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怒りの感情との付き合い方-アンガーマネジメント-

私が学生の頃は突然に”キレる”中高生がたびたび話題になることがありました。現在は、コロナ禍も経てメンタルヘルスへの関心がさらに高まり、子どもに限らず働く大人たちについても”アンガーマネジメント”の重要性が認知されるようになりました。

書店では心理学に限らず、アンガーマネジメントを取り扱った書籍が見られます。それは、怒りの感情をコントロールすることが仕事などのパフォーマンスに影響すると世間一般においても認められているからです。


アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとはどのようなことだと思いますか。「何があっても怒らないようになる」とこでしょうか、「怒りを感じないようになる」ことでしょうか。

アンガーマネジメントとは、怒りの感情をマネジメント、つまり管理やコントロールすることを言います。怒りの感情そのものを感じないようにしたりなかったことにしたりするのではありません。そもそも、”怒り””喜び”、”悲しみ”、”嫌悪”、”恐れ”、”驚き”などとともに人に備わった基本的な感情のひとつです。それぞれの感情は、人が生きていくうえで必要な役割を担っています。

怒らないことはよいこと?

どのような場面でも怒らないでいられることがよいのでしょうか。子どもが安全を確認せずに道路を渡ろうとしたとき、自分を蔑ろにするパートナーと生活や仕事などをしていくとき。怒りを表現しないことによって、子どもは危険な目に遭いかねないことを、パートナーはあなたのこのままでの関係継続の困難を、実感を持って理解することができないかもしれません。

怒りの感情表出については、相手との関係悪化を避けたい、ハラスメントが心配だからとして苦手な人も多くいます。また、頭に血が上って一方的に怒りをぶつけるだけになる方もいます。アンガーマネジメントは、感情のままに怒りを爆発させるのでもなく、ひたすらに我慢し耐えるのでもない適切に怒りの感情を認識し表すことで、よりよいコミュニケーションをとるための方法です。

どうして怒りを感じたのか

あなたが怒りを感じた場面を思い出してみてください。どのようなことがあったときに怒りを感じましたか。例えば、電車内で移動する人にぶつかられたとします。「声かけてくれれば避けてぶつからずに済んだのに」とか「ぶつかったのに謝りもしないのか」などとイラっとするかもしれません。

自分の当たり前が裏切られる

人にはその人の思うルールや常識があります。人はそのルールを逸脱したと思う他者の言動に対して怒りを覚えます。上記の例では、「ぶつかる前に一声をかけて道を開けてもらうべきだ」「人にぶつかったのだから謝罪すべきだ」などのその人の持つ正論があります。

このように思うのはいたって自然なことです。しかし、「~すべきだ」との思考が極端になりすぎてしまうと、二分思考(白黒思考)と呼ばれるような100点か0点かの、その間の30点や70点などを考慮しない考え方に陥ってしまい、「ぶつかってきたのに謝らない奴は絶対に許せない」といった怒りを増幅させてしまう恐れがあります。本当はぶつかってきたときに謝っていたが聞こえなかったのかもしれませんし、体調が悪くて必死に空いている席を探していたのかもしれません。

自分の役割を果たすため

役割意識に過剰にとらわれることも怒りを膨らませるもととなります。例えば、子どもの”できていない”ところがどうしても気になり「どうしてできないの!」と声を荒げてしまう親御さんもいると思います。それは、自分はこの子の親なのだからしっかり育てなければいけないと親としての役割をまっとうしようと一生懸命になるがあまりのことだと思います。強い役割意識のため、子どもの”できていない”があたかも自分は親の役割が”できていない”との認識につながっている場合です。

おわりに

このように怒りを抱いた場面について、自分の持っているルールや役割意識を今一度振り返っていただき、怒りの感情の発生メカニズムを理解することはアンガーマネジメント、怒りの感情と付き合う第一歩となります。

参考文献

高山恵子(2016). イライラしない、怒らない ADHDの人のためのアンガーマネジメント. 講談社.
松井晴香(2023). 13歳からのアンガーマネジメント 我慢しない・傷つけない上手な気持ちの伝え方. 合同出版.


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