素材がおいしくするカレー。それがカレーだ
こんばんは。
今日も食日記ご覧いただき、ありがとうございます。
今日はおせちの撮影。
疲れたけれど、食と関われる仕事、好きだなーと改めて思います。
今日のエッセイはおせちとは縁もないカレーのお話。
今日の食日記
カレーが市民権を経て長い月日が経ち、令和になってからはカレーとは?の味わいが人それぞれ違うのではないか、それくらい多岐にわたる絶対的な主役となった。
カレーなら誰もが食べられるし、カレーなら喜んでもらえる。
そんな時代。
ただ、みんなが愛するカレーの味を概念化することができなくなり始めている今、一体カレーをどうやって楽しめば良いのだろうか。
母のカレーは割と概念化されているような、いわゆるスーパーで買える固形のカレールーを濃厚トロトロにした欧風ビーフカレーが想像できる。
これが”みんなが愛するカレー”だったのは平成まで(だと思っている)。キーマカレーがカフェではかなりの確率でメインランチになっていて、スパイスカレーの大衆化もものすごい勢いで広まっていった。
無印良品のレトルトカレー戦略は凄まじく、バターチキンカレーとグリーンカレーがいつも上位を占めているのは、カレーに対する選択肢が増え、そこから選ぶことが当たり前になってきた。
小麦粉カレーから、スパイスと油のシャビっとしたカレー、ココナッツミルクで仕上げたコク深いかれー。
TPOを選ぶかのうように、カレー食べたい!の感情にもいつどこで誰とまで考えなければならない時代が来てしまったのだ(エスニック苦手族には絶対にタイカレーをお勧めすることはできないし、、、)。
小麦粉のビーフカレーには何を入れても美味しかったあの時代から、今は”素材がカレーをおいしくする”とまで思うのだ。
素材がカレーを作り上げる。そうやってカレーを選んでいかなければ、もはや真にカレーを知り楽しんでいるとは言えないのではないだろうか(結局全部好き、もありではないが)。
タイ料理屋さんに行くと、10%くらいの確率で「プーパッポンカリー」という初耳では想像もできないカレーが存在している。
簡単に言えば、カニと卵のカレー。
ただ蟹が好きというだけで選んだその一皿で、カレーは素材なんだ、、、驚嘆したのだ。
今日の食日記
鎌倉最後のランチは海風が気持ち良い、海辺のタイ料理レストラン。大きな間取りと開放感のあるお店は、空気が南国を思わせるすっきりとしたストレスフリーな空間だ。
海を向こうに、メニューには10%の確率をキャッチし、プーパッポンカリーがあるではないか。
一通り全メニューに目を通すも、最初から心が決まっていたのは、その確率を知っていたし、蟹が好きだから。
一皿3,000円近くしたのだが、まあ蟹だしな、、、と旅行メンタリティにも後押しされ、余裕で注文してしまった。
たいはいつもライスは別盛りだ。
綺麗な半球のライスと共に、黄色くオレンジ鮮やかなプーパッポンカリーがやってきた。見事な艶めきから、グッと深い蟹の出汁の風味がもう美味しい。
スプーンを入れれば、ほとんど具材ではないか、、、
ふわっふわの蟹のほぐし身と同じくふわっふわの炒り卵がたっぷりと詰まっている。
軽々とスプーンに乗せ口に運んだその時、素材の奇跡を感じたのだ。
「へ、、、甘い。。。」
その蟹特有の香りに出汁たっぷりの穏やかな甘み。噛むたびに蟹の殻を全力で啜ったような120%の旨みがとにかく溢れ出す。
何これ、、、蟹を食べるカレーではないか。
食べ心地の良さは、蟹の柔らかさ卵の軽やかさがしっかりと調和しているから。
ぷるふわっとろ。その3拍子が少しも崩れることはなく、永遠に美味しいのだ。
「なんだこれ、、、」そして確かにカレーでもある。
止まらない止まらない。スープを飲むように出汁を味わうカレーを食べ進めると、ご飯が余ってしまいそうになるほど。
ちくしょう。この特別な味が僕のカレーの概念的味わいになることはないだろうと結論づけてしまうほど、家庭のカレーとも、スパイスカレーとも全く異なっていて特別に美味しい。
鎌倉旅が間も無く終わる。
そのフィナーレには他にない、絶対的な記憶となった。
また舌が肥えてしまったぞ。
プーパッポンカレーに出会った鎌倉旅だった。
美味しいひとときにごちそさまでした。
では、また次回。
今日のお店:Ninai(神奈川県鎌倉市稲村ヶ崎1丁目16−131)