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ひどい上司がいました-ADHD上司によるパワハラとアンガーマネジメントについて

ひどい上司(私)の話をします。

私はADHD傾向がある税理士です。税理士法人AOIみらいというところに勤務しており、30名ほどの同僚や上司に、自身の傾向や苦手なところをオープンにして助けてもらいながら、できることで貢献していくべく、前向きにお仕事をさせて頂いています。

マルチタスクやルーティン、期限管理が苦手なため、それらが特に必要な「お客様の担当職」を離れ、社内の環境整備、教育、新規事業の立ち上げなどのお手伝いをするようになりました。それでも、問題や失敗は山積みで、今回は私がパワハラをしてしまった事例をお伝えしていきます。ADHDのために怒りが抑えられず困ったことがある方のご参考になれば幸いです。


私が起こしたこと

・指導の際に不機嫌・威圧的になり、若手さんが質問できない空気にしてしまった
・プロジェクトの旗振り役として、メンバーに対して、無根拠に決めつけた非難の言葉を投げてしまった

子どものころから、瞬間湯沸かし器のように、切れてしまうことが多く、特に、家族などの近しい関係の人や、自分の立場が上である関係性の場合に、発生していました。人間的に未熟で、とても恥ずかしいことだと思うのですが、本心(熱意であったり、愛情であったり)は伝わっているはず、と甘えてしまっているところがありました。

今回、前者(指導の際に不機嫌・威圧的な態度をとってしまった)については、ほぼ自覚がなく、他の相談ルートから発覚し指摘されました。ほかの業務が押していたりうまくいっていなかったり、「お忙しいところすみません」といろいろな人から10連続ぐらいで言われたり(普段、皆さんのほうが忙しくて頑張っていて偉くて、自分だけ無能だと思っているので、そう言われるととても自己嫌悪になる・ザ身勝手)、と言った、外的な理由が重なった結果、雑な物言いで、「それでいいからやっといて!」という対応になってしまったのだと思います。どれも、質問してくれていた方には全く関係がない話で、本当に失礼な対応をしてしまいました。怒られている、質問ばかりしてしまい申し訳ない、と感じさせ、委縮させてしまいました。それ以上質問できなくなってしまいました、というコメントをいただきました。

この件以降、若手さん達に対して特に注意しなくては、と気を張っていたところ、次の件を起こしてしまいました。こちらはベテランの方でしたが、とてもお忙しい中、新プロジェクトに参加して下さっており、私はプロジェクトリーダーとしてその支援に当たるべき立場です。であるのに、未着手の部分について、「まだやっていません」の一言に、瞬間的に怒りの反応をしてしまった結果、「貴方自身がその必要性を感じていないから着手できていないのでは」と無根拠な非難をしてしまいました。その場で、そんなことはまったくありません、心外です、と指摘して下さり、間違いに気づきました。

どちらに対しても、謝罪と、全体会議での共有を行いましたが、与えてしまった不安や不快感はなくなることはありません。社内についても不安と面倒をなくすことをミッションとしているはずが、不安をまき散らす根源となってしまっています。日本一働きやすい税理士事務所を目指しているのに、私がいるせいで台無しです。

ADHDのアンガーマネジメント

ADHDの衝動性は、怒りを爆発させてしまう形で現れることがあります。私の場合、どうしても今やりたい、今言いたい、強い気持ちが行動になって溢れ出てしまう、という傾向があります。

全体的に筋力が弱いので、人を叩いたり物を壊したり、大きな声が出たり、ということはないのですが、代わりにひどい言葉や、態度となって出てきてしまいます。抑えようとすればするほど、鬱屈がたまり、その次の全然関係のない時に爆発させたりしてしまう。普通の機嫌だったはずが、0.1秒くらいで豹変激怒する姿は相手にとっては恐怖でしかないと思います。怒りの反応は一瞬で、6秒待てばいい、など、いろいろと学んできていたはずが、いつのまにか、このぐらいは大丈夫だろう、とか、若い時とは変わった、とか、ほぼコントロールできているつもりになり、危機感が薄れてしまっていました。

まずは、この本を買って改めて勉強しました。

怒らない「ようにする」のは不可能 P.38
小さく、少なく、を目指す 怒りを堪忍袋に入れないこと P.39

間違っていたポイントの一つが、怒ることはいけないことなので、怒ってはいけない、と抑え込みすぎていた点ということが分かりました。環境やストレスなど、そもそも怒らなくて済む環境つくりは大切です。

周囲の人がもつイメージとのギャップもストレスに
怒りっぽい人は、自信がないわりに、周囲から自信家とみられがち。このギャップや周囲の対応が、さらに落ち込みのもとになります。
「いつも威張ってるなー」「自分がよほど偉いと思っているのね」 P.35

