大人の条件

年だけ30に近くなったが、自然と而立、ということも無いなと感じてきた今日この頃。肉体的にも精神的にも成長せず、何も為さぬまま老いてきたという自覚だけが出て来た一個人として、大人が大人足りえる条件は何か考えてみた。
先に言い訳させていただくと「大人の条件は?」という問いに、普遍的な正解があるかというと、これだけ長く人間が生き続けてきたのに、いまだに皆で頭を悩ませている辺り、おそらく無いのだろう。
と、いうことで、あくまで個人的な見解として読んで欲しい。

まず、大人というのは公人だという認識だ。
一人、もしくは家族の中など閉じた中で、プライベートの状態にあるならば基本的には何歳になっても、どれだけ子供の精神のまま、子供の行動をしていても誰にも責められる筋合いは無い。しかし、一度世に出たならば、仕事中に限らず、人それぞれ責務があり、立場があり、周りには必ず人がいる。その中で「大人」をやるのは、自分の見栄だけでなく、周りの為にもとても大事な事だろう。
雑に言ってしまうならば、プライベートでおじさんがバブバブ言いながら鼻くそ食べてても良いけど、電車でやってたら周りは嫌じゃん、という話。

大人の代名詞といえば「余裕」という言葉が浮かぶ。
大人の余裕、という言葉もあるし、余裕の無い人というのは、どうにも未成熟な印象を持たれる事が多いと思う。
余裕とは何か。色々と言葉の意味はあるが「大人の余裕」という意味で言うならば、何に対しても焦って見えないという事、想定外の事が起きても冷静に対処できるというのは余裕があると言えるだろう。
焦って「見えない」というのがミソで、別に頭の中では焦ってても良い。
ぱっと見、冷静に余裕をもってやっていそうな人が居るだけで、現場の混乱は収まりやすくなるという実体験が一度や二度じゃきかない程にある。

また、冷静に対処する為に必要なのは、現実をいかに冷静に捉える目を持っているかにかかっている。
起きた問題に目を瞑るのは勿論問題外だが、それと同じくらい(危機を想定するのとは別の話として)起きていない事に対して頭を悩ませないというのは大人としては必須の技能だろう。
この話に限らず、ある物はあるし、無い物は無い。と、いう考え方は、現実の全ての基本だ。

二つ目に、大人というのは、基本的に争いを好まないものだと思っている。
争うというのはどのような結果になろうと、双方に痛みがあるし、何よりもっと大事な物事の進みがスムーズにいかなくなる。勿論、大きな流れを止めてでも争うべき時というのもあるが、それはそんなに多くはない。
そういう意味で、大人はいろんな事をモヤっとさせる事が上手い。誰も怪我をしないように、また本来やるべき事が滞る事が無いようにやってのける。
言いたい事をグッと堪えて、争わずに済むように動くのも、必要があれば進んで道化をやる姿も、とても格好良いものだと個人的には思う。
ちなみに私はこれが本当に苦手で、いまだに引き際を間違えて誰かに怪我をさせたり、自分が怪我をする事が多い。
人の不幸や、悲しい恋愛話を聞いただけで義憤に駆られ、当事者でも無いのに正義を振り回し始めるようでは大人とは言えないだろう。それに、いかに正義としての自負があっても、言いたい事を言い過ぎたり、正義をやり過ぎたら、それはまた別の加害になる。

三つ目の要素として、自分のやる事を自分で決める事が出来るというのも、大人には大事だと思っている。
損得勘定も勿論あるが、どちらかというと自分が何に対して責任があり、当事者であり、逆に無関係な立場であるかを理解して、やるべき事をやっている姿は、誠実に大人をやっているように映る。
上記のように、争わずに済むように動くのも責任ある大人の仕事の一つだろう。
また、自分が出来るからといって、人の仕事を奪ったり、目の前に罪人が居るからといって私刑を執行するのは大人のやる事でない。
歯痒いかもしれないが、それが社会というものなのだろう。

と、いうことで大人の3本柱は上記の通り「余裕、非闘争、分相応」だと個人的には考えている。
実際、これらを扱うのはなかなか難しく、私自身、意識するようにはしているものの、失敗したり、忘れる事も多いのが実情だ。
想定外のことが起きれば焦るし、相手やルールが間違っていると思ったら正規の手段を取らずに正そうとしてしまうこともあるし、自分の管轄に無い仕事まで請け負ってしまう事なんてしょっちゅうだ。

それでも、意識する事も無いような生き方よりは幾分マシかと思っている。
初めから大人の人間は居ないし、成長スピードだって各々違うというのを理解して、めげずに自ら大人を目指して行かねば、恐らく大人にはなれないのだろう。
せめて、死ぬ前日くらいまでには大人になっておきたいところである。

#エッセイ #大人 #大人らしさ #余裕  

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