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複業をすると、会社がもっと好きになる

「副業解禁すると、副業に夢中になり会社へのエンゲージメントが薄れるのでは?」
「ほかに収入がある社員は、会社を軽視するのでは?」

そんな心配をする経営者や人事担当者も、多いのではないでしょうか。

私は「パラキャリ酒場」という複業に関するトークイベントを開催したり、企業や自治体で複業に関するパネルディスカッションをしたり、これまで数百人の複業ワーカーとお話してきました。

その中で、明らかな傾向が見えてきました。

「複業で活躍している人ほど、本業でも活躍している」のです。

複業で儲けているけれど、会社では窓際族、なんて人は一人もいませんでした。

能力があり意欲も高い人は、会社内でも活躍するし、会社の看板を外しても活躍しています。

さらに、社外で学んだ知識や得たネットワークを会社に還元している方も多く、副業解禁によって会社員生活もさらに充実しているケースを多く見てきました。

このようは人は、会社以外でも成長を求める傾向にあります。だからこそ、副業が禁止だと、フラストレーションが溜まると思うのです。

大手企業でも副業がどんどん解禁されている今、同業他社の知人や昔の同級生が社外でも活躍するのをSNSで目の当たりにすると、「自分にもできそうなのに」「挑戦できる環境に身を置きたい」という気持ちが湧いてくるものです。

そんな中で副業が禁止されていると、その障壁が転職や独立への意欲を掻き立てる一因になりかねません。会社にとっては、副業解禁は「優秀な人を逃がさないためのインセンティブ」の一つになると思います。

逆に、会社でも輝いていてもっと能力を伸ばしたいと思っている人にとっては、複業を自由にできる環境はとても魅力的で、「フレキシブルなキャリア設計が可能な職場」への感謝や愛着は増すはずです。

複業をする人は会社へのエンゲージメントも高い人が多く、私自身もパラレルキャリアを通じて会社をもっと好きになった一人です。

一つの会社ですべての自己実現をするのは不可能です。

もしかしたら、配属当初は「やりたいことが全部できる最高の職場」というケースもあるかもしれませんが、職場の状況も、人の価値観やキャリアプランも変わるものです。

「足りないもの」が増えるほど、不満も増えてしまいます。

そんなとき、会社の外でも自由に自己実現する場があれば、不満を解消できます。

もし、求める自己実現を社外でできなかったとしても、その不満が会社に向かいにくくなります。

なぜなら「社外で自由に挑戦できる環境にある」ことで、責任が会社ではなく個人に帰結するからです。

「会社でできないこともあるし、他に稼げる場所もあるけれど、会社にいることを選んだのは自分」と、能動的に選択したという実感があると、会社にばかり矛先が向きません。

最初は初任給やボーナスを喜んでいた新人も、いつのまにかその喜びは薄れ、他社の方が魅力的に感じたりするものです。隣の芝はいつも青いのです。

同じ状況に身を置き続けると、「いいことは当たり前、悪いことばかり目につく」ようになってしまうのは、人間の性でしょう。幸せの青い鳥がすぐ近くにいたように、いつもある幸せは少し離れてみないとわからないものです。

社外にも居場所があり、視座が高い社員ほど、「会社のいい所」「会社員でいることのありがたみ」をフラットに実感できるのはないでしょうか。

自分で選んでいながら「好きじゃない」なんて不貞腐れる生き方はかっこ悪い。会社は私にとってパーフェクトではないかもしれないけれど、自分が好きで選んだ、大切な居場所の一つです。

私は昔ながらの出版社で働いているのですが、自分とは属性の違うベンチャー企業で働く同世代に「1年目から裁量が大きくて成長速度で負けてしまうのでは?」なんて思った時期もありました。

それが、複業ベースでさまざまなベンチャーと仕事をするようになって、「残業も少なくてボーナスもしっかり出るうちの会社って、恵まれてるんだな」「あれ?私の機動力ってベンチャーの社員と比べて遜色ないかも?」と、自社のいい所や自分のいい所を再発見できました。

このような経験がなければ、イケてるベンチャーで働く知り合いのSNS投稿を見るたび、自社がショボく見えてしまったと思います。

「最年少でチーフに昇進。25歳で部下を持つ日がくるとは…」
「VCから〇億円の資金調達!」
「新サービスのローンチに向けて、30日連続出勤。寝る暇もないけど、毎日が文化祭の前日みたいなこの日々が愛しい」

的な、ベンチャーならではのドライブ感が滲む投稿。
ちょっとオーバーに書いたけど(笑)
いいなぁって思ってました。

働き始めの若手時代って、仕事の自慢を地獄のミサワ並みにする人も割といるしね。20代前半の頃、それを見聞きする度に気持ちのざわつくことざわつくこと。笑

よそはよそ、うちはうち、と思えるようになったのは、パラレルキャリアを経て自分のキャリアを客観視して、魅力的だと感じられるようになったのが大きいです。

窮屈な会社員に比べるとフリーランスは自由に見えるけれど、自分が開業届を出してからは漠然とした憧れは消え、メリットデメリットを客観視できるようになった気がします。

複業の売り上げが会社からの給料を上回る月もありましたが、この1-2年の突然の経済の冷え込みなどを経験すると、「会社員の安定」のメリットを実感したりもします。

会社に行けば仕事があり、信頼できる同僚がいて、発注してくれるクライアントがいる。交通費も支給され、社会保険料も会社が負担してくれる。会社員だけしていると当たり前のことが、フリーランスをしてみると「なんてありがたいんだ!」と感じます。

外の世界を知らないと、今いる世界のいいところは見えてこないもの。

「複業は会社へのエンゲージメントを下げない」どころか、「複業ワーカーほど、自社をもっと好きになる」可能性があるということを、会社にも会社員にも知ってほしいなあと思います。

パラレルキャリア研究所代表 慶野英里名

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