一番刺さりました。外からみて、どんなにか「上から目線」「頭いいと思って偉そう」に見えているだろう、と思うと、恥ずかしさでぐちゃぐちゃに凹み転げまわりたくなります。その反動で、「忙しいところすみません」「すごいですね」とかのなんてことはない社交辞令が、はたから見ると理解不能なレベルの大きさの超地雷(言われたくない…)になっていきます。

怒りを生む感情は多い -期待・希望-  P.53
相手に対する期待と、自分を縛る思い込みがある
自分の予想(期待)と、相手がちがうことをするために怒っている…という場面があるはずです。自分が正しいと思っていることが、解釈のしかたを偏らせやすいのです。  P.63

以前、認知行動療法というものを受けたときに、認知のゆがみ、という考え方を習いました。「べき」というものがそのひとつで、自分の中の普段は気づかない深いところに、「べき」という強く頑なな思い込みがあり、それが冷静な判断を妨げているのです。今回の場合、私は「正しいやり方」「正しい進め方」という正論で、相手をぶっ叩いており、お相手は、その正しさゆえに、私の態度が間違っていると言い切れず、モヤモヤを抱えることになってしまいました。普段は口先で、「間違ってもいいですよ。それが学びですよ。」なんてきれいごとを言っておいて、自分が気持ちよくなるためだけに正論を振りかざして相手を傷つけている。なんてひどい上司なんだ……。もう一度、認知行動療法をしっかり受けようと思いました。

「なんで」はうしろ向きの言葉 「どうしたら」は前向きの言葉
「なんで」と言いやすいし言われやすい ADHDの特性があると~中略~自分で「なんでできないんだろう」と落ち込む機会が多いのです。  P.77

なんで、は「ない」に繋がり、どうしたら、は「できる」に繋がる。解決法が提示されています。今回のパワハラの後者(プロジェクトの参加者を非難してしまった)のケースでも、なんでできないんだ!は怒りにしか繋がりませんが、どうしたら、と問えば、怒りにはなりませんでした。自分に対してなんで禁止令を出しました。

・ADHDがあると、ストレスを抱えやすい
忘れっぽい、行動が突発的…ADHDの特性は、仕事でもトラブルを招きやすく、その分本人のストレスが大きくなります。しかも、多くの仕事を抱えがちになるという問題もあります。
・なんでも安請け合いする
実行機能が弱いので、時間の読みが甘く、スケジュール管理が苦手。予定をしっかり考えることなく、軽い気持ちで頼まれごとを引き受けてしまいます。その結果、多くの仕事を抱えて、たいへんな状況に陥ります。 P.82

この仕事をキャパシティ以上に抱えてしまうことによるトラブルはとても多く、AOIみらいの皆さんほぼ全員が被害を受けている状況なので、仕事の依頼はかなり慎重にしていただいており、とても感謝しています。それなのに、「新しいことに強く興味を持ってしまい、そのことを考え始めると止まらない」というADHDのもうひとつの特性で、自分から新しいことに首を突っ込みまくってしまいます。きちんと、いつまでに、誰にバトンを渡すかを計画してから首を突っ込むように、と上司から厳命されており、訓練中です。

反省

まき散らしてしまった害悪成分は、自分自身で掃除して取り除いていくしかありません。ADHDだからしかたない、なんてことはなく、もちろん、謝れば一件落着、もありえないです。日々、誠実に、長い時間をかけて、失ってしまった信頼や職場の心理的安全性を、再度いちから取り戻していきたいと思っています。


私達は、少しずつ変わっていける

この書籍にあるように、ADHDさんのまわりでは、アンガーマネジメントができていないためのトラブルが非常に多く、当事者の方も周囲の方も双方がとても傷つきお悩みかと思います。

私は、解決の第一歩は、自己理解と相互理解を深めることだと思っています。書籍には、周囲の方向けのご助言も書いてあります。今回のお相手には、謝罪や、声をあげて下さったことへのお礼とあわせて、この本を読んでいることを伝え、誰もが借りて読むことのできる社内のブックコーナーに加えてあります。また、この記事も事前にお目通しいただき、まず、記事にしてよいかどうか、それから、不快な表現や、事実と違うところがないかなどの確認を行っています。

今回の私のようなケースが重なっていき、長期間に渡る暴言や物理的な暴力などが生じた場合、双方が、心身ともに深刻な崩壊を起こしてしまうこともあります。解決の二歩目は、専門家の力を借りることです。
私は、引き続き、医師の処方による服薬や、かかりつけであるADHD専門臨床心理士クリニックに通っていきます。今回の件をお伝えし、先生方のお力をお借りしていきます。

最後に、アンガーマネジメントに関する知識は、ADHDに限らず、様々な立場の方にとっても有用です。よりたくさんの方に、まずはこの書籍を手にとっていただき、考え方を学んでいただけたら幸いです。人は、少しずつですが変わることができると思います。変わりたいと思う貴方のことを、私は尊敬し、そんな貴方を見習いたいと思っています。

ADHD専門税理士相談 お問い合わせはこちらまで info2@aoi-mirai.jp

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