見出し画像

ガーゲンになって語る勉強会

「世界は境界線でできていると信じている」?

私たちが生まれて最初に出会うのは家族です。「スマホが欲しい、だってみんな持ってるんだよ」という子供に、「よそはよそ、うちはうち」と言った経験(言われた経験)はありますか?

社会では、私とあなた、私たちとあなたたち、日本人学生と留学生、正規社員と非正規社員、自社と他社、自国と他国。様々なところで、境界線を引いて、他の人や人たちと比べることをしながら生きています。ガーゲンいわく、「私たちは”自分をたたえるモノローグ”によって、自尊心を維持している。それには、自分より劣る他者が必要」だということになり、この境界線を引く行為によって、いさかいや戦争が起きてしまう、というのです。

これが書かれているのは、社会構成主義の第一人者であるケネス・J・ガーゲンの「関係からはじまる~社会構成主義がひらく人間観」(原題:Relational Being: Beyond Self and Community)。

500ページの大著…こりゃ一人じゃ読めないぞってことで、研究者仲間と一緒にABD方式の勉強会を行いました。
ABDというのは、アクティブ・ブック・ダイアローグ®というもので、複数の人が参加し、担当の箇所を読んでリレー形式で内容紹介をすることで全体を理解しよう、というものです。ABDに詳しい仲間の進行で、オンラインで4回にわたり夜22時から勉強会を行い、昨晩終了しました。ABDは、担当箇所を著者になったつもりで紹介するというルールで、毎回「こたにガーゲン」に変身していました。(写真は終了時の笑顔ww。ガーゲン本持って笑える日が来るとは…感無量。)

「個人やコミュニティを境界確定的な単位という観点からとらえようとすると、私たちが生きる世界は”分断”が基本となり、地球の幸福を脅かす」のだ、とガーゲン先生は述べています。

ガーゲン先生の説いていることは頭では理解できるのですが、そうはいっても、これまで「境界確定的存在(bounded being)」として生きてきた自分の視点を変えることはかなり大変。だって、
・エヴァンゲリオンでの、人類と使途、父と子、NERVとVILLE
・ハリーポッターでの、人間と魔法使い、ダンブルドアとヴォルデモート
・ガンダムでの、オールドタイプとニュータイプ、地球の特権階級と宇宙移民、連邦政府とジオン公国・・・
すべて、お互いを理解し合えない、境界確定的な存在として描かれているわけで、そこに葛藤、畏怖、友情、憐憫、悔恨などが見え隠れすることが人間的であり、そこが面白いわけです。

ガーゲン先生は、本書で、もともと私たちが存在するのは、関係においてでしかなく、関係がすべてに先立つ「関係規定的存在(relational being)」であるとしています。この立場に立てば、対話という協応行為によって対立を避けることができるようになる、といいます。自己を重んじるという啓蒙主義的な人間観ではなく、関係を重んじるという新しい人間観を提案しているのです。いつまでも境界画定的でいるなよ、というわけです。

本書では「絆」は境界確定的です。絆がある人と無い人に分断できるからです。そこから対立も生まれてしまう。そう言われても、やっぱり絆っていいもんだと思うわけで。論理経験主義的生き方をしてきた私としては、そう簡単に境界線を引くことを辞めることは難しいよな、と思った勉強会でした。

研究者仲間の皆さん、大変勉強になりました。ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?