依存し溺れ行く

 僕はひどく依存体質である。これまでも同じ人間とばかり付き合ってきた。狭く深い関係に入り浸るのが好きだ。それは国外に出ても変わらず、毎日何かしらの形で日本にいる彼らとコミュニケーションをとっている。SNSの普及した良い時代に生まれたものだ。

 その中でも特に深いのが2、3人いる。そのうちの1人について書こう。彼女は人生の中で初めて仲良くなったタイプだった。今でもここまで自分が依存していることが信じられない。僕と彼女が出会ったのは高校一年生の時だ。初めてあった時、僕は彼女に呼び名を聞いたが、下の名前はあまり気に入っていないのだと言われた。苗字で呼ぶのも余所余所しいのでその場で適当にあだ名をつけた。そのあだ名でしか3年間クラスメイトに認識されなくなってしまったことは申し訳なく思っている。気に入ってくれたかは今でもイマイチ自信がないが、とかく彼女はその名前で3年間の高校生活を送った、これは僕と彼女が3年間切ってもきれない関係になっていたことを意味している。呪縛を作ったのは良い意味で僕だと思っている。はて、思い返すと僕はほぼ全ての行事を彼女と共にしている。3年間どの写真にも彼女が写っていた。

 高校1年生の頃、彼女は親と初めての衝突をしていた。彼女はとても狭い世界にいて、僕はどうしてもそこから連れ出したくて余計なことを沢山した。彼女は戸惑いながらもまっすぐついて来てくれて、僕は後に引けなくなった。それでもどうにもならない彼女と両親の距離をもどかしく思っていたが、気づけば全てうまく収まっていた。学校を辞めてしまうかもしれないと焦った時期もあったが、止まってくれたことに感謝している。

 高校2年生の頃、僕たちは6人ほどのこじんまりしたグループを形成していた。そこは緩く居心地が良かった。全員が違う嗜好を持ちながら共存していて、それはまたしても初めての経験だった。様々な行事を経る中で、平和を保ちきれなかったこともあったが、彼女は僕たちの険悪な雰囲気を崩すのに長けていた。僕は彼女が気づいているかどうかわからないが何度もそれを利用してしまっていた。彼女はその点において依存性が高い。

 高校3年生の頃、彼女は推薦で大学への道を会得した。僕は語学の勉強に気が立っており、早く受験の終わる彼女に何度も当たり散らしてしまった。それでも彼女は僕を責めたりはせず、優しく話を聞いてくれたので、僕はそこに溺れていった。疲労やストレスで弱っていたのも1つの要因だが、彼女に頼り、依存し、抜け出せない泥沼のようなものにはまっていた。

 この時、僕はとっくに気づいていた。彼女もまた僕に依存していることに。だからこそ僕も”それ”にハマったのだ。僕を半端崇拝しているような彼女から稀に逃げたくもなった。そんな価値のある人間ではないのだ、君の期待には添えないと。それでも彼女は僕を見据え、僕は理解した。彼女はそれすらも受け入れているのだと。それは僕にとって救いでもあり堕落にも成り得た。

 卒業し、僕たちはバラバラの進学先が決まっていた。県も国も違う進学先に、これから先僕たちが集まることはないかもしれないと思った。友人関係というのは辞めようと思えば簡単に辞めることができる。物理的に距離が離れていればそれはさらに容易になり、SNSに反応を示さなければ良いだけだ。逆に続けることは互いに愛が必要になる。愛だけではダメだ、忍耐力と持続力、他にも様々な感情が必要になってくる。卒業旅行を終えて、6人のうち2人は県外に出て行ってしまった。

 僕の出国日、県内に残った3人のうち2人は大学の合間を縫って来てくれた。そしてそこには県外に行った彼女もきていた。わざわざ僕を見送るためだけに遥々戻ってきてくれたらしい。テキストでふざけて来て欲しいと言っていたがまさか本当に来てくれるとは思って居なかったから、心の底から嬉しく、悲しかった。こんなにも自分を大切にしてくれる彼女たちの元を自ら離れようとしている事に悲観した。ゲートが閉まる直前、僕は彼女の目を見た。何人もの大切な友人たちが見送りに来てくれた中、最後に見たのはやはり彼女だった。

 僕が国外での生活を始めて、高校生だった時代を懐かしく思う程に時間が過ぎ去った。僕はやめた方がいいと思いつつも彼女に週3回かそれ以上のペースで電話をかける。特に話す内容もなくだらだらと何時間か話している。お互いに時間を浪費しているという自覚はあるらしいが、これがなかなかやめられないのだ。彼女無しの生活はもはや考えられず、未だに依存し続けている。いつになったらここから抜け出せるのか、はたまた抜け出す必要はあるのかすら分からなくなってしまった。

 緩く居心地が良い、温く心地良い。

 自分のことを書くなんて、思っていなかったかな?それとも、想像の範疇?君はどんな気持ちでこの記事を読んでいるのか少し怖いけど、変わらない日々を。

それではまた明日。

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