で叶えられる。

叶った項目には○印。
自分の事は自分で幸せに出来る。
そう思えるようになってから
不安で胸が痛くなる症状はどんどん薄くなっていった。

江戸時代ならば40代はもうご隠居だ。
頑張らなくていいのだ。

こどもが欲しいという夢は
物理的に叶える事は出来なかったけれど
自分が生きた証は遺伝子じゃなくても残すことは出来る。
そもそも、世界中で動物、植物全部が遺伝子を残しながら増殖したらパンパンになるじゃないの。

種を撒かず枯れていく葉っぱもある。
種は残せなくても枯れた葉っぱは
大地に風に空気に戻る。

今の時代、ネットがある。
私が死んだ後でもしばらくはこうして文字が残るし
自分で作った曲を誰かが聴いてくれてその人の耳に残る。
それで十分じゃないの。

今、私は人生の中で1番幸せな時間を過ごしている。

体が不自由だった時期
自分の体はもういらないと思った。
この体は借り物。
動ける時は自分と自分が幸せにしたいと思う人の為に使う事が私の幸せ。

嫌な仕事は何一つしていない。
お仕事も家事も好き。
お仕事は楽しいウキウキするものしかしていない。
幸せだなと思える事しかしていない。
やっとたどり着けた場所。

プレッシャーやストレスは自分自身が作るもの。
それが嫌なら取り除けばいい。

暇つぶしにわざわざ嫌な事はしないでしょ。

病気が良くなったら
楽しい老後、
人生暇つぶしをモットーに生きようと思っていた。
まさに今がその時なのだ。