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物語をいただく、酒と肴の美食体験

こんにちは。
今日も食日記ご覧いただきありがとうございます。

火曜日、いかがお過ごしでしょうか。

湿気がものすごいですね。
自分は生まれつき、ドをつけたいほど直毛なので、そこの苦労をしたことがないのですが、友人が毎日癖毛で嘆いていたことを思い出します。


今日は自分の人生でも沁みた日食体験のお話。



今日の食日記

本当に美味しい食べ物をいただくと、呼吸から美味しいと思える。

残念ながら自分が自分のために作った日常の食シーンにおいては、それを感じたことはない。
24歳にして舌が肥えているのか?と疑われれば、はっきりと「いいえ」と答えることは難しい。それは、食にこだわりをもって選んで来た日々に自信があるから。

体に良いものを、できるだけ手作りのものを、物語を感じることができるものを。
お家での食シーンでも、外食のシーンでも、さらに突き詰めればコンビニで買うものにでさえもある程度のルールをもって納得のいく食の選択をしているから、舌も肥えてきてしまったのかもしれない。

ただ、その事実はそのまま、自分自身を労ることであり、思いやることであり、美味しいものを食べることを意味しているのだから、少しのデメリットもなく僕の人生を豊かにしてくれる。

僕はそれこそが、人生における美食体験だと思うのだ。

食には愛情があって欲しいし、物語が詰め込まれていて欲しい。

ぜひともその物語を共有して欲しい。何が入っているのか分からない、誰が作ったのか分からないものが自分の全ての食シーンになってしまっては、自分の人生に嘘をついて生きていくことに等しいものではないかとさえ思ってしまう。

美食体験は自分のためにするのだ。選択するのだ。

これぞ美食体験をさせてくれた、黒磯の街の夜の長、「酒と肴あくび」。

心から楽しみ味わい尽くした幻のような時間は、まさに美食体験だったのだろう。

驚くべき事実として、そこの店主と僕は知り合いなのだ。
これぞ人生においての大切にしたい人脈というものだ。


今日のお店

夜が老ける頃、そのお店は顔を出す。
あくびをするように。

初夏の金曜日、時刻は18:30。
まだ、夜は明るいお腹は空腹の合図を鳴らす。

連日蒸し暑さが続いていたが、雨の日は予兆もなく訪れ、4月のような肌寒さをもたらした。
こんな日は、熱燗日和だと教えてくれた。

初めての僕は、信頼の店主に身を委ねた。
委ねるも何も、教えていただくに近い。

あまりにも無知な僕は、全てをただ享受するようにみて学び、感じれば良いのだ。映画館にわざわざ足を運び映画を見るように。特別な試聴会のようなものだ。

肌寒さは、熱燗のために。
そうポジティブに肯定するのは人生を豊かにする大切な思考だとさえ思う。
結局はその熱燗に虜になってしまっただけなのだが。


67度の熱燗

仁井田本家の仁井田自然種を熱燗で贅沢に味わう。
67度、徳利で出てきた熱燗は1度の狂いもなく最も身体が受け入れる温度で供された。

お猪口で啜るその一口は、清らかな純水を飲んでいるよう。

日本酒なのに、そこらで飲む浄水よりも軽く、澄んだ喉越しは浄水よりもすっきりと消えていく。
ほんのりと鼻に抜けるナチュラル製法で作られた日本酒のお米の香りは、余韻だけをそっと残してくれているよう。
忘れそうなのに記憶に残る、影のようで必ずいる存在は、主役であり、誰とでも調和できる名脇役なのだ。

熱燗を美味しく呑むため、もしくは美味しくその一皿を食べるためか、相互依存の関係性を食事のシーンで見つけることができると、人生の深みが増すようだ。


炭火の香りが食欲をそそる

そんな一皿は、茨城、越田商店の塩鯖。

あくびは卸先なわけだが、越田商店の漬けダレ製法について詳しく教えてくれた。

炭焼きで出されたその一皿は、身がぎゅっとつまり密度が違う。
それでいて、身はふっくらふわっふわで軽い口当たり。
今まで食べてきた鯖はなんだったのか、と。
鯖の味わいはまだまだ上書きされていくという可能性を見出されたことが、今日という財産だ。

絶品の塩鯖に熱燗の口溶け。
どちらも余韻がそっと優しくて、改めて食は丁寧にいただくものだと思い知らされる。

締め(というか、今日の最大の目的)は、あくび自慢の無化調ラーメン(詳細には、特製鶏出し醤油らぁ麺)だ。黄金に艶めくラーメンをずっと待っていた。


無化調黄金のラーメン。王様のよう

艶々煌めくスープは、目が眩むほどに眩しい。
透明度の高さからは信じられないほどに濃厚な鶏の旨みがぎゅっと凝縮されている。
隠された揚げえのきの香ばしさは、魚の出汁を思わせる複雑な味わい(魚介出汁は一切不使用)で、鶏出汁の甘みと旨みがグッと押し寄せる。

九州仕込みの細麺はスープを絡め取り、啜るたびに甘みと旨みが最大限に体に染み渡る。
アクセントの高菜も小気味よく、チャーシューから煮卵まで、ぺろっと平らげてしまう。

供された一皿ずつを平らげるころには徳利の日本酒も底を尽いていた。

満足感に目が開けられない。
もはや、この全てが夢であってくれても良い。

1話完結の長編物語を見終えた感覚に沼る。
気持ち良い浮遊感が、夢心地をいつまでももたらしてくれる。

一回の食事に深い物語が詰め込まれていた。
この美食体験が僕の人生の美食の基準になっていくことが嬉しい。

そんな極上のものだけを記憶に刻み込んでいきたい。
大きなあくびが出る頃に、僕はベッドで眠っていた。


美味しいひとときに、ごちそうさまでした。
では、また次回。



今日のお店:酒と肴あくび(栃木県那須塩原市材木町1ー1)



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暮らしのヒントになれば、と。

